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古武術の「消える動き」は、なぜ見えないのか? ミラーニューロンの仮説

古武術では、動作について「見えない(消える)動き」という表現が使われることがあります。

速度が速くて目に見えない、という意味ではなく
「どう動いたかがわからない、いつの間にか動作が終わっている」
という動きです。

有名なのは、駒川改心流剣術、民弥流居合の黒田鉄山氏の動きです(you tubeで「黒田鉄山」か「消える動き」で検索してみて下さい)。


なお、私は黒田氏にお会いしたことはなく、理論も詳しくは知りません。今回の記事は全て私の勝手な考察であることを申し添えておきます。

・考察の前提

動きが消えると言っても、超常的な話ではない以上、物理的な運動は行われていますね。
また、術者と同程度か上位の腕前の人間が見ると、動きを見て取ることが可能だと言います。

そのことから、消えて見えるのは物理的な現象ではなく、脳の認識の問題ではないかと考えます。

ポイントになるのは、「効率の良い動きは、通常の動きよりも同時に使われる関節・筋肉の数が多い」こと。
一番ありそうな仮説は、ミラーニューロンの働きによるものです。

・ミラーニューロンの仮説

ミラーニューロンは、脳の神経細胞の一部です。
自分自身の行動ではなく、他の人の動きを見るだけで「まるで自分も同じ行動をしているかのように反応する」ことから、鏡の神経 → ミラーニューロンと呼ばれています。

私たちの脳は、他人の行動を、ただの映像としてみているわけではありません。自分が同じ動きをしているかのように再現し、いわば「身体を通して」理解しているのです。

さて、ここで大事なのはミラーニューロンが
「自分が同じ動きをしているかのように反応する」
というところです。

関節を同時に多く使える人は、動きを重ね合わせて使えるので、少ない手数で動作を終了できます。

例えば、普通の人が、5手かかる動作があったとします。
術者が、2、3、4手を重ね合わせて行うと、見た目では3手の動作に見えます。

見ている人のミラーニューロンは「自分が動いているように」それを再現しようとしますが、使う関節数が違うので3手では同じ結果をイメージできません。

例えるなら
・術者  1→2,3,4→5
・見え方 1→2→ →5?(3と4がない!)
みたいな感じ。

脳内イメージがついていけない部分では、動きの情報が欠落することになります。それが「見えない」と認識されるのではないでしょうか・

これが、ミラーニューロンから考える「見えない動き」の仮説です。

・同等以上の腕なら見える

同程度の腕前の人なら動きが見えるというのは、同じ動きができるか、少なくともイメージできることで、ミラーニューロンの作るイメージに欠落が生じないからでしょう。

小説や漫画で出てくる「お前の動きは見切った」というセリフ。技が正確に見えるなら、その技の動きを具体的な身体の動きとして理解できていることになります。
お決まりのセリフですが、考えようによっては深い内容なのかも。

八起堂治療院ホームページ


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