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東京の広告代理店を離れ、縁もゆかりもなかった土地で『乾燥廃棄やさい』まみれになっている理由

こんにちは、田村聡といいます。

株式会社hakkenにて、乾燥廃棄やさいプロジェクト「UNDR12」のプロジェクトマネージャーをやっていまして、この4月に広島県安芸高田市という田園風景広がる町に移住しました。

東京生まれ東京育ちの自分が、縁もゆかりもない土地に「なぜ移り住むことになったのか」「そこで何をやりたいのか」、少し長くなってしまうのですが自分が環境問題について興味をもったあたりから話をさせてください。

【30秒でわかる!この記事のまとめ】
・兄の本棚から盗み読みをしたのが始まり
・ツバルでアホな走りを繰り返してたら気づけたことがある
・自分が気分良く生きたいから環境/社会に良いことをしている
・日々、廃棄野菜を乾燥し続けている

※写真は、海面上昇の現実を世に広めるために「アホの走り集」という動画の撮影で1ヶ月ほど滞在したツバルでの一コマ。前列の楽しそうなのがツバルの子供たちで、後ろの全力の大人たちが撮影クルー(田村は左端)。

ヒッピーとナウシカに憧れて進んだ環境学の道

「人と違うことをしたい」

というとても青い理由で、私は高校卒業後にオーストラリアの大学に進学しました。ただ、「大学時代は人生の夏休みだ」という典型的な日本人学生の考えが染み付いていたので、実は特にこれといった目的はなくの留学でした。

その結果、半年で転校したり、卵を投げつけられたり、衣服を半分以上捨てられたり、裸族農園でトラウマを喰らったりと、鳴かず飛ばずの留学生活を送ることになります。

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そんな自分に転機が訪れたのは渡豪2年目。初めてできたオーストラリア人の友達はCieonというヒッピーでした。彼女の生き方や姿形が、高校時代に兄の本棚から盗み読みしていた風の谷のナウシカの姿と重なり、次第に友愛と共に尊敬に近い感情を持つようになります。

カンガルーの肉を真っ黒な鉄のフライパンで焼きながら聞いた生態系の話、素足で歩いて感じたアスファルトと土の違い、丘の上で迎えたちょっと肌寒い初日の出。

自分は、彼女に紹介してもらった自然と無理なく調和して生きていく考え方にどっぷり染まっていきます。

「いずれは地球環境を良くする仕事をしたい」

という考えるようになり、大学で環境学の履修を決めました。

パン食い競争

↑↑いろんな国の学生と環境について学んだ学生時代。当時は捕鯨問題が特にホットでしたが、逆に日本人である自分の教室での存在価値を高めてもらえて助かった。

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↑↑大学のある州で毎年行われるヒッピー祭り。その道中、ガン末期のDanにヒッチハイクで拾ってもらった。自分が車内に携帯電話を落としてしまったが、それを数ヶ月後に彼の代わりにDanの妹のElizabethが届けてくれた。人の死を身近に感じた。

ニカラグア

↑↑奥地に住む部族の女性にドキュメンタリー作りを教えにいったつもりが、なんだかんだで実験農園の地図を作ることになったニカラグア。

世界情勢の影響で閉ざされた、オーストラリア移住への道

なんだかんだで楽しく過ごした大学の卒業後、オーストラリアに移住したかった自分は大学院への進学を決めます。ただ、流石に大学院まで親にお金を出してもらうわけにも行かないので、一旦日本に帰って学費作りのために働き始めました。

初めての日本での仕事に戸惑いながらも、人形町近くのオフィスで地図を作り続け、ある程度金銭的に目途が立ってきたある日、飛び込んできたのはショッキングなニュース。

「オーストラリア移民法改正。永住権職業リスト絞る」

細かい話は省きますが、このまま大学院に行って、望む職業についたとしても自分がオーストラリアに移住できる可能性がなくなってしまいました。人生の方針をグイッと曲げられてしまい、正直途方に暮れるとはこのことでした。

それからは大学院のために貯めていたお金を浪費し、無限の選択肢の中で新たな進むべき道を見つけていく作業が続きました。自分としては心穏やかに対応していたと思っていますが、もしかしたらある程度荒れていたのかもしれないです。当時一緒に暮らしていた友人たちには本当に感謝です。

直接的な影響があったのかどうかは知りませんが、その年はトランプ政権誕生により移民への風当たりが世界的に強くなった年。

まさか世界情勢が自分の将来に影響を及ぼすとは思ってもいなかったのですが、大自然の猛攻の前で人はどうしようもないように、大きな流れの中ではどうしようもないことは起きるということを身をもって学びました。

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↑↑当時住んでいたDIYができることを売りにしているシェアハウス。自分が住んでいる1年半は誰もDIYせずに過ごした。

沈みゆく島ツバルにて。「アホな走り」の先で気づけた自分にとって気分の良い生き方

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その後、とりあえず日本に住み続けることを決めた自分は「いずれは地球環境を良くする仕事をしたい」と思っていたことを思い出し、環境NGOで働いたり、なんなりしているうちに、友人たちとツバルに1か月ほど行くことになりました。

ツバルは「世界で一番最初に沈む島」と呼ばれている国で、海面上昇のシンボル的存在でもあります。

そこでの自分の役割は「アホな走り集」という動画撮影のAD。

「アホな走り集」は、日常の中で抑圧されている感情を公共の場でも開放しても良いじゃないか、ということを提言するメッセージ性の高い動画で、正面から全力でアホな走りで向かってくる人をスローカメラで撮影します。

上の動画を見ていただけるとわかると思いますが、基本的に現場は「走り手の羞恥心との葛藤」「撮影者のよりアホさを求める狂気」、そして「周囲の観客の笑い声」に包まれています。

そんな中、自分はツバルの人に「アホな走り」の「アホ」とは何かを説明して、毎回デモンストレーションをする度に、徐々に自分の中の真理に近づいていっている気がしました。

それは今、フードロス対策の事業をしていても強く実感していることで、「自分の中には、社会のために人のために地球環境を良くしたいという気持ちが多少なりともありますが、それ以上に、自分が気持ちの良いことをしたい」と思っているということです。

自分が気持ちよく毎日を過ごすために、地球環境に良いことをしたい。それは、誰かを笑かしたいからではなく、自分の中の「アホ」を表現したかったから走りつづけた、あの感情と似ているのかなと思います。

誰にでも責任があるのなら、誰もが幸せになれるようになりたい

「アホな走り集」の動画撮影と並行して、NPO法人Tuvalu Overviewが行っている「ツバルに生きる一万人の人類」プロジェクトのお手伝いでツバルに住む人々の話を聞かせてもらいました。

彼ら彼女らは、我々日本人が遠い国の出来事とみなしている海面上昇を、すごく身近に感じています。近い将来、故郷を捨てなければいけないかもしれないのです。移住すればすむ問題なのか?文化はどうなるのか?島と共に沈みたいという人々の気持ちは?

そんな中でバイク修理屋のWillyさんの話は特に頭に残っています。

「ある意味、海外の人々の暮らしを否定することは難しいです。なぜなら、彼らの工場が私たちの生活に必要なものを作ってくれるのですから。ツバルが輸入品に頼っていることを私は理解しています。気候変動のために輸入を止めたら、私たちはどうやってそれらの品を入手したらよいのでしょうか。私たちは私たちにできるすべてのことをします。皆さんにもこの問題をツバルの置かれた状況を見て欲しいです。」

彼の控えめで真摯な姿勢には響くものがありました。

自分は大学で環境学を学んではいたのですが、島が海面上昇で沈んでいくと言われて正直ピンときていませんでした。しかし、彼のような人に自分たちが間接的にでも悪影響を与えている可能性があるのならば、今の生き方を変えなければいけないのかなと意識するようになりました。

迷いに迷って、実現可能性と社会貢献度の高さで選んだフードロス削減

ツバルから帰国後、環境活動にはマーケティングの視点が足りてないと思い広告代理店に就職しました。働いている間に、環境問題のどのトピックを自分の主戦場にしようか働きながら考えようと思ったのです。

しかし、初めは1年くらいでこれだ!というものを決めらられるかなと思っていたのですが、そううまくはいかないもので迷いに迷うこととなりました。

海面上昇、コミュニティ作り、放射性廃棄物、環境メディア、海洋プラスチック、ゴミ楽器、里山問題、アップサイクル、etcと、ちょっと齧っては他のものをやるという3日坊主状態が3年ほど続きました。

そして、ようやくこれに懸けてみようと思うのが決められました。

決められたというか、自分が持っている選択肢の中で、もっとも現実的で社会的にインパクトが大きく、面白そうなものと考えたら自然と決まったという感じで、最終的に自分の中では流れに身を任せたという表現が一番しっくり来ているのですが、、、。

それが、現在取り組んでいる乾燥の力で廃棄野菜をアップサイクルするフードロス削減の事業です。

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「東京23区と同じ面積に3万人の町」に移り住んだ理由。今やろうとしていること

安芸高田市は、広さが537.75m2でおよそ東京23区と同じ。そこに2万7千人が暮らしています。広島県の中山間地に位置し、棚田が広がる、いわゆる里山の風景が広がっています。

そこに自分は4月から移住し、日々、廃棄野菜を回収して乾燥野菜を作っています。

廃棄野菜と一口に言っても、スーパーの売れ残りや各家庭で使われずに腐った野菜、色や形が規格外のものなどいろいろあります。

私たちは、その中でも消費者から見えにくい生産・物流段階で発生する廃棄野菜にフォーカスします。規格外野菜はもちろん、他の野菜を大きくするために間引かれた野菜や見栄えを良くするために捨てられる外葉など、今まで廃棄野菜として認識されていなかったものたちもです。

廃棄野菜は保存状態が悪いものが多いので日持ちせず、発生したらすぐに乾燥させなければなりません。また、輸送にコストをかけてしまうと費用がかさみ、価格的なメリットがなくなります。

だから、私達はその土地で発生した廃棄野菜はその土地で乾燥していきます。そして、乾燥した野菜はより付加価値のある商品へとアップサイクルして販売していくのです。

私達は商品ブランドを「UNDR12(UNDER TWELVE)」と呼び、水分率12%以下にすることで保存期間の延長や輸送コストの低減をしていきます。

季節や土地によっても発生する野菜は違うので、同じ商品でも別パッケージであれば中身が全く同じになることはありません。無理のない形で生産を行っていくと、商品ごとに誤差や違いがでることを消費者に理解してもらえればなと思っています。

「いただきます」と同じくらい当たり前に廃棄野菜を減らす

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つらつらと、自分が行っていることと、なぜそれを行っているのかの理由らしきものを書き連ねてきたわけなのですが、改めてまとめるとこんな感じです。

■この記事のまとめ
・兄の本棚から盗み読みをしたのが始まり
・裸族農園にはもう行かない
・ツバルでアホな走りを繰り返してたら気づけたことがある
・自分が気分良く生きたいから環境/社会に良いことをしている
・日々、廃棄野菜を乾燥し続けている
・クラウドファンディング(10/8~11/22)のご支援待ってます

とにかく、使命感や誰かのためといった崇高な思いで動いているのではなく、自分が気分良く日々を送れそうだとか、面白そうだといった理由でフードロス削減をしています。

もし同じように、地球や社会が抱えている課題を解決していくことに興奮を覚える、それを特別なことと思わずに当然の如くやり続けられる、そんな方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。

もちろん、興味本位や面白半分でのお問い合わせも大歓迎です!

あと、10月8日〜11月22日でクラウドファンディングもやっていますので、ご支援いただけましたら幸いです

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↑↑ほぼ毎日野菜を持ってきてくれる近所の藤井さんと。この前は木箱に入った揖保乃糸ももらった。​

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