傘が最近ヒマらしい。

こんなすごい雨なのに。
なんで傘を持って出かけなかったんだ。

家の傘立てで立ちっぱなしの傘が、
帰ってきた僕に、そんな愚痴を言う。

「天気予報でも言ってなかったんだ。しょうがないだろ。」
「そうだけど。せっかく、出番ありそうだったのになあ。」

そういえば、洗濯物を干したままだった。
思い出したとたん、気分が沈む。
きっと、びしょびしょになってるだろうな。

そんな沈んだ顔を見た傘が、
何か思いついた顔をする。
「明日から、ベランダに置いといてくれないか。」

「いいけど。どうせ雨の予報でもなければ使わないし。」
何かわからないけど、そう言うなら、そうしてやろう。

翌日、また夕立だった。
また、洗濯物は外に干してある。

沈んだ顔でベランダに出ると、
洗濯物の上のところで、うまい具合に傘が開いている。

さすがに、傘一本で全部は無理だったようで、
端っこのほうは、やっぱり濡れていた。
でも、昨日よりだいぶマシだ。

「このままでいいよ。晴れてきたし、放っておけば乾くから。」と、
満足げにそう言う傘をベランダに置いて、
その隣に、折りたたみ式の傘を並べて干した。

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