ドーナツの顔が分からない

コーヒーを淹れた。
砂糖もミルクも入れない。
その代わり、甘いお菓子と一緒にいただく。
こうするのが一番美味しいと思っている。

「どうせ、私なんて…」と、
皿に乗ったドーナツがつぶやく。
こちとらゴキゲンなおやつタイムだというのに、
盛り下げないでほしいんだけども。

「何がそんなに?」
コーヒーを飲みながら聞いてみる。
苦い。
ここから甘いものを食べるのが美味しいんだよな。

「だって、こんなに醜いでしょう?」
ちなみにそいつはフレンチクルーラーだ。
生クリームが入ってるやつ。
「醜いも何も、普通に…見るからに美味しそうだけど。」

「こんなに歪んだ形だし…」
「穴が開いてて丸いなら、どれも同じだろ。」
「その穴だって、こんなに曲がってるし!」
「それがどうしたって言うんだか。」

一口、かじってみる。
甘い。
「美味しいじゃないか。」
「でも…だって…」

なんかもごもご言ってるけど、
もう気にしないことにした。
口の中が甘くなってきたところで、
またコーヒーを飲む。苦い。

「どれも、食べれば同じだろうにな。」
そう言うころには、食べ終わっていた。

ごちそうさま。
おやつタイム終了。
夕方まで、もうひと頑張りといこう。


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