うちの体重計は気が利かない

ちょっと増えたなあ。
と、体重計に出てきた数字を見て思う。
「ちょっとせた?」
体重計からは、思ってたのと逆のことを言われた。

「誰かと間違えてないか?」
「ああ、ごめん。弟のほうか。」
まあ、しょうがない。風呂あがりだからな。
まだ服着てないから、服装で見分けられないだろうし。

「だとしたら、ちょっと太った?」
正解。
「デリカシーの無い奴だね君は。」
「そんな機能は搭載されなかったもんでね。」

「ちょっと少ない数字にすればよかった?」
「そりゃ困る。体重計なんだから正確でいてくれ。」
「だよな。気を利かせるって難しいよ。」

髪を乾かしながら、増えた原因を考える。
最近、夜更かし気味で夜食を食べがちだとか、
昼食が物足りなくてパン1個おやつにしたりとか、
心当たりは色々ある。

「人間なら当たり前なの?気を利かせるとかってやつ。」
まだ言ってる。
「なんとなくね。」

「ふうん。そういう機能を搭載して生まれたわけだ。」
「それはどうだろう。」
「じゃあ、誰かに教わったのか?」
「さあ。」

我ながら、返事が雑になってきた。
耳元でドライヤーの音がするから、
会話しようにもやりづらいんだ。許せ。

「言われてみれば、どうなんだろうね。」
ドライヤーを切ってから、ようやく真面目に考える。
「いつの間にか、なんとなくできるようになってたけど。」

「じゃあ、体重計でも気が利くようになるかな?」
「なるかもよ。わかんないけど。」

一瞬、『なるわけないだろ。』って言いそうになった。
だって体重計だぞ。機械だぞ。
でも、僕は気が利く人間だからな。

「なるといいなあ。」
「なってどうするんだ?」
「なんとなくだよ。」

「まあ、がんばれよ。」
我ながら雑に応援しながら、
電源を切って、片付けておいた。

とりあえず、今夜は早寝を目指そう。
また夜食が欲しくなっても困るし。


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