春の終わり、夏の始まり 15
唯史も2次会には参加せず、まっすぐ実家に戻った。
母の佳代子が、客間に布団を敷いてくれている。
唯史はゆっくりと布団に身を横たえながら、義之からの提案である「帰郷」について、深く考えていた。
目を閉じ、自分の現在の状況を冷静に見つめる。
離婚してからの心の空洞、都会で感じる孤独感。
自ら断ち切った人間関係、職場でのプレッシャー……
これらの要素が積み重なり、唯史の心身は明らかに疲れ切っていた。
「義之が言うように、いっそ何もかも投げだして、こっちに帰るのも手かもしれない」