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酪酸菌 -発酵の基本知識-⑬

酪酸菌は発酵菌の中でもあまりききなじみのない菌だと思うこともあるかもしれませんが、発酵食品をつくる時や腸内環境をととのえるうえでとても大きな役割をもっています。

酪酸菌は主に酪酸を生成する嫌気性細菌で、なじみのある発酵食ではぬか床に存在し、発酵すると独特の臭いを持ちますが、わたしたちの腸内環境を健やかに保つためには重要な役割を果たす大切な菌です。


腸内環境をととのえる重要な役割を持つ

納豆菌同様、芽胞の形でさまざまな環境中に存在し、増殖できない場所、たとえば強酸・強アルカリ、乾燥条件下では活動を停止し、環境が良くなり生育が可能になると再び開始する性質をもっています。

嫌気性菌ですので、酸素のない環境下で繁殖し、主に動物の消化管内の常在菌として知られています。

耐酸性で胃酸にも強く腸内には生きたまま届く事ができ、腸内の常在菌になるものもあります。

腸のいやし菌ともいわれ、ヒトをはじめとした動物はストレスを受けると非発揮性脂肪酸(コハク酸)などが増えてしまいます。酪酸菌が生成する有機酸はこれらの際に腸内の粘膜を修復、がん細胞の増殖を防ぐ特徴をもっています。

そのことから、日本では主に芽胞を製剤化、整腸剤として利用されています。


食物繊維を善玉菌のエサに変える、酪酸菌は注目のプロバイオティクス

酪酸菌は腸内でヒトが摂取した食物繊維を、乳酸菌などの善玉菌のエサに作りかえます。

善玉菌がこの役割を担うことで腸内の常在菌であるビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の繁殖を助けます。

このような、善玉菌を増やし、腸内環境を良くする微生物や菌、またはそれらを含む食品を総称してプロバイオティクスと呼びます。

プロバイオティクスは酪酸菌のほか、乳酸菌、ビフィズス菌なども含まれます。


発酵食品では臭いの強い食品に利用

酪酸菌は独特な臭気成分をもち、主にチーズやぬか床の底の空気が届かない層に生息しています。

野菜などにも付着しており、野菜からぬか床に移り、増殖、繁殖します。

独特なぬか床の臭いは酪酸菌が原因という場合が多く見られます。

ぬか床を管理するにあたって、ぬか床を毎日かき混ぜる必要があるというのは、このぬか床の底の部分に生息する酪酸菌と表面に生息する、好気性の産膜酵母の位置を入れ替えるという目的があります。ぬか床の上部と下層を入れ替えることにより、生育を抑え、活動を活発にしすぎないようにするための抑制作用をもたらすことがその理由です。


酪酸菌を使った発酵食品は海外にもあります。

中国や台湾の発酵食品である名物、「臭豆腐」には酪酸菌が使用されています。

石灰を今後した漬け汁に納豆菌と酪酸菌を加えて発酵させ、豆腐を半日ほど漬けこみ油などで揚げて屋台などで売られています。

旅行などで食べた事もある人もいるかもしれませんが、独特な臭気があり、やみつきになる人も少なくありません。


酪酸菌は乳酸菌や納豆菌などに比べてまだまだ知名度が低く、その特性もあまり知られていません。また、その独特な風味が敬遠されがちではありますが、腸内の常在善玉菌を健やかに保つ縁の下の力持ち役であり、その優れた回復機能には目を見張るものがあります。

まだまだわかっていないことも多い菌ではありますが、今後も注目したい菌のひとつです。

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