見出し画像

この恋は、余談。

幼稚園、小学校、中学校と同じ男の子がいた。
中学2年でまた同じクラスになり、名前の五十音が近いこともあって、席も近くで新学期を迎えた。

それから何度も席替えをしたが、何の因果か度々隣の席同士になった。
理科の実験室の席は通年で固定なので、いつも彼が目の前にいた。
わたしがふと顔をあげると、彼と目が合う。
視線が噛み合うことは、日に幾度となくあった。
わたしは時々、彼がこちらを見ている気配を察知しながらも、知らんふりしたりしていた。たまに、どうしていいか、わからなくなった。

このことについて、終ぞ彼と話すことはなかった。
見てるでしょ、とも、見てるだろ、とも言わなかった。

彼がどういう感情を抱いていたかはわからないけど、わたしは間違いなく好意を抱いていた。どんどんかっこよくなっていく彼に見蕩れていたと言ってもいい。しかし、だからといって「恋人になる」という選択肢はちがうとわかっていた。きっと、多分、彼もわたしに好意を抱いていたけれど、彼もまた「恋人になる」ことはちがうとわかっていたんだろう。

授業中に、だれにも知られず、視線をからませる。
それこそがわたしたちの愛の最上で至高で、それ以上は余談。

#あの恋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?