1匹だけの鯉のぼり

鯉のぼりと聞くと、普通、何匹かいるもんだと思う。
大きいやつが上、小さいやつが下。
で、3匹か、デカいやつだと4~5匹。
鯉のぼりといえば、そういうもんだろう。

でも今年、うちのは1匹しかいなかった。
もともと3匹でひとつの鯉のぼりだったけど、
一番小さいやつが、1匹だけで泳いでいた。

というのも、まだ寒い冬のうちから、
「早く泳ぎたい!早く泳ぎたい!」と、
あんまりうるさいもんだから、
まだ冬なのに、鯉のぼりを上げていた。

なんとなく、春に上がるイメージはある。
でも、明確にいつと決まってはいないらしい。
だから、冬だろうと夏だろうと問題は無かろう。
ちょっと変な目で見られはするけど。

それでも、鯉のぼりはまだうるさい。
もう満足しただろうと思って下ろしたら、
何日もしないうちにまた、
「早く泳ぎたい!早く泳ぎたい!」と、
押し入れの奥で騒いで、これがまたうるさい。

しょうがないから、また上げる。
子供は風の子、元気の子。
一番下の鯉は楽しそうだけど、
上の方の親御さんがたはたまったもんじゃない。

「こんな寒いのに泳ぐやつがありますか!」と、
これもまた結構うるさい声で叱るのだけども、
子供さんのほうはちっとも気にしていない。

それでも、子供に泳いでもらうんだったら、
親のほうも一緒にいてもらうしかないわけだ。

で、とうとう風邪を引いた。
いざ本番、こどもの日ももうすぐというところで、
押し入れで横になったまま寝込んでしまった。

しょうがないから、子供だけ1匹で泳がせた。
まあ、お隣さんの家で上がってる鯉のぼりも一緒だから、
そっちの鯉のぼり一家の皆さんが世話してくれるだろう。

というのが、3日前までのお話。
こどもの日も過ぎて、ゴールデンウィークの連休も終わり、
そろそろ良いだろうということで、鯉のぼりは片付けた。

押し入れはまだ静かだ。
さすがに、泳ぎ疲れて寝てるんだろうね。

でも、たぶんまたそのうち、
「早く泳ぎたい!早く泳ぎたい!」
そう言って騒ぎ出すことだろう。

その頃には、親御さんがたの風邪も治ってるといいけど。


【原材料表示】
以下、この記事を書くのに使った材料の話。

ここから先は

337字

原材料表示

¥100 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?