ホステル留守番日記 終

2024年4月4日㈭ 6日目(+続編)
 結局昨日の夜おっちゃんが帰ってきたので、僕のお留守番の期間は終了した。昨夜は夜更かしをしてしまい、今朝は10時過ぎに起床。おっちゃんとだらだら話しながら朝ご飯を食べて、手分けをして手短に今日の掃除を終わらせた。今日も曇りがちで何となく外に出にくい1日。夕方になって庭でキーボードを弾き始めたのだけど、少し雨が降って来たので3曲で終了。今日はもうゆっくりして、明日の朝にでも走りに行こうかな。
 ということで、一旦このお留守番日記は終わりにしたい。思えば学生時代に欧州を旅行してロンドンに行ったときに、「こんな海外のホステルで働けたら面白そうだなあ」と思ったのが最初だった。でもそれ以来具体的な行動を起こすこともなく、年月だけが経っていった。そんな中で、丁度色々なタイミングが重なり、思ってもみない形で短期間ホステルのお留守番をすることになったのだ。場所はロンドンから丁度地球の裏側のようなニュージーランドの田舎町だけど、欧州を始め様々な国からやってくるゲストと接するのも楽しいし、最初は苦痛に思っていた宿の掃除も次第に慣れていった。元々長く滞在していた宿でとても愛着はあったので、義務感を感じることなく心から自分の役割を楽しめたように思う。
 お留守番の期間は終わったけど、まだ暫くこの宿でお手伝いをすることになる。自分は1つの場所に沈没しながらも行き交う旅人と接するのは面白くて、1人1人にそれぞれのライフストーリーがあって、旅の仕方も十人十色だ。宿のラウンジで座ってそういう話を1つ1つ聞くだけでも幸せになれるし、僕が彼らの人生を部分的に追体験しているかのような魅力がある。そんな幸せを産み出す空間を提供できること、それもまた幸せなことである。
===============
 2週間以上が経った4月21日(日)の朝、編集をしながら少し続きを書いている。結局あの数日後におっちゃんはニュージーランドを去り、色々と事情が重なってまだ宿でのお留守番は続いている。あの後も様々なゲストに恵まれて、毎日を楽しく過ごしている。自分でも宿側の人間なのかゲストの延長なのかよくわからない立ち位置で、ゲストとお話しをするだけではなく、一緒に料理をしたり楽器を演奏したり、結構自由にやっている。
 1人で留守番をし始めた前の期間も含めたら、かれこれ2カ月近くこの宿でお手伝いをしていることになる。今は少し慣れも出てきて最初ほどの刺激はないのかもしれない。それでも長く旅人をしてきた人間が今はこうして一応「ホスト」する側にまわることは、これまでの自分をもう1度客観視することにも繋がる。それに、今までの旅の経験の中で「良かったな」と思う宿やホストたちの真似をしながら、それらが本当にゲストに喜んでもらえるかを検証することもできる。それがなかなか楽しい。
 ニュージーランドでは少しずつ秋も深まり始めている。今朝の気温は8度だった。すでに観光シーズンのピークは過ぎていて、あと1カ月もするとこの街ではあまり観光客を見かけなくなるかもしれない。僕自身も少しずつここを出るときが近づいてきているし、まだいつまでこの宿に残るかは決めていないものの、もうそう長くは居ないだろう。こんな貴重な経験が出来ていることに感謝をしつつ、もうしばらく楽しもう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?