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感想『俳優の演技訓練』三谷 一夫編著

繰り返し言わせて頂きますが、別に俳優を目指しているわけではありません。
少しずつ書いている小説に、俳優を出そうかと思いまして・・・
芝居の向き合い方、自身をどう見ているか、等を知りたいと思い
『俳優の演技術』共々手を出しました。
24名の映画監督が、撮影前に俳優に求めるもの、どんな俳優をまた起用したいと思うか、等率直に綴られていました。
そして、映画監督の皆さんは俳優育成の為のワークショップの講師もされているんですね。
俳優の卵達相手に、演技を指南されるんですが、これが厳しい。
物語の一部を抜粋した紙切れ一枚渡して演じさせる。(『ガラスの仮面』的なレッスン)のみならず、次は全く違うシチュエーションで台詞言わせる。
4名に全く辻褄の合わない脚本を渡して、即興で芝居させる、等々。
私なら、棒立ちになったまま、とりあえず台詞言って終わるだろうなあ、と想像しました。
しかし、映画監督達は皆真剣で、書かれた台本がどのように演じられるか、予定外の奇跡が起こることを期待してるんですね。
映画監督も、井筒監督、行定監督等々そうそうたる面々。
意外(失礼ですみません)だったのが、皆さん謙虚で、具体的に俳優に求めるものを仰られていたことです。
印象に残ったのは、
冒頭の井筒監督が仰った『大勢の観客の前で芝居するのが好きな人』と『人を騙すのが好きな人』どちらが俳優に向いているか。
→『人を騙すのが好きな人』が向いているという言葉。

また、映画監督のみならず俳優もされている田口トモロヲさん。
監督としての映画の向き合い方と、俳優として役を演じることの違い、その後に起きた自分の変化を語ってらっしゃいました。

どの監督も仰ったのは、俳優に必要な能力は、脚本の読解力、先に演技を決めて一人芝居にならないこと、自意識を捨てること。
自意識を捨てるというのは、自分の持っている癖を無くし、筋トレや発声練習を怠らないこと。無駄がそぎ落とされれば、辛い状況であっても、表情を変えずにいることが出来る、
私は以前、記事に、
「俳優を好きになるのではなく、俳優が演じた役を好きになる」と書きました。
トーク番組やインタビュー記事の彼らは物静かでいて、仙人のように高みに到達しているかの雰囲気を醸し出しています。しかし何故か内に熱いものを秘めているようも思える。
不思議だな、と感じていましたが、毎日心身ともに鍛え、洞察力や観察力を休むことなく駆使しているからこそ成せているのかもしれません。

監督達のインタビュー他、映画24区代表の三谷一夫さんと金一世さん(韓国の俳優兼トレーナー)の対談がおさめられています。
韓国と日本の芸術に対する国の対応の違いや、演劇学校卒業した後の就職先、後任の育て方。
金さんのお話を聞いていると、日本政府はどれだけ芸術に理解がないのか、お金を出してくれないのか、悲しくなりました。
大手プロダクションに所属しないと役をもらえない、オーディションが行われないから新人俳優がデビューできない。日本の芸能界全体の問題なんでしょうね。
三谷さん率いる映画24区が、日本各地に映画芸術(ドラマや舞台も含みます)旋風を巻き起こせますように。応援しています。俳優にはなれませんが・・・

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