二人三脚

水滸噺 11月号(上)[完敗梁山泊]

あらすじ
豹子頭の相棒は 張藍百里風入雲竜
子午山の童謡は 北風太陽に負けず
青蓮寺対梁山泊 宋の闇が光を放つ
九紋竜対御竜子 神箭の光闇に消ゆ

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝まで守備範囲を広げました!出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて1日1回以上を目標に投稿しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…観光スポットや見どころも108か所あるとか。スタンプラリーをしたかったら、きちんと手続きをしてからおいでよ。

騎馬隊

騎馬隊…誰かのお誕生日や記念日には、どこからともなく笛の音が聞こえてくるという。

人物
林冲(りんちゅう)…張藍との記念日を祝った後、百里風と出会った記念日であることに気づき、背中にじわりと汗をかいた。
索超(さくちょう)…百里風が単騎で疾駆しているぞ。
扈三娘(こさんじょう)…血涙を流していましたね。
馬麟(ばりん)…百里風をなだめる笛を吹いてあげた。
郁保四(いくほうし)…林冲と張藍を呼びに行った。

1.
索超「林冲殿は?」
馬麟「今日は結婚記念日だから、休暇を貰ったそうだ」
扈三娘「なるほど」
索「王英との結婚記念日を覚えているか、扈三娘?」
扈「いいえ」
郁保四(即答した)
索「一体どんな過ごし方をされるのだろう」
馬「調練が終わったら覗きに行こうか」
扈「面白そうですね」
郁(王英は?)

張藍「林冲」
林冲「…」
張「なぜ私たちの結婚記念日の用意をまるでしていないのですか」
林「…まだ10日先だと思っていたのだ」
張「この暦表を毎日見ているのに、なぜ?」
林「…俺におやつを作ってくれる日だと思っていたのだ」
張「…」
林「…10日後に色々と記念日の代物が届く」
張「10日…」

張「ならば10日間、この衣装の数々を着て調練をなさい」
林「ハムスターだけではなかったのか…」
張「史進がプロデュースした衣装もございます」
林「この紐が衣装なのか?」
張「あなたのおやつもお預けです」
林「そんな!」

索「またやらかしたな、林冲殿」
馬「そっとしてやろう」
扈「罪深い」

張藍(ちょうらん)…10日後の記念日の品は良かった分、当日でないのが本当に悔やまれますね。
林冲(りんちゅう)…梁山泊全員の度肝を抜いたが真顔で10日間やり通して見せた。

索超(さくちょう)…あの紐の衣装はなんなんだ。
馬麟(ばりん)…動物も多かったな。
扈三娘(こさんじょう)…記念日を間違えるのはいけませんね。
郁保四(いくほうし)…覚えてないんですよね、扈三娘殿。

二竜山 

二竜山…潜入している青蓮寺の者たちに、白嵐を頭領にする指令がでた。

人物
楊志(ようし)…兵のストラップで、白い大きな犬のマスコットが妙に目に付いた。
秦明(しんめい)…もっと重くて棘の多い狼牙棒を、秦容がおねだりしてきた。
解珍(かいちん)…秦容に指を握らせた時、絶叫した。
郝思文(かくしぶん)…秦明の家に招かれた時、秦容の力に唖然。
石秀(せきしゅう)…とりあえず、致死軍一般兵の調練はこなせるくらいに本復。
周通(しゅうとう)…最近兵が妙に頼ってきて困っている。
曹正(そうせい)…ソーセージを肴に、楊志や将校の悩みを聞く。
蔣敬(しょうけい)…愛用の算盤は、盧俊義からもらった一級品。
李立(りりつ)…腰には刀ではなく包丁をさしている。刃のむき出しはやめて。
黄信(こうしん)…双頭山の近隣で、もう一山見つけようと画策中。
燕順(えんじゅん)…元山賊頭領オフ会を企画中。
鄭天寿(ていてんじゅ)…まずは清風山と桃花山と少華山でいいか?
郭盛(かくせい)…楊令も忘れられないが、秦容の将来も末恐ろしい。
楊春(ようしゅん)白花蛇(はっかだ)の由来は、少華山で大きい白蛇を退治した時。
鄒潤(すうじゅん)…彼の瘤ができるまでに何があったのか…
龔旺(きょうおう)…張清と丁得孫と久しぶりに会いたい。

2.
楊志「…」
石秀「…」
曹正「どうした、二人とも」
楊「何もない」
曹「石秀?」
石「公孫勝との稽古の時間だから後でな」
曹(呼び捨て?)
楊「…吹毛剣に、死ねと言われた」
曹「物騒だな。何事だ?」
楊「…」
曹「…嘘だろ?」
楊「ソーセージも斬れなくなった」
曹「一体何があったのだ、楊志」

楊「楊令が、白嵐という犬とばかり遊ぶようになった」
曹「それで?」
楊「私と遊んでくれなくなったのだ」
曹(どっちが子どもなんだ…)
楊「おまけに吹毛剣まで斬れなくなり…」
曹「…」
楊「石秀とも仲違いしてしまった」
曹「なぜ?」
楊「…白嵐に、立合いで負けたのを見られた」
曹「お前が?」

曹「それは戯れているだけじゃないのか?」
楊「私が本気で負けたのは、林冲以来だ」
曹「それは深刻だ」
楊「白嵐め…」
曹「…実は、済仁美殿から相談されてな」
楊「何を?」
曹「お前は楊令の意向を無視して、自分の意向を押し付ける傾向があると…」
楊「!」
曹「覚えはないか?」
楊「…ある」

楊志(ようし)…白嵐から学ぶことがあるかもしれん。
石秀(せきしゅう)…楊志殿に言い過ぎたかな…
曹正(そうせい)…今は悩むな。食え、楊志。

3.
楊志「…」

楊令「♪」
白嵐「!!」

済仁美「…旦那様?」
志「愉しそうだな」
済「一人と一匹ではなく、二人、ですね」
志「二人か」

令「♪」
白「!!」

志「私はずっと一人だった」
済「…私も」
志「こんな幸せは、本当にあるのだな」
済「…旦那様」
志「仁美?」
済「怖く、ないですか?」

志「なにがだ?」
済「…幸せが」
志「幸せが、怖い?」
済「いつか恐ろしいことが起こるから、ほんの少しの間だけ、こんな幸せが許されるのだ、と思ってしまう自分がいるのです」
志「…」
済「だから私は、幸せが、怖い」
志「幸せが溢れてしまうのだな、仁美は」
済「どうすれば良いのでしょうか」

志「幸せは目に見えんからな」
済「…そうですね」
志「しかし、仁美には令と白嵐がいて」
済「…」
志「私がいるだろう?」
済「…はい」
志「私も初めは戸惑っていた」
済「…」
志「だが、仁美が私を包んでくれた」
済「旦那様…」
志「ならば次は、私が仁美を包む番かな?」
済「…お願いします」

楊志(ようし)…もう、大丈夫だからな。
済仁美(さいじんび)…もう少しだけ、包んでください。
楊令(ようれい)…今日は母上が父上に甘える日だぞ、白嵐。
白嵐(びゃくらん)…そんな日もあるのだ、楊令。

双頭山 

双頭山…おもむろに黄信が双頭山にもう一つの山を加える提案をしたが、宋清から具体策とその後の処理について、期限付きの企画書の提出を求められ、頭を抱えている。

人物
朱仝(しゅどう)…初めて髭を剃る時は、かみそりとそれ以外の収納道具で傷だらけになった。
雷横(らいおう)…麓の居酒屋の柏世くんから、武術の稽古を頼まれた。
董平(とうへい)…曲の使い回しが多くなり、ファンがちょっと飽きてきた。
宋清(そうせい)…ただ戦がしたいだけの軍人にはお灸をすえんと。
孟康(もうこう)…宋清がキレると恐いな、と思っているけど、宋清は彼がキレると恐いな、と思っている。
李忠(りちゅう)…黄信が言うことを聞かないのはけしからんって?誰だって、そんな気分になることあるだろう?
孫立(そんりつ)…嫁からの手紙のテンプレート化が著しい。最近名前のコピペミスを発見して慄然。
鮑旭(ほうきょく)…馬麟と一緒に即興曲の練習を始めた。
単廷珪(たんていけい)…会議中の間の悪い質疑や発言は、「また聖水将が水を差したぞ」と関勝にいじられてた。
楽和(がくわ)…本番前のルーチンで、早口言葉を緩急自在のペースで、高い声から低い声まで繰り返す。

4.
董平「ついにネタが切れた」
鮑旭「今回は深刻ですな」
馬麟「ついに俺たちのオリジナル楽曲を」
楽和「作詞から始めるのですね…」
董「古の詩も、青蓮寺が使用料を徴収していることが発覚した」
馬「権利者保護の為などとのたまってるが、ほとんど死んでるだろうが」
鮑「無からの始まりですね」

董「俺たちは曲がりなりにもビジュアルバンドで売っているから、あまりコミカルな作風では困る」
馬「かと言って、美少年アイドル路線では若々しすぎる…」
鮑「難しい年頃ですな」
楽「各々の表現したい単語や曲調を発言するのはどうでしょう」
董「まず隗より始めよか」
鮑「やってみよう」
馬「…」

董「風流!」
鮑「闇!」
楽「湖畔!」
馬「…月」
董「一撃必殺!」
鮑「髑髏!」
楽「透明感!」
馬「…友」
董「一度まとめてみよう」
楽「闇に佇む月映る湖畔の…」
馬「風流な透明感が…」
鮑「友の髑髏を一撃必殺…」
董「…鎮魂歌か?」
楽「とりあえずやってみます?」
馬「…」
鮑「馬麟?」

董平(とうへい)…全員のアイデアをかき集めたら出来るものだな。
馬麟(ばりん)…鮑旭のワードが意外だった。
鮑旭(ほうきょく)…馬麟のリアクションが気になった。
楽和(がくわ)…これは気持ちを込めて歌えそうです。

聚義庁

聚義庁…良い夫婦の日に何をしますか?

人物
晁蓋(ちょうがい)…哲学的な恋文が届いた。何を言いたいのか分からなかったが、字が綺麗だな。まるで扈三娘のようだ。
宋江(そうこう)…周りの夫婦は心から祝福する。だが、私にそうなる資格は生涯無いよ。
盧俊義(ろしゅんぎ)…久しぶりに燕青にマッサージをしてもらった時、少しだけ涙ぐんだ。
呉用(ごよう)…案の定、仕事が妻。
柴進(さいしん)…子供の頃、好きな女の子がいたが、血筋のせいで露骨に遠ざけられた。
阮小五(げんしょうご)…漁師時代にガールフレンドがいたが、若気の至りで喧嘩別れしてそれっきり。
宣賛(せんさん)…金翠蓮が優秀な字の先生になったのが嬉しくて、サプライズお祝いをしたら、大泣きしてビックリ。

5.
金翠蓮「…よくここまで学びました、巧奴」
李巧奴「全部、翠蓮先生のおかげです」
金「文字に関してはもうなにも問題ないわ」
李「自分でも信じられない…」
金「お仕事について問題が起きたら、裴宣殿か孫二娘殿の所に、すぐ相談に行ってね」
李「…はい」
金「そこから先は、あなたとの戦いよ」

呉用「養生所の事務局に応募者が来た?」
白勝「えらい熱心に頼み込まれて、俺も困ってるんだが」
呉「会おう」

李「…」
呉「…失礼ながら経歴について、今一度聞かせて欲しい」
李「李巧奴と申します。済州の、妓館で働いていました」
呉「…この店はもしや」
李「…史進殿の」
呉「それは面白い」

呉「だが、李巧奴殿」
李「…」
呉「あそこは青蓮寺という組織が絡んでいる妓館だ」
李「青蓮寺?」
呉「あなたは知らないかもしれないが、私たちの敵だ」
李「…」
呉「あなたの熱意は伝わった」
李「…」
呉「しかし、そこで働いていた者に養生所の事務局、という重要な仕事を任せるのに不安がある」

呉「ここで働くからには、身の潔白を証明して欲しい」
李「それは?」
呉「あなたがその妓館と縁を切って、金輪際関わらないことを証明するものはないか?」
李「済州の裴宣殿と孫二娘殿にご相談に乗っていただき、連名の推薦状をご用意いたしました」
呉「それがあるならば話は早い」
李「…ならば」

呉「ここからは、白勝に話してもらった方がいいかな」
白「李巧奴さんよ」
李「はい」
白「あんたの覚悟はよく分かった」
李「…」
白「俺が教えられることは教えられるが、あいつらは何しろ口下手だ」
李「存じております」
白「あんたの思っている倍以上苦労するぜ?」
李「覚悟の上です」
白「…」

白「あいつらは、女だからって手加減しないぞ」
李「手加減されても困ります」
白「…ならこれ以上、言うことはねえよ、呉用殿」
呉「では、行ってもらうとするか」
白「分からないことはなんでも聞け。俺も何度でも教える。しかし、同じ誤ちは二度と繰り返すなよ。命に関わることだ」
李「はい!」

李巧奴(りこうど)…李瑞蘭の餞別の水晶と、金翠蓮のお守りを持って、養生所の勤務を始めた。
白勝(はくしょう)…安道全もこんなに驚くことがあるんだな。

呉用(ごよう)…さすが裴宣と孫二娘の仕事だ。一部の隙もない。

6.
宋江「良い夫婦の日、二人三脚大会だ」
呉用「宋江殿」
宋「どうした」
呉「なぜ鉄の錠で足を組まれているのですか?」
盧俊義「外す鍵を二人で探し出すのだ」
宋「選手入場!」

扈三娘「…」
王英「…」

鮑旭「…」
馬麟「…」

林冲「…」
公孫勝「…」

呉「人選が?」
宋「需要に応えたのだ」

呉「王英と扈三娘は分かります」
宋「夫婦だものな」
呉「なぜ鮑旭と馬麟が?」
盧「馬麟が、梁山泊嫁にしたい男ランキングで一位を取ったからだ」
呉「鮑旭なのは?」
盧「馬麟の希望だ」

林「…」
公「…」

呉「なぜ張藍殿ではないのですか?」
盧「よく錠を付けたな」
宋「張藍殿が付けた」

宋「開始!」

林「!」
公「!」

呉「なんという速さ…」
盧「しかし速さを競う競技ではないぞ」
宋「鍵のありかのヒントを渡しはずだが…」

王「竜の住む谷間を探せ?」
扈「竜といえば…」
王「入雲竜、混江竜、出林竜、独角竜…」
扈「そして九紋竜」
王「史進か…」
扈「遊撃隊を探しましょう」

鮑「鷹、算盤、亀を仲間に俺のところに来い!」
馬「鷹…」
鮑「李応殿?」
馬「あいつは鷲だ」
鮑「ならば摩雲金翅欧鵬か…」
馬「算盤は、神算子蔣敬」
鮑「すると亀は、九尾亀陶宗旺か」
馬「…なぜかあいつらには親近感があるんだよな」
馬「俺は李逵のことだな」
鮑「この筆跡は、確かに武松だ」

林「遅いぞ、ウスノロ!」
公「馬に乗れんと走れんか、馬鹿」
林「もやしの分際で。風に吹き飛ばされちまえ」
公「お前は何を食っても筋肉にしかならんから知恵がないのだろう?」
林「それで俺たちは何をすれば良いんだ?」
公「…知らん」
林「この足の錠はどうやって外すんだ?」
公「…分からん」

王英「遊撃隊宿舎だ」
杜興「鬼瞼児!」
陳達「跳澗虎」
鄒淵「出林竜!」
扈三娘「ノリがいいですね、杜興殿」
杜「…」
陳「矮脚虎!虎同士、勝負!」
王「望むところだ」
鄒「弟が世話になった、扈三娘」
扈「?」
鄒「勝負!」

陳「…強え、扈三娘」
鄒「王英何もしてねえ」
杜「あの扈三娘が…」

王「強いな、扈三娘」
扈「林冲騎馬隊は伊達ではありません」
史進「よくぞ我らの試練を乗り越えた。良い夫婦よ」
王(裸かよ…)
扈「…」
史「汝らの軛を解く鍵を授けよう」
王「竜の谷間とは?」
史「この谷間だ」
扈「…」
王(セクハラを超越している…)
扈「!!」
史「!?」
王(尻に刺しやがった…)

鮑「皆、ありがとう」
欧鵬「馬麟とは気があったからな」
蔣敬「私も賊に憧れていた頃があったのだ」
陶宗旺「馬麟も一緒に山賊になれそうです」
馬「…」
鮑「李逵の料理の匂いが…」
欧「鼻が利くな、鮑旭」
陶「本当に美味いんですよ、蔣敬」
蔣「私は初めてだ」
馬「…」
鮑「あっちだ!」

武松「…よく来た」
鮑「今史進が、肛門の拷問を受けた声がした」
欧「耳もいいな、鮑旭」
李逵「見つかっちまったか」
馬「…」
李「…笛は大丈夫か、馬麟?」
馬「…元どおりだ」
蔣「一曲頼んでいいか?」
陶「私も聞きたいです!」
鮑「ギターは無くても歌は合わせるぞ、馬麟」
馬「やれやれ…」

宋江「林冲と公孫勝は?」
呉用「一晩開けたというのに、見つかりません」
盧俊義「良い夫婦が初夜を迎えたか」

王英「…」
鮑旭「どうしました、王英?」
扈三娘「…」
馬麟(誰かが扈三娘を本気の真顔にさせたな)

安道全「…」
陳達「申し訳ない、安道全」
鄒淵「抜けなくなっちまった」
史進「」

林冲「もう一度だ、ウスノロ」
公孫勝「力では外れんと言っているだろう、馬鹿」
林「ならばどこで知恵を使えというのだ」
公「…?」
林「どうした、ウスノロ」
公「紙が…」
林「なんと書いてある?」
公「…くだらん戯言だった」
林「そんなもんを大事に取っておくゆとりがあるなら知恵を使え」

劉唐「我らの出番はまだか?」
孔亮「二人でいちゃついてるんじゃないですか?」
張藍「私というものがありながら」
劉「…」
張「あの二人には、もはや嫉妬することもありません」
劉「よく我々の野営を苦もなくこなしましたな」
張「致死軍エクササイズは欠かしていませんので」
孔(兵になれそうだ)

林「力では無理か…」
公「初めから言っているだろう、馬鹿」
林「この穴はなんだ?」
公「今気づいたのか」
林「なんだと聞いている」
公「…鍵穴に決まっているだろう」
林「ならば鍵はどこだ?」
公「知るか」
林「…そういえばお前、宋江殿に紙をもらったな」
公「…」
林「あの紙は?」
公「…」

林「お前まさか」
公「…戯言が書いてあった紙が懐にあったが」
林「…」
公「捨てた」
林「…馬鹿野郎が」

張「案の定、にっちもさっちもいきませんね」
孔「なぜ場所が分かった、張藍殿?」
劉「…聞かない方がいいと思う」

林「む!」

張「!」

公「どうした、馬鹿」
林「今、張藍の香がした」

張「風上に立つとは、不覚を取りました」
劉「発言が只者じゃない」
孔「そりゃ豹子頭の奥方だからな」

林「やつらか!」

張「撤収!」
劉「俺たちが時を稼ぎます」
孔(もはや張藍殿に率いられている)

公「道を、開けろ」
劉「俺はあなたのために死にます、張藍殿」
孔「おい」
林「小癪な!」

孔「大丈夫か、劉唐」
劉「清々しい…」
孔「林冲に汗をかかせるとは」
劉「本望だ」
孔「…」

林「」
公「馬鹿の死域にあわせるとは…」

張「!」

林「観念しろ、張藍」
張「…参りました」
公「…」
林「外せ、公孫勝」
公「外したいのは私だ」
張「…鍵は、私ではありませんよ?」
林・公「!?」

孔「痛え…」
林「鍵があるなら言え!孔亮!」
孔「メモに、致死の火星を見つけろって書いたじゃないですか」
公「…」
林「やっと外れた」
公「こいつと一昼夜過ごしたい奴がいるのか?」
張「私は一昼夜どころではありませんよ?」
公「…」
張「…」
公「…」
張「…」
公「やはり…」
張「…」

林「…」
張「…何を突然照れ始めているのですか」
林「良い夫婦の日をウスノロと過ごしたことに慚愧の念が」
劉「随分だな、林冲殿」
林「強気ではないか、劉唐」
張「…かっこよかったですよ、劉唐殿」
劉「…」
林「俺は?」
張「…そういうところです」
林「分からん」
公「分かりたくもない」

扈三娘(こさんじょう)…ノーコメントです。
王英(おうえい)…すげえものをみた。

鮑旭(ほうきょく)…いつもより乗ってたな、馬麟。
馬麟(ばりん)…気のせいだ。

欧鵬(おうほう)…黄門山って山が実家の近くにあった。
蔣敬(しょうけい)…この美味さは計算外です。
陶宗旺(とうそうおう)…蔣敬殿も石積みを組んでみませんか?

武松(ぶしょう)…良かったな、李逵。
李逵(りき)…良かったよ、兄貴。

林冲(りんちゅう)…家に帰った瞬間、獣になった。
公孫勝(こうそんしょう)…奥方も奥方だよ。
張藍(ちょうらん)…仕方がないですね。

劉唐(りゅうとう)…騎馬隊に妙に強気になった。
孔亮(こうりょう)…一月たっても疼く。

杜興(とこう)…おてんば娘がおてんばを拗らせたか…

安道全(あんどうぜん)…取れた…
陳達(ちんたつ)…感動した。
鄒淵(すうえん)…生命の息吹を感じた。

史進(ししん)…これが、梁山泊の漢だ。

宋江(そうこう)…史進の生き様に涙を流した。
呉用(ごよう)…思わずもらい泣きした。
盧俊義(ろしゅんぎ)…なんで泣いてんだこいつら。

兵站

兵站…梁山格闘宋国大会で大もうけしようと画策したが…

7.
柴進「…」
蔣敬「どうされた、柴進殿」
柴「我々の立合いゲーの宋国大会を開催するのだが」
蔣「いいですな」
柴「この全国ランカー1 位の名を見てくれ」
蔣「ENMEIさん…」
柴「侯健の密書によると…」
蔣「…まさか」
柴「そのまさかだ」
蔣「…私の頭の算盤がバグっていますよ」
柴「だろう?」

柴「開封府の遊戯場で、若者からもてはやされているとか」
蔣「そんなに上手いんですか?」
柴「でなければ、全国ランカー1位を保てるわけがない」
蔣「…大会の運営上、そんな重鎮をお招きしないわけにはいきませんな」
柴「2位のShadow.Kさんもな」
蔣「我らで出場できる者は?」
柴「目処はある」

柴「まず、燕青」
蔣「意外とインドア派なんですよね」
柴「公孫勝」
蔣「そうなんですか?」
柴「開封府の潜入任務の際は足しげく通っていたらしい」
蔣「致死軍用のハードを販売します」
柴「まず喫緊の課題は、我らと悟られず、ENMEIさんにお越しいただくかだ」
蔣「魯達殿の力も借りましょう」

柴進(さいしん)…民の力を借りて手を出せないようにするか…
蔣敬(しょうけい)…全土で生配信すれば、お互い手は出せますまい。

断金亭

断金亭…演目の順番を決めるくじ引きは、いつも史進が一番を引く。いかさまじゃないぞ。本当だぞ。

8.
晁蓋「秋の夜長の隠し芸大会を行う」
宋江「…」
呉用「一番、遊撃隊将校による…」
宋「恣意的にもほどがないか?」
呉「北風と太陽」

穆春「やい、太陽」
陳達「なんだ。北風」
穆「俺とお前のどちらが強いか勝負をしないか?」
陳「ならば、あの旅人の着物を脱がせた方が勝ちだ」

史進「…」

穆「その勝負にはのらん」
陳「臆したか、北風」
穆「お前の熱さで、あの旅人は間違いなく着物を脱ぐ」
陳「ならばお前は、着物を吹き飛ばせば良いではないか」
穆「ならそういうお前は、旅人に着物を着せる事ができるのか?」
陳「それは」
穆「するならば、もっと公正な勝負を選べ、太陽」
陳「…」

史進「!」

陳「!?」
穆「なぜ脱いだ、旅人」

史「…」

陳「我らの勝負に水を差すとは許せぬ」
穆「懲らしめてやろう」
李雲「何を揉めている、太陽、北風」

晁蓋(新キャラが)

穆「おう、雲ではないか」
陳「雲も力を貸してくれ」
穆「あの旅人を懲らしめるのだ」
李「任せろ」

史「…」

史進(ししん)…第二部に続く。
陳達(ちんたつ)…太陽。ノリで決まった。
穆春(ぼくしゅん)…北風。言動が寒いから。
李雲(りうん)…雲。キャストの増員に伴い出演。

晁蓋(ちょうがい)…何が始まるのだ…
宋江(そうこう)…施恩がいない…
呉用(ごよう)…確かに、太陽だけが有利な戦いはおかしいですね。

施恩「…」

宋江(施恩が)

李雲「!」
史「…」
施「雨ニモ負ケズ」
穆春「!」
史「…」
施「風ニモ負ケズ」
李「!」
陳達「!」
史「…」
施「雪ニモ夏ノ暑サニモ負ケヌ」
史「…」
施「丈夫ナ体ヲ持チ」

呉用(ほどがある…)
晁(凄いセットだ)

施「欲ハ無ク決シテ怒ラズイツモ静カニ笑ッテイル」

史「!」
施「一日ニ麦四合ト饅頭ト多クノ肉ヲタベ」

晁(これでこそ史進)

史「…」
施「ジブンヲカンジョウニ入レズニヨクミキキシワカリソシテワスレズ」

呉(施恩の朗読はさすがだな)

史「…」
施「野原ノ松ノ林ノ蔭ノ小サナ萱ブキノ小屋ニイテ」

鮑旭(…)
武松(子午山が見える…)

史「!」

晁(客席に)

施「東ニ病気ノチシグンアレバ行ッテ看病シテヤリ」

史「…」
楊雄「…」

施「西ニツカレタ母アレバ行ッテソノキノコノ籠ヲ負ヒ」

史「…」
馬麟「…」

施「南ニ死ニサウナ人アレバ行ッテ」

史「コハガラナクテモイヽ」
施「トイヒ」
金大堅「…」

施「北ニケンクヮヤソショウガアレバ」
史「ツマラナイカラヤメロ」
施「トイヒ」
林冲「…」
公孫勝「…」

陳「!」
史「…」
施「ヒドリノトキハナミダヲナガシ」

穆「!」
史「…」
施「サムサノナツハオロオロアルキ」

史「!」
施「ミンナニ」
陳・穆・李「スッパダカ」
施「トヨバレ」

史「…」
施「ホメラレモセズ」

宋(誰もほめん)

施「クニモサレズ」

晁(いい加減尻がクドイ)

史「サウイフモノニオレハナリタイ」

史進(ししん)…子午山の麓の童歌が元ネタ。
陳達(ちんたつ)…この設備投資は大変だったぞ。
穆春(ぼくしゅん)…俺も寒かった。
李雲(りうん)…味のある歌だな。
施恩(しおん)…一行一行噛みしめながら読んでた。

晁蓋(ちょうがい)…史進の生き様だな。
宋江(そうこう)…今回裸になる必要性は感じられなかった。
呉用(ごよう)…また新しい方向性を打ち出しましたな。

鮑旭(ほうきょく)…子午山の唄をこう使うとは…
武松(ぶしょう)…酒が進んだ。
楊雄(ようゆう)…上手く使われた気がした。
馬麟(ばりん)…なぜ知っている、史進。
金大堅(きんだいけん)…まだまだ現役だ!
林冲(りんちゅう)…お前のことだな、ウスノロ。
公孫勝(こうそんしょう)…おまえのことだ、馬鹿。

石碣村

石碣村…阮三兄弟の故郷。腕白盛りの三兄弟だったが、お母さんが巧みに御していた。

9.
阮小五「分からず屋どもが…」
阮小二「どうした、小五?」
五「兄貴…」
二「またお前の提案を馬鹿にされたのか?」
五「今のままの船では遅すぎるし、魚を下ろす要領が悪すぎる。工夫すればもっと早くできるのによ…」
二「俺に教えてくれ」
五「…だからよ」

五「こういう仕組みを作れないかな?」

二「すまん、小五。俺はお前ほど知恵は回らんから、全ては分からなかった」
五「…」
二「だが、お前の船や漁師の仕事を良くしたい想いは、十分に伝わってきたぞ」
五「…ありがとよ、兄貴」
二「お前の船造りの案は、いつか俺が船大工になったら必ず活かすからな」
五「近々くるんじゃねえかな?」

阮小七「またしょげてんのかよ、小五兄貴」
五「馬鹿の相手は疲れるのさ」
七「俺の相手は?」
五「どうかな?」
七「俺は小五兄貴が凄えのはよく分かってるぜ」
五「…」
七「細えことは全然分からねえけどな」
二「今はそれじゃ駄目かな、小五?」
五「…充分だ。ありがとう」
七「博打だ、兄貴!」

阮小二(げんしょうじ)…叔父上ならお前の言うことを分かってくれるんじゃないかな?
阮小五(げんしょうご)…近くの村に晁蓋って変わり者の保正がいるらしいぜ?
阮小七(げんしょうしち)…なんでも塔を背負って川を渡ったっていう豪傑らしい。

独竜岡

独竜岡…旅をしている解宝には、いつも父失敗作のタレの匂いが付いて回った。

10.
鄒潤「ちくしょう、この俺が喧嘩で負けるとは」
鄒淵「強かったな、あの解宝とかいう猟師」
潤「このままでは終われん…」
淵「止めの頭突きは効いたな」
潤「それだ!兄貴!」
淵「それ?」
潤「今から俺は頭突きの稽古をする」
淵「…頭突きの?」
潤「この大木を頭突きでへし折ってやる」
淵「…」

潤「!!」
淵「止めろ、潤!正気とは思えんぞ!」
潤「止めるな!兄貴」
淵「止めない方が良識を疑われる」
潤「俺は人ではなくなる!」
淵「止めろ!本当にやめろ!」
潤「!!」
淵「大木が軋む音が…?」
潤「止めだ!」
淵「!!」
潤「…どうだ、兄貴」
淵「大きな瘤が…」
潤「独角竜鄒潤だ」

潤「これで互角以上に戦える」
淵「どうかな?」
潤「…しかしどうも真っ直ぐ歩けんな」
淵「当たり前だ」
潤「!?」
淵「潤!」
?「かかったな、獣!」
潤「獣ではない、人だ!」
淵(人ではなくなるって言ったよな)
解宝「人?」
潤「野郎!」
解「お前は!」
潤「勝負しろ!」
解「…その格好で?」

解宝(かいほう)…とりあえず解放してもう一回喧嘩したけど、頭突きを避けたら大したことなかった。
鄒淵(すうえん)…俺らも猟師にならねえか、潤?
鄒潤(すうじゅん)…この瘤を使わせねえとは…

青蓮寺

青蓮寺…総帥も幹部もワーカーホリックを拗らせているが、もしその集中力を他の部門に回したら…

人物
袁明(えんめい)…ゲームは一日二刻の掟を守ってこの強さ。
李富(りふ)…コントローラーのボタンの位置が気になる。
聞煥章(ぶんかんしょう)…一丈青の衣装の露出度を上げる嘆願書を送りすぎて、アカウントを停止された。
洪清(こうせい)…体術の稽古中、浪子のコンボを再現できてしまった。
呂牛(りょぎゅう)…大会が開催されると知るや否や、物販売り場で一番良い場所を確保した。

11.
袁明「李富」
李富「はい」
袁「お前は青蓮寺に住んで久しいが」
李「…」
袁「日常の事はどのように済ませているのだ?」
李「と、言いますと?」
袁「率直に言おう、李富」
李「…」
袁「最後に身体を洗ったのはいつだ?」
李「…」
洪清「李富殿」
李「…」
洪「部屋を見せてもらう」
李「はい…」

洪「…」
李「…そんなに匂いますか?」
袁「まるで地下牢での暮らしを愉しんでいるかのようだぞ、李富」
李「愉しいなど、滅相もございません」
袁「私も日常が仕事ではある」
李「…」
袁「しかし、身体を洗ったり、外を歩いたりするのは欠かさぬぞ?」
李「それは私の非日常です、袁明様」
袁「…」

袁「洪清」
洪「まず、浴場とコインランドリーの併設を実行します」
李「なんと!」
袁「お前の仕事に言うことはない、李富」
李「…」
袁「だが、生活指導をしなくてはならぬと思わなかった」
李「…申し訳ございません」
洪「湯を沸かしました、李富殿」
李「身体は洗うものでしたね」
袁「…」

袁明(えんめい)…地下牢の方がまだマシではないか…
洪清(こうせい)…部屋に光が刺すよう、施工を依頼します。

李富(りふ)…まさか日常で身体を洗って良いとは…

12.
袁明「…」
洪清「…」
袁「お前も届いたのか、洪清」
洪「…不穏な気を感じます」
袁「しかし、我らが出ないわけには行かぬだろう」
洪「もしや、梁山泊の罠なのでは」
袁「洪清」
洪「…」
袁「お前がいるではないか」
洪「…」
袁「我らで梁山泊を潰すぞ」
洪「御意」

聞煥章(強気だな、袁明様)

客「梁山格闘の大会だ!」
客「我らがENMEI様と、Shadow.Kさんも出られるらしい」
客「しかし、浪子と入雲竜もランキングを上げてきたからな」

袁「…これほどの観客が」
洪「殿、李師師様より授かりものが」
袁「顔を隠すか」

李師師「それでも実名で登録されているのですけどね」
燕青「誰がだ?」

魯達「盛り上がっているか、野郎ども!」

客「!!!」

袁(あの隻腕は…)
洪(やはり梁山泊)

魯「選ばれし強者が立合いをする」

袁「…」

魯「だがそれは殺し合いではない!」

洪「…」

魯「ここは立合いの腕を競う場!殺し合いの場にせぬことをここに誓う!」

洪(…)
袁(粋ではないか、梁山泊)

袁明(えんめい)…不敵な仮面をつけて大歓声を受けたがいかんせん実名。
洪清(こうせい)…黒づくめの衣装で大歓声を受けてちょっと嬉しい。

聞煥章(ぶんかんしょう)…予選落ち。

李師師(りしし)…あの人もお茶目ですからね。
燕青(えんせい)…ENMEI?まさかな…

魯達(ろたつ)…ここでみだりに暗殺の機を狙う方が危うくなるからな。

13.
魯達「ベスト4はこの4人だ!」

袁明「…」
洪清「…」

公孫勝「…」
燕青「…」

客「ENMEI様!今日も執務をよろしくお願いします!」
客「Shadow.Kさんも黒備えが映えてる!」
客「入雲竜と浪子はコスプレ野郎かと思ったが」
客「入雲竜の総帥も、浪子の影も見事だった」
客「対戦カードは?」

魯「Shadow.Kと浪子!ENMEIと入雲竜の準決勝だ!」

客「Shadow.Kさんの浪子はコンボにハマったらもう逃げられん」
客「浪子の影は一撃必殺のカウンターが決まれば勝負は分からん」
客「ENMEI様の入雲竜は複雑な妖術コマンドを完璧に把握されている…」
客「入雲竜の総帥は、更に研ぎ澄まされていた」

柴進「見事な司会だ、魯達は」
蔣敬「全土配信の再生数も凄いことになっていますよ」
柴「全員顔を隠しているな」
蔣「今日だけは分かっていても手は出せませんからね」
柴「手を出さないことを高らかに開催宣言する魯達の策は潔かったな」
蔣「致死軍と青蓮寺の軍が物販売り場で鉢合わせしたとか」

袁明(えんめい)…致死軍がいるらしいが、堂々としていようか。
洪清(こうせい)…たまには光を浴びるのも悪くない。

公孫勝(こうそんしょう)…これだけの客と青蓮寺の軍がいたら、手出しなどできんよ。
燕青(えんめい)…本当に袁明なのか?

柴進(さいしん)…どんどん新好漢を追加していこう。
蔣敬(しょうけい)…この閲覧数、宋国全土が注目していますな。

魯達(ろたつ)…隻腕なのが、この時だけは惜しまれるな。

14.
洪清(この男、どこかで…)
燕青(漆黒の衣装の気が凄まじい…)

魯達「立合い!」

洪「!」
燕「!」

柴進「浪子は手数で勝負する、コンボが決め手の好漢」
蔣敬「対して影は、相手の攻撃を読んだ返しが決めての強者」
柴「どちらも使いこなすには高度な技量が必要な、上級者向け強者だ」

燕(浪子のコンボは初手の見切りが肝心…)
洪(影の返しは読みを外すのが肝心…)
燕「!?」
洪「投」

蔣「あえて浪子の投げ技から入るとは」
柴「早速読みを外してきた」

洪「攻」
燕「防」

蔣「的確に防いでいますね」
柴「狙っているな」

燕「返」
洪「!」

蔣「決まった!」
柴「これで五分だ」

燕「攻!」
洪「避」
燕(しまった!)

蔣「あ…」
柴「皮一枚見切ったか」

洪「攻攻攻攻攻」
燕「…」
洪「攻攻攻攻攻攻」

蔣「なんと美しい…」
柴「勝負あったか」

洪「攻!」
燕「…」

魯「勝者はShadow.Kだ!」

燕「参りました」
洪「…見事」
燕(本人も体術の名手だ)
洪(私を上回るのでは…)

洪清(こうせい)…影も使えますがな。浪子の華のある技に魅せられて。
燕青(えんせい)…浪子も悪くないが、一撃必殺の返しが好みで影を使っているのだ。

柴進(さいしん)…こんなコンボできるのか?
蔣敬(しょうけい)…Shadow.Kさんのみ知る、秘伝だそうです。

魯達(ろたつ)…できるなら、花和尚って坊主で大暴れしてえな。

15.
袁明「…」
公孫勝「…」

客「ENMEI様!」
客「執務の始まりだ!」

李富「今、袁明様と聞こえなかったか?」
聞煥章「これを見ろ、李富」
李「お前は仕事中だというのに…」
聞「早く!」
李「!?」

魯「立合い!」

袁「…」
公「…」

李「この仮面の方は、もしや…」
聞「ENMEI様と呼ばれる方だ」

袁「…」
公「…」

李「これは何をしているのだ?」
聞「立合いゲームだ。ENMEI様の入雲竜は、妖術の攻撃」
李「…」
聞「入雲竜の総帥も、様々な撹乱の技を得意とする、クセのある強者だ」
李「詳しいな、聞煥章」
聞「お前もやらないか?」

公「!」

李「小癪な!」
聞「総帥の背後からの撹乱だ」

袁「…」

李「身を守ったのか?」
聞「霧の妖術を使ったのだ」

公「!」

聞「霧の妖術から、闇と刃の妖術が決まった」
李「総帥の身動きが止まった」

袁「…」

聞「…出るぞ、李富」
李「何がだ?」

公「!」
袁「…」

李「魔神が…」
聞「最難度の奥義。托塔天王だ」

公「…完敗だ」
袁「…」

袁明(えんめい)…托塔天王を会得するのは、闇塩の道を暴くのより大変だった。
公孫勝(こうそんしょう)…ここまで入雲竜を使いこなす使い手には敵わん…

李富(りふ)…私もやってみたくなったぞ。
聞煥章(ぶんかんしょう)…まずは豹子頭か青面獣から始めろ。

魯達(ろたつ)…托塔天王のコマンドが見えなかった…

16.
魯達「決勝進出は、ENMEIとShadow.K!」

袁明「…Shadow.K。分かっていると思うが…」
洪清「無論」

呉達「李富殿まで仕事中に…」
李富「呉達殿、これを」
呉「!?」
聞煥章「ENMEI様とShadow.Kさんが宋国立合いゲームの全国大会決勝戦にいます」
蒼英「何ですって!」
何恭「青蓮寺全員集合!」

袁「…」
洪「…」

沈機「これは一体…」
李「Shadow.K殿も、もしや…」
聞「言わずもがなだ、李富」
何「Shadow.K殿が勝ちを譲られるのでは?」
呉「それはありえん、何恭」
沈「ENMEI様は真剣勝負のみ、お望みだ」
呉「下手に接待プレイなどしたものなら、処断される」
蒼「私たちも緊張しますな」

袁「…」
洪「…」

聞「入雲竜の妖術を前に、どこまで懐に入って浪子のコンボを決められるか…」
蒼「体術型の達人は回避も巧みですからね」
聞「入雲竜は接近戦が不得手だからな」
蒼「無論ENMEI様はそれを分かっておられるでしょう」
呉「詳しいな、お前ら」
沈「私たちは初めてだから解説を頼む」

袁明(えんめい)…お前の気もかつてないほど昂っているな、Shadow.K
洪清(こうせい)…殿も…

李富(りふ)…これは前代未聞だ。
聞煥章(ぶんかんしょう)…会場から声ひとつ聞こえなくなったぞ。
呉達(ごたつ)…このゲームは面白そうではないか。
蒼英(そうえい)…私は青面獣を使います。
何恭(かきょう)…定例会議の時よりも恐ろしい緊張感が…
沈機(しんき)…あの頃の二人のようだ。

魯達…これが青蓮寺の本気か…

17.
袁明「…」
洪清「…」

魯達「…立合い!」

洪「!」

呉達「一気に浪子が間を詰めたぞ」
蒼英「コンボが要の強者ですから」
聞煥章「だが、ENMEI様がそれを読まぬはずがない…」

袁「」
洪「攻」
袁「…」

沈機「誘いか!」
李富「入雲竜の移動術の先を読んだのか?」
聞「分かってきたな、李富」

洪「攻攻攻攻」
袁「…」

蒼「Shadow.K殿の浪子三十六手の四!」
呉「雲のように掴み所のないコンボだ…」

袁「反」
洪「…」

沈「画面の左右が入れ替わったぞ!」
聞「入雲竜の鏡の術だ」
蒼「この術を返しで決めるとは、何という技量…」
李「…この符丁は?」
聞「入雲竜のコマンドリストだ」

袁「炎」
洪「!」

呉「画面が反転したら、操作は?」
蒼「無論反転します、呉達殿」
沈「それでも双方の技に狂いが見られないのは?」
李「おそらくそれほどの達人なのですよ、沈機殿」
聞「分かってきたな、李富」

洪「!!」
袁「…」

蒼「なんと!」
聞「鏡の術の時間切れを待たずに懐に!」

洪「攻攻攻攻攻攻」
袁「…」

蒼「三十六の六!」
呉「雄々しい豹のような、力強いコンボだ」
沈「このままでは、ENMEI様が…」
李「体力の下の目盛りは?」
聞「入雲竜の妖術力目盛りだ」
蒼「切れると妖術が使えなくなります」
沈「それも既に無くなりそうではないか!」

洪「攻!」
袁「…」

李「死か?」
聞「いや、辛うじて残っている」
蒼「しかし、打撃があと一度でも入ったら死です」
何恭「運が良かったですね」
沈「…ENMEI様が、運に頼られるだろうか」
何「!」
沈「もしも体力が残ることも、妖術力が無くなることも計算通りだとしたら?」
蒼「それは」
聞「大変なことになります」

袁「…」
洪「!?」

李「入雲竜の動きが!?」
聞「死域…」
蒼「死に近づいた時のみ発動する、最強の状態…」
呉「私も軍で覚えがある」

袁「…」
洪「」

李「なんだ今の技は…」
蒼「私も初めて見ました」
聞「一零八の星を解き放つ、死域技か…」

魯「優勝は、ENMEIだ!」

洪「…」
袁「見事…」

袁明(えんめい)…及時雨を降らせていて良かった。
洪清(こうせい)…鏡の術と一緒に雨の術で回復していたことに後で気づいた。

李富(りふ)…私もやるぞ。
聞煥章(ぶんかんしょう)…ほどほどにな。
呉達(ごたつ)…遊戯は一日二刻までだ。
蒼英(そうえい)…すごく袁明と話がしたい。
何恭(かきょう)…青蓮寺総帥の格の違いを、改めて痛感。
沈機(しんき)…新しいものに挑戦したくなった。

魯達(ろたつ)…俺ですら立っているのが精一杯だったよ…

柴進(さいしん)…もしかして、優勝と準優勝の賞金の行方は?
蔣敬(しょうけい)…あちら側でしょう…

燕青(えんせい)…決勝戦のENMEIに勝てる絵図が書ける気がしない。
公孫勝(こうそんしょう)…我らはこれ程の者と戦をしているのか…

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…史進の心身ともに裸になる教えは、中々賛同者が出てこないが…

人物
班光(はんこう)…あだ名は御竜子(ぎょりゅうし)。史進のストッパーとなるべく絶対に脱がないけど、毒は確実に効き始めている。
鄭応(ていおう)…将校。史進の話が分からないとき、頭が悪くて本当によかったと思うぜ。
穆凌(ぼくりょう)…将校。呼延灼の息子。呼延灼がその事実を知った時には、時すでに遅かった。

18.
史進「…」

兵「うわ、史進殿だ」
兵「目を合わせるな」
兵「尻だけは見たらいかん」

史(兵が露骨に俺を無視しやがる)

兵「!」
兵「来た!」

花飛麟「…」
史(…ほう)

兵「心が浄化されていく」
兵「男の身体も、かくも美しいものなのだな…」
兵「それに比べて…」

史(そういう事だったのか…)

史「花飛麟」
花「これは、史進殿」
史「貴様に浴場での一切の身体の露出を禁ずる」
花「はい?」

兵「何を言っている、史進殿!」
兵「我らの目の保養を奪うつもりですか!」

史「尻でもくらえ」

兵「目が!」
兵「吐き気が!」

史「お前が浴場で着用する着物を用意しておこう」
花「…何故?」

花「これはなんだ、班光?」
班光「史進殿が用意されたウエットスーツです」
花「私はこれを浴場で着なくてはならないのか?」
班「史進殿の厳命です…」
花「…私が何をしたというのだ?」
班「さあ…」
花「これでは身体を洗えぬではないか」
班「工夫しろと、史進殿が…」
花「…私も、手を打とう」

史進(ししん)…これで兵どもも羞恥心を失うはずだ。

花飛麟(かひりん)…私もお前につくぞ、班光。
班光(はんこう)…花飛麟殿がいれば百人力です。

19.
史進「昨日は良い尻の日だったという」
班光「はあ…」
史「班光の尻は普通の尻だ。良い尻とは言えん」
鄭応「…」
史「鄭応の尻は窪みがえぐい。汚い尻だ」
班「…それでは史進殿の尻は?」
史「無論、良い尻だ」
鄭「…なぜそう思われているので?」
史「腰を据えて話そうか」
班(そんな話題かよ)

史「乱雲と長年共に走ってきた、この大臀筋の力強さ」
鄭(やっぱ汚え)
史「!」
班「!?」
史「この年季の入った鼓のような、尻鼓の音色」
鄭(舌鼓みたいに言うんじゃねえよ…)
史「そして何より、尻を覆う竜の刺青だ」
班(何でそこにいれちゃったかなぁ…)
史「良い尻とは、俺の尻だ」
班(知りません)

花飛麟「…」
兵「花飛麟殿!」
兵「湯浴みですか?」
花「…そうだが」
兵「是非ともご相伴を!」
花「…」

史「あの野郎め…」
班「花飛麟殿のお尻は綺麗ですよね、鄭応殿」
鄭「正直驚いた」
史「あんな柔な尻のどこが良い尻だ」

兵「花飛麟殿、そのウエットスーツは!?」
花「…今は何も言えん」

史進(ししん)…花飛麟の露出だけは断固許さん。
班光(はんこう)…ウエットスーツの工夫が上手く行けば…
鄭応(ていおう)…史進の尻鼓の音は確かに良い音だと思った。

花飛麟(かひりん)…ウエットスーツに工夫を凝らしている最中。

20.
花飛麟「…」
兵「なぜウエットスーツを着るのですか!」
兵「ここは浴場ですぞ!」
史進「貴様らがこの小僧に欲情しているのではないか!」
兵「史進殿!」
兵「よもやあなたが…」
兵「なんてこった」
兵「杜興殿がいたら…」
史「梁山泊の風紀の乱れは、この俺が正す」
班光(どの口が言ってるんだ)

花「…」
兵「着替えの合間に覗くことはできたが…」
兵「物足りんにも程がある」
史「貴様ら!下の布を取らんか!」
兵「嫌です!恥ずかしい!」
史「貴様それでも遊撃隊の古参か!恥を知れ!」
兵「…!」
班(あんただよ)
兵「これが、羞恥心…」
史「貴様が恥を知ったがゆえに芽生えた悪しき心よ」

兵「おい!あれを見ろ!」
兵「これは!」
史「!?」

花「…」

兵「湯船に浸かることでウエットスーツが透けて見えるぞ!」
兵「まるで聖衣に身を包んだ天からの使いのようだ…」
史「貴様、この着物に何をした!」
花「何もしていませんが?」
史「班光!」
班「花飛麟殿の逞しさが勝ったのですよ」

史進(ししん)…小僧どもが舐め腐りやがって…

班光(はんこう)…杜興殿に密使を送ります。
花飛麟(かひりん)…過去に何かあったようだな。

21.
史進「遊撃隊お尻を出した漢、一等賞選手権を行う」
班光「…」
鄭応「…」
穆凌「…」
史「初めにお尻を出した者に、次の戦の先鋒を一任する事を約束する」
班「…」
史「遊撃隊の先鋒に、羞恥は不要」
鄭「…」
史「羞恥を感じるならば、先鋒を他の者に譲ることを恥と思え」
穆「…」
史「始め!」

史「なぜお尻を出さぬ!」
班「既に史進殿が出しているからです」
史「ほう」
班「ならば、史進殿が先鋒ということでよろしいのでは?」
史「班光」
班「…」
史「俺はお尻を出した漢に、先鋒を任せると言った」
班「だからもう、史進殿はお尻が出ているではありませんか」
史「愚か者!」
班「!?」

史「貴様は既に出ているお尻と、これから出すお尻の違いすら分からぬ愚か者だ」
班「!?」
史「己の過ちに気づいたか、班光」
班「つまり、史進殿のお尻は、今既にここにあり…」
史「…」
班「我らのお尻はこれから出る、未来のお尻という事ですね」
史「だから一番最初に出すことに、価値があるのだ」

史進(ししん)…まさか穆凌が出すとは。

班光(はんこう)…史進に完全論破されてすごく悔しい。
鄭応(ていおう)…なんで完全に理解してるんだよ、班光。
穆凌(ぼくりょう)…二人の会話を聞いていたら、つい…

22.
班光「おかしいな…」
花飛麟「どうした?」
班「私の筆がないんです」
花「卓の上は?」
班「そこにあるはずなのですが…」
花「その紙は?」
班「…」
花「何が書いてあった?」
班「宝の地図が」
花「この筆圧は史進殿だな」
班「今度は何をするつもりだ…」
花(ちょっと顔が綻ぶんだよな、班光)

班「史進殿のことだからどうせ…」
花「どうせ?」

班「…見つけた」
花「何を?」
班「史進殿です」
花「私には見るも無残な岩が二つあるようにしか見えないが」
班「…」
花「…嘘だろ」
班「私の筆が」
花「この谷間は、まさか」
班「…抜き差しならないとはこのことですな」
花「刺すのはまずい」

班「刺される危険性を考えなかったのか、この人は」
花「呼吸はどうしているのだ?」
班「抜いて差し上げよう」
花「ほっとけ」
班「抜けない…」
花「そんな馬鹿な…」
班「試してください」
花「触るのもおぞましい…」
班「…」
花「抜けない」
史進「まだ貴様らに、この伝説の筆を抜く資格はない」

史進(ししん)…いかん。抜けない。
班光(はんこう)…尻の筋肉が硬直してしまったのでは?
花飛麟(かひりん)…なんだかんだで同じレベルじゃないか、班光。

23.
史進「班光」
班光「はい」
史「お前は、命と尻のどちらが先だと思う?」
班「…命ですね」
史「なぜそう思う?」
班「だって、史進殿がしたたかに放たれた精が受精して、命になるではありませんか」
史「!」
班「したがって私は、尻よりも先に命が宿ると考えました」
史「…」
鄭応(乗るなよ、班光)

史「そう考えるとすごいな、班光」
班「何がですか?」
史「この地に宿った命の数だけ、尻があるのだからな」
班「確かに…」
鄭(だから乗るなよ、班光)
史「俺たちが友とする馬。空を飛ぶ鳥や、秋の夜に鳴く虫にも、尻があるのだからな」
班「なんだか、尻が豊かなものに思えてきました」
鄭(いかん)

史「俺たち人間のみならず、命に優劣はない」
班「おっしゃる通りです」
史「ならば、尻にも優劣はないということにならんか、班光?」
班「おっしゃる通りです!」
鄭(さらば、班光)
史「なんだか、生きとし生ける全ての尻に感謝を捧げたくなった」
班「そうですね!」
史「脱げ。班こ」
班「嫌です」

史進(ししん)…ここまで話についてきて、なぜ寝返るのだ!
班光(はんこう)…それとこれとは話が別です!

鄭応(ていおう)…分からねえな…さっぱり。

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