窓の外でうるさいやつら

朝の6時。
窓の外で、スズメが鳴いている。
すぐ近くだ。たぶん、物干し竿にとまってるんだろう。
それも、大勢だ。…つまり、要するに、うるさい。

「何時だと思ってるんだ。」
窓を開けて、文句を言う。
「ちょうど6時でしょう。」
スズメの一羽が首をかしげて言う。
…いや、何羽か同時だったかもしれない。

「6時に起こせって言ったじゃないか。」
スズメの…少なくとも一羽が言う。
「ああ、そうだっけ。」
そうだった。
昨夜、目覚まし時計が動かなくなったから、
誰か代わりに起こしてくれと言ったんだったか。

文句じゃなくて、お礼を言うべきだったな。
「明日も起こそうか?」
「じゃあ、頼むよ。ありがとう。」
スズメは全員、どこかへ飛び去っていった。

発つ鳥、跡を濁さず。
あれだけ数がいたのに、フンとかで汚してないのは立派だよ。

翌朝。
スズメじゃなくて、猫が来た。
知らなければ、エサの催促だと思ったかもしれない。
そのくらいしつこく鳴いていた。…まあ、つまり、うるさい。

「スズメじゃないのか、今日は。」
「風向きが悪かったんだってさ。」
向きのことはよく分からないけど、
たしかに、強そうな風の音がする。

「明日はどうする?誰か呼ぼうか。」
「いや大丈夫。あの時計、電池を換えたら動いたからな。」
「そうかい?楽しみにしてるやつがいるんだけど。」
「何を?」
「ここでうるさくするのをだよ。」

「じゃあ、もう一日だけ頼もう。」ということになった。
「それじゃ。…ああ、そうだ。」
一旦どこかへ行きかけた猫が、もう一度こっちを振り向く。
「今日出かけるなら、傘を持って行くといいよ。」
わざとらしく顔を洗ってみせて、それから、今度こそどこかへ行った。

翌朝。
ゆうべから降っていた雨は、まだ強い。
朝6時の目覚まし時計も鳴ったけど、
それよりも早く、雨の音で目が覚めた。

「お前か。楽しみにしてたっていうのは。」
見れば、窓をめがけてぶつかってくる雨が見える。
「派手に音を鳴らしても怒られないっていうからさ。」
雨粒の、少なくとも一つが言う。

なんでもなければ怒ったかもしれない。
でも、わざわざこっちから呼んだんだもんな。

「今日出かけるなら、傘を持って行くといいよ。」
窓にくっついて、すべり落ちながら雨が言う。
「そりゃ見れば分かる。でも、今日は外に出る用事も無いぞ。」
「そうかい?楽しみにしてたんだけど。」
「何を?」
「傘の音を鳴らすのをだよ。」

「じゃあ、ちょっとくらい外を歩こう。」ということになった。
…ついでに、コンビニにでも行ってくるか。
目覚まし時計に入れたやつを最後に、電池がもう無かったからな。


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