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詩)DTM

僕の知らない楽器を弾いてくれるという

どうせ分からないだろうが指示を出せと
無言で楽器を手入れする彼等がメンバーだ

金管がどうしてその形になったのか
ヴァイオリンは指をどう揺らすのか
アーティキュレーションを知らないのは
失礼に当たるだろうと訊ねた先で迷い
私は控え室に戻れなくなったのでステージへ直行だ

ステージでもっぱら楽器を磨き
隣り合うメンバーを無視する彼等の行動
それはそのまま自分自身だ

頭に詰め込んだ参考書の言葉を粗挽きにして
絞り出た敬意の雫は喉を越していく

早く鳴らせと
白けた眼差しを今から黙らせよう

自分国家予算のオーケストラ
君たちはすでに無給であると言うが
なるほど私も前々から無給である

我々は 心身の衰退 未来の絶望 現在の不安
過去の慟哭に争う希望の音楽隊である

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