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#22 終着駅

雨も降っていたし、車でその前を通った事は全く気づかなかった。

撮影の仕事で宮崎空港に着いたのが18時で、車でこの町に入った頃にはすっかり陽も落ちていた。

街灯のない農道を抜け、小高い丘を下ると、眼下には町灯りが広がった。

その先が漆黒の闇だったために、そこがどこかの港町であろう事だけは分かった。

その町にある駅の存在を知ったのは、町を離れて宮崎市に移動してからの事。

博多から始まる日豊本線、その先の南宮崎から始まる日南線。


およそ500kmもの路線旅の終着駅「志布志駅」
文字通りの終着駅で、その先に線路はない。

これまで見向きもしなかった、元い、その文字が構成する言葉を見てなお、何の言葉であるかを想像さえしなかった、我が書店の書庫の段ボールに刻まれた「志布志」の文字。

この文字が今日たまたま目に飛び込んできて、あの時、志布志駅を一瞬でも訪れなかった後悔の念が再燃している。

かのタモリは終着駅をこのように評した。

- 終わりは始まりであり、始まりは終わりでもある -

現役バリバリの路線の終着駅、一目見たかったものである。

ただ、「志布志」が鹿児島県の大隅半島にある港町であることが、今ではわかる。その町にどのような空気が流れ、どのような香りがするのかも、今では想像できる。

物理的な移動を行い、違う空を見て、違う海を見て、違う空気を吸う。

通ったことのない道、乗ったことのない路線、訪れたことのない町に、これからも積極的に赴こうと思う。

「志布志に行ったことがある」というのがいつか大きな財産になる、かはわからないが。

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