見出し画像

Nおばさんと

キヤノンギャラリー銀座の写真展から1ヶ月。
この写真についてはすこし触れておきたかったのでメモを書いた。
こちらにも残しておこうと思う。

***

洗濯物を干すのは大伯母のSおばさんの分担だったらしい。 
そのSおばさんが闘病の末、年末に他界し、あわただしく寂しい年末年始を乗り越えた頃、Sおばさんと二人で暮らしていたNおばさんへ、妻がご機嫌伺いの電話を入れた。 聞けば、物干し竿の位置が高く、洗濯物が干しづらいと話しているとのこと。 数日後の週末、Nおばさんの家へ顔を出し、物干し竿の件を聞いた。物干し竿についてその手の悩みは多いようで、Amazonで検索してみると既設の物干し竿に簡易なブラケットをあてがい、位置を下げる商品が数種類あるとわかった。 実際、どのくらい物干し竿を下げたらいいのか確認するため、二階のベランダへ向かう。話しの流れでベランダへ来たものだから、物差しの類は用意しておらず、写真を撮ることにした。撮影にあたり、実際に立つ位置、手を伸ばす角度を再現してもらう。物干し竿を下げる寸法は、おばさんの手の大きさや手を伸ばした先にあるS字のフックで荒方の見当がつく。数日後、ステンレス製のブラケットを取り付ける。簡単に洗濯が干せると喜んでくれた。 
それからわずか数週間後、Nおばさんは急な病に倒れ、Sおばさんの元へ旅立ってしまった。仲が良いにも程がある。我が家で飼い始めたネコに会ってもらいたかった。物干し竿の調節を気に入ってもらえてよかった。 芸術全般を愛し、絵が上手かったNおばさんにあてて、この写真を飾ることにした。 
どこかから見ていてくれたら嬉しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?