あまのじゃく長男の散髪をした話
1ヶ月以上前から長男に言い続けていた「そろそろ髪の毛切ろうよ」が、今日やっと実現した。
たかが散髪、されど散髪。
現在4歳の長男は絶賛あまのじゃく期(というのがあるのか知らないがとにかくあまのじゃく)である。そんな彼を大人しく座らせて散髪するのがどんなに大変か、分かる人は分かってくれると思う。
「さ、切るから服脱いで椅子に座って」
いよいよ約束の時間になり、私に声を掛けられた彼の第一声は「いやーだ!やくそくしてないし!」
いや、したし。
100回したし。99回は約束破ったから、今日は絶対だぞと朝から言ってるじゃないか…。
しかしあまのじゃく期とはいえ一応もう4歳。
「約束したことは守らなければならない」ということは頭では分かっている。
態度を見ていても「約束したからやらなきゃ…」と「嫌だ!やりたくないよ!」という2つの感情が見て取れた。微笑ましい。コレがいつか、すんなり「ハーイ」なんて言う日が来るのだろうか。
それはそれで寂しい気がするから、親心ってのは奇妙なものだ。
「切るから座って」
「いーや!」
「約束したじゃん」
「やくそくしてないじゃん」
「座りなさい」
「すわりません」
「じゃあ立ったまま切ろうか」
「いや!すわったままきらないよ!」
「は?」
こんな会話が1時間程続き、さすがに嫌になってきて(もう明日でいいかな…)と心の中で諦めモードに入りつつ語気を強める私。
「いいから服脱いで座ってよ!」
「ふくぬがないよ!たつよ!」
「いい加減にしてよもう…じゃあもういい!切らない!」
「えぇ…」
急に切らないと言われ困惑する長男。
(おっ、コレはいいぞ)と畳み掛ける私。
「約束したのに今日も守ってくれないんだね、じゃあもういいです。切りません。片付けます。」
「いやだよー!きるよー!やくそくまもれるよー!」
ふっふっふっ
形勢逆転である。
そう、彼はすごく真面目なのだ。真面目で少し怖がりなのだ。
やらなきゃいけないことは頭で分かっていて、ちゃんとしたいと思う自分が強い。しかし、怖がりな部分とあまのじゃくが邪魔をして素直になれないのだ。
葛藤する姿に成長を感じて嬉しいが、ここはニコニコ褒めたりウルっとしたりしている場合ではない。
「切るのね?じゃあ座って」
「……いやだ」
いや座らんのかい!!!
「え?じゃあいいよもう片付けるから」
「いやだー!!きるよー!!」
「じゃあ座りなさいよー」
「……すわらない」
「分かった、じゃあ片付ける」
「かたづけないで!」
頭の中で吉田美和の声が聞こえる。
10000回だめでへとへとになっても
10001回目は何か変わるかもしれない
美和ちゃん…私、10001回は頑張れないかもしれない…。
とまあ、いい加減本当にうんざりして、真面目に明日でいいやと思って片付けを始める私。それを半泣きで止めにきた長男が私に言った。
「ゆーちゅーぶのおとをきくやつ、みみにいれてからやりたい」
ハッとした。
そうだイヤホンだ。
数日前のこと。
その日も散髪をしようと長男を説得していた私。どうしてそんなに嫌なのか理由を訊いたところ、バリカンの音がどうしても怖いとのことだった。
音に敏感でちょっと怖がり部分がある長男には、確かにバリカンのあの音は怖いだろうなと思った私はイヤホンをすることを提案したのだ。
イヤホンをつけてYouTubeを観ていれば、バリカンの音は少し小さく聞こえるんだよと教えると「それだったらできるかも」と言っていたんだっけ。そのことをすっかり忘れてしまっていた。
長男がバリカンの音が怖いと言ったこと、イヤホンをしようと提案したことを忘れていた自分が情けない。何で忘れるんだよそんな大事なこと。自分が嫌になる。
それでも長男は私を責める言葉はひとつも言わずに、自分からイヤホンをつけたいとだけ伝えてきた。その事実が何とも胸に刺さる。健気ないい子や…。それなのに私ときたらポンコツにも程がある。いい加減にしろ。
自分のダメ親っぷりに泣きたくなる気持ちをグッと堪え、急いでiPadとイヤホンを準備してセッティング。今度はすんなり座ってくれた長男にケープを巻きき、YouTubeの中から大好きな動画を選んであげた。
その後は、ここまでのやり取りが嘘のようにスムーズ進行。耳周りこそちょっと嫌がったが、泣くことも無く15分程で切り終えた。
すごく長くなってしまったが、いや子の髪の毛は短くなったけど(やかましい)とりあえず無事に散髪することができて良かった。次男に関しては「やれそうならやろう」ぐらいの気持ちだったけれど、ついでにサッパリ出来て良かった。
あまのじゃく期、親としては対応が難しくて結構辛い。しかし、それは彼にとっては自我の確立の為の大事な時期で、彼もいろんな葛藤と戦っているんだよな…ということを改めて心に留めておかねばと思う今日この頃である。
西洋では独立期と呼ばれているとか。
独立か…
子の成長は嬉しいけれど、やっぱり少し寂しい。
ゆっくり大人になってくれよ。
私なんかまだこんなんなんだから、追い抜かないでくれよ。
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