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発酵食品に関与するカビ(麹菌以外) -発酵の基本知識-⑯

麹菌はカビの仲間ですが、そのほかの発酵食品にかかわるカビもいくつか存在します。

また、カビといえば人体に悪影響をもたらすカビも存在し、自宅などで発酵食品を作成する場合にはそのようなカビなどが発生しないように注意が必要です。


麹菌以外にも発酵食品に使われるカビ


1.       クモノスカビ(テンペ菌)

2.       青カビ(ペニシリウム属)


「テンペ菌」はこの数年においての健康食ブームなどにより主にベジタリアンの人々に肉の代用品として好まれているインドネシアの発酵食品で、「インドネシアの納豆」なとども呼ばれていますが、納豆とは全くの別種類で納豆特有の臭気や苦みはなく、糸をひくこともありません。

原料は大豆で、製法も蒸したり茹でたりした大豆に菌を繁殖させるところまでは同じですが、豆を固めた状態での酸性の環境下の方がよく繁殖します。

好気性で一定の温度を好み、24時間程の間に30℃~33℃位で一番よく繁殖します。

名前の通り、クモの巣のような網目状で菌糸を下に延ばしていくことからこのように呼ばれています。

バナナやハイビスカスの葉の裏の常在菌で、インドネシアではこれらの葉に包み作られ、出来上がったものは、油で揚げたり炒めたりした後に、塩やスパイスなどで味つけをしたものが屋台などで売られています。


青カビは主にブルーチーズと呼ばれるチーズに熟成後に添加するカビで、世界で初めての抗生物質である「ペニシリン」がこの種のカビから発見されています。

ブルーチーズに使用される青カビはチーズの種類によっても異なり、世界3大青カビチーズと呼ばれる「ロックフォール」(フランス)、「ゴルゴンゾーラ」(イタリア)、「スティルトン」(イギリス)などがあります。

これらは伝統的な製法を守られたものだけに与えられた名前で、厳しい製法基準を満たすことができなければ名乗ることはできません。


発酵食においてのカビの安全基準


発酵食品を作るにあたって、カビなどの菌を扱うことは必要不可欠ですが、当然わたしたちの体には害のあるカビなども存在します。

わたしたちのくらしの中で見かける青カビなどは、基本的には人体に有害なカビとしての認識が一般的ですが、ブルーチーズに使われる青カビは、食品としての製品管理が行われている品質が保証されているカビですので安全といえます。


また、麹菌などのアスペルギルス属のなかには、猛毒である「アフラトキシン」(マイコトシキン)などを生成するものがありますが、自然界の土中に存在し発酵食品などに使われるアスペルギルス属は、完全な無害化されている品種のみが使われています。

これらは顕微鏡が日本にまだ存在しなかった江戸時代に既に確立されており、無害化されたもののみが培養され、現代に至ります。

その技術は日本人がつくりだした「菌を家畜化」することに成功し、「世界最古のバイオビジネス」を確立した事の証でもあるといえます。


これらのことから発酵食品に使われる菌は安全性が確立されており、伝統的な製法を守ることによって、その再現性が守られていることがいえます。

ただし、その反面、自己判断により決められた製法以外で発酵食品を生産することは、正しく作ることができない可能性もあり、腐敗の原因にもなりえますので注意が必要です。

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