12.八百万には多すぎる
正座って座り方は、何かで聞いた事あるんだが、こんなに痛いものなのかい?
隣に座る初対面の男は、正座がどうこうと言うよりも、彼の下半身が上半身を支える積載重量を大幅に上回っている気がしてならない奴だった。
初めてツアーで日本に来た私は、神社、というところに行きたかった。
だって日本には八百万も神様がいる国というのよ?
そしたら、イエス様だって、ムハンマドだって、八百万分の一って事じゃない?
私はそこそこなクリスチャンだったけど、残りの七百九十九万九千九百九十九の神様が、一体どんな神様なのか知りたくて、日本では一般的に神無月と呼ばれる月に八百万もの神様が一同に集まる神在月って呼ばれる場所にやってきたって訳。
それにしてもこの鳥居って呼ばれる入場口は大きいわね。
誰が建てたのかしら。
…さっきからのBGMは神様を連呼しているわね。
私日本語はほとんど勉強しなかったけど、神様って言葉だけは覚えてやってきたの。
一体どんな神様を讃える唄なのかしら?
「失礼ガイドさん」
ここからは都合上、日本語でお届けするわ。
「この唄の賛美している神様は、どんな神様なのかしら?」
「ああ。トイレの神様ですよ」
「トイレ!?」
思わず天を仰いでしまったわ。
「それは神々の戦争に敗れた罰なの?」
「さあ。日本は何にでも神様がいらっしゃるので」
笑顔だけが取り柄のガイドさんは、少しだけ困った顔をしても、口元を緩めていた。
だってどう考えても罰ゲームじゃない。
和式トイレってやつは死んでも使わないけど、あそこで掃除してたおばさんが、神様だとでも言いたいの?
じゃあもう何でもありじゃないの。
そうか、八百万もいるんですものね…
でも、イエス様とトイレの神様が同列って言うのは…
だけど、イエス様は馬小屋でお産まれになっているわ。
じゃあ、イエス様は馬小屋の神様って言うの?
「おい、あんた」
さっきの太った男が馴れ馴れしく話しかけてきた。
「この日本の有名人を知っているかい?」
「…知る訳ないでしょう」
「名前を聞いて驚くな」
「なによ」
「厩戸王って言うんだとさ」
「どういう意味?」
「馬小屋の神様だってよ!」
「馬小屋の神様!」
「イエス!」
彼の持つお札には、木の棒を持ったすまし顔の日本人。
…とりあえず、こいつはさっき私のお尻を触ったから、後で巻き上げることにしようっと。
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お題:日本式の経験 制限時間:15分 文字数:918字
※未完部分を追加。
参加される皆さんの好きを表現し、解き放つ、「プレゼンサークル」を主宰しています! https://note.com/hakkeyoi1600/circle ご興味のある方はお気軽にどうぞ!