アジサイを目印に

「遅いなあ。」と呟く声がして、
そっちを見ると、アジサイが咲いていた。
「まだかなあ。」と呟きながら、
陽に当たって、空を見ている。

「待ち合わせかい?」と聞いてみる。
「そう、3人でね。」とアジサイは言う。

当ててみよう。
「1人は雨だよね。たぶん。」
「あー…それを言うなら4人か。」
「じゃあ誰?あとの2人は。」
「水たまりと、カタツムリだ。」

雨と水たまりって、別人なのか?
…やめておこう。たぶん、考えてもキリがない。

「雨、いつ降るかわかる?」とアジサイが言う。
「ニュースで見たけど、今日から梅雨入りだって。」
「じゃあ、もうじきかな。」
「たぶんね。」

「雨が来ないと、始まらないからなあ。」
アジサイがまた空を見る。
「カタツムリのやつ、雨の前に来たことなんてないぞ。」
そりゃそうだ。
湿ってるところに来るもんだからな。

「じゃあ、水たまりは?」
「来るわけがないだろ?」
そりゃそうだ。
雨も降ってないのに、水たまりだけいきなり現れたりしない。

「じゃあ、雨が来るまで待ちっぱなしか。」
「そういうことだ。まいったね。」
「どのくらいまでなら待てるんだ?」
「枯れるまでならがんばるよ。」

そうしてみんなで集まって、
それで何をするのか知らないけれど。
「早く降るといいねえ。」
今だけ、そう思った。今だけね。

梅雨が始まったら、雨なんて、
早く上がってほしくてしょうがない。
毎年そう思うし、今年もきっとそう思うだろう。

でも、今だけは早く雨が降ってほしい。
アジサイが待ってるぞ。


【原材料表示】

近所の公園にアジサイが咲いてました。
で、今年も梅雨の季節か…と思ったものの、
天気のほうは「もう夏では?」って暑さと日照り。

アジサイと言えば梅雨、そして雨。
そんなイメージがあるけど、まだ雨は来ないらしい。
毎年こんなだったっけ?

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今後も様子をみて運用していきますが、まだまだ手探りです。どうぞお手柔らかに。

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