見出し画像

駅のホームで知らない人の精子を飲んだ話

表題の通りである。
しかし、この話をするとたいてい「それ、夢だよ!」と言われてしまう。最初は「そんなわけあるか!!」と全力で否定していたのだが、時が経つにつれて「もしかしてそうなのかも…?」とだんだん自信がなくなってきた。
なので、「駅のホームで知らない人の精子を飲んだかもしれない話」くらいの気持ちで読んでいただけたら幸いだ。


埼玉県某市に引っ越ししてからというもの、電車に乗る時間が長くなり、寝過ごしてとんでもない場所に着くことが増えた。つい先日も、最終電車で山奥の駅に取り残され、長距離トラックしか通らない深夜の国道を3時間歩いたばかりだ。

その日も、会社の飲み会の帰りに地下鉄に乗り、2〜3駅で乗り換えるはずだった。

「お姉さん、大丈夫ですか?」

気がつけば、隣の若い男の子に揺り起こされていた。電車は、もうすぐ江東区にある某駅に到着するところだった。どうやら寝過ごして終点で折り返してしまったらしい。
その男の子は、金髪をマッシュルームカットにしていて、可愛らしい顔立ちだった。
「どこまで帰るんですか?」と聞かれたので、素直に埼玉のT市だと答えると、男の子は「遠!」と笑った。

「次の駅で乗り換えた方がいいですよ」

男の子は千鳥足の私の腕を抱え、乗り換えに付き添ってくれた。優しい。
余談だが、マスクのおかげで若い女だと勘違いされる機会が増えた。白い不織布の下には、乾いた大地を引き裂くような深く野太いほうれい線が刻まれているというのに。先日、会社でマスクを外したら、私の深すぎるほうれい線、でかすぎる小鼻、丸すぎる輪郭にびっくりした他部署の部長が「藍川さんの顔!?!」と絶叫し、そのまま死んだ。

駅の自販機で水を買い、反対側のホームの一番端にあるベンチに座った。その時、何を話したか全く覚えてないのだが、どういうわけかちょっとエッチな雰囲気になった。
というか、私が男の子の股間に手を伸ばしていた。
性別が逆だったら(逆でなくても相手が嫌だったら)、即逮捕である。
しかし、最初から酔い潰れた女狙いのナンパだったのか、奇跡的に男の子はノッてくれた。
キスしながらチャックを下ろし、パンツの切れ目から性器を引っ張り出すと、怒張した若茎が勢いよく飛び出した。嬉しくなって、つい口に入れてしまった。
自己紹介する時、よく冗談で「長所は優しいところ、短所はすぐ知らない人のちんちんを咥えるところです!」と言うのだが、この日も私の短所が出てしまった。

もう一度言うが、駅のホームである。
いくら端っこでひと気がなかったとしても、反対側のホームで電車待ちしてる人から丸見えだっただろうし、監視カメラにもガッツリ映っているはずだ。

男の子は、次の電車が来る前に射精した。
今沿線の時刻表を調べたところ、終電近くの時間帯はだいたい12分置きに電車が来ている。
彼は、たった12分間で「見知らぬおばさんのフェラチオ」と「駅のホームで射精」を一気に経験したことになる。いい記録だ。
口の中の精子を線路に吐き出そうとしたが、その駅にはホームドアがついていた。勢いよく精子を飛ばせば線路まで届いたのだが、ホームドア越しに精子を撒き散らすのも気が引ける。まごまごしているうちに電車の到着を知らせるアナウンスが流れ始めたので、精子は全部飲んでしまった。「飲んじゃった!」と1人でゲラゲラ笑った。
今にして思えば、何故カバンの中のティッシュを使わなかったのか。酔っていて判断力が落ちていたとしか思えない。そもそも駅のホームでちんぽを咥えてる時点で判断力ゼロだ。今後、駅のホームでフェラチオする予定がある人は、必ずティッシュを持参してください。

電車が到着すると、男の子は「じゃあ気をつけて!」と颯爽と去っていった。射精して気が済んだのだろう。さっきまでの優しさが嘘みたいな潔い別れ方だった。
知らない人の精子を飲むというアクシデントがありつつも、無事帰路につくことができた。
翌日、何事もなかったように出社し「昨日寝過ごして江東区の方まで行っちゃったんですよw」と話したが、フェラチオのことは言い出せなかった。

以上が、私の「駅のホームで知らない人の精子を飲んだかもしれない話」だ。夢だとしたら、ベンチあたりからだろうか。
しかし、どこに精子を出していいかわからず右往左往したり、飲精して爆笑するくだりは、何度思い返しても現実味がありすぎる。全身麻酔後に見るせん妄も、こんな感じなのかもしれない。
某駅周辺で、「ひと気のない深夜の駅のホームで若い男の精子を飲むおばさん」という都市伝説が生まれていないことを祈るばかりである。


ここからは完全に蛇足なのだが、フェラチオ(の夢を見た)直後のツイートと、その翌朝のツイートがこちらである。

知らない人から「嘘松」というリプライが来た。誰よりも嘘であって欲しいと思っているのは私である。

そしてその一週間後のツイートがこれだ。

夢みたいなエクストリーム介抱を2週連続でキメてしまった。この国の若い男の子たちは天使なんじゃないだろうか。

私は、酒を飲んだら絶対に電車に乗らない方がいいようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?