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発酵食品製造における主な発酵 -発酵の基本知識-⑰

発酵食品を生産するために必要な「発酵」とは、微生物の働きにより、食物などを分解、変化させ人にとって有益な作用をもたらすことを指します。

発酵には、分解されるものと分解するものが必要となり、それらは食物などの有機化合物であり、微生物などにあたります。

分解する微生物が一定の条件下で分解される食物などに媒介すると、分解が行われて、発酵食品が出来上がりますが、それは同じ原料であっても分解する側の菌が異なれば、出来上がる発酵食品も異なります。


発酵食品生産における三大発酵形式

発酵食品の多くは「三大発酵形式」と呼ばれる形式によって作られ、それぞれの発酵が起こりやすい条件下を整えることによって生産管理をされています。

殆どの発酵食品に関わる微生物(発酵に関与する菌)は主に糖類をエサにして繁殖しており、その繁殖する微生物はエサにする種類によって異なってきます。

糖類の種類とは、ブドウ糖や乳糖、果糖などがそれらに該当します。


1.       乳酸発酵
乳酸菌は糖類をエサに乳酸を生成します。
乳酸が生成する段階でpHが変化するため、雑菌は侵入しにくくなります。

2.       アルコール発酵(酵母発酵)
酵母は糖類をエサにアルコールと炭酸ガスを生成します。
いくつかの発酵過程では先に乳酸発酵が行われ、のちにアルコール発酵に以降していきますが、ワインなどは果実の皮についた酵母がそのまま果実の糖をエサとするため、その前の工程として多くみられる乳酸発酵は省略されます。

3.       酢酸発酵
酢酸菌がアルコールや糖類をエサに酢酸を生成します。


いくつかの発酵過程ではこの順番で行われ、逆の順番や入れ替わることは起こりえません。

清酒や味噌、醤油醸造などを除き、多くの発酵は乳酸発酵からはじまり、それぞれの菌たちがバトンを渡すリレーのように受け継ぎ、正しく行われます。

生産したい発酵食品の種類によっては、その途中で発酵を止めたりする必要があります。

たとえば清酒を作る場合、アルコール発酵の時点で発酵を止める必要があり、これ以上発酵が進むと酢酸発酵に移行し、酢が出来上がります。

この間に酵母菌が弱った状態で別の雑菌などが混入すると酢酸発酵が上手くいかずに腐敗し、酢を作る事は出来ません。


三大発酵により作られる発酵食品



  • 乳酸発酵・・・ヨーグルト

  • アルコール発酵・・・ワイン

  • 乳酸発酵→アルコール発酵(完全でない)・・・ 味噌、醤油

  • 乳酸発酵→アルコール発酵・・・清酒

  • アルコール発酵→酢酸発酵・・・酢


味噌や醤油などが完全にアルコール発酵しない理由としては、使用される酵母の種類にあります。

味噌や醤油などに用いられる酵母菌は、耐アルコール性のない酵母であり、基本的に酒用に用いられる酵母以外は、耐アルコール性はないものが多いのが一般的です。

三大発酵に含まれない麹菌による糖化発酵


麹菌が蒸し米に繁殖した際に、生成される酵素や栄養素などの作用は三大発酵には含まれませんが、発酵として捉えられてはいます。

その理由としては、三大発酵のスタート地点である麹菌の行う「糖化発酵」の作用は乳酸発酵がはじまるためのエサ作りであり、役割が異なるためだからです。

乳酸菌は糖をエサにし、三大発酵のスターターです。

その乳酸菌のエサとなる糖は、麹菌が米のデンプンを分解し、ブドウ糖を生成します。

そのブドウ糖が乳酸菌のエサとなり、発酵のバトンリレーは行われていきます。

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