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娯楽産業の自粛は自己責任か?

今さらですが、新年おめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

とはいっても、昨年もnoteは殆ど書いていなかったんですよね。僕の中でも位置づけが曖昧になってしまって、文章を書く間隔が開いてしまいました。今年は、もう少し盛り上げていけるといいなと思っています。

さて、僕の他のブログやSNSを読まれている方はとっくにご存じだと思いますが、僕が代表の演劇ユニットFavorite Banana Indiansは、今年の1月26日〜31日に、新宿のとある小劇場で公演を行う予定でした。ところが、先週になって1都3県に緊急事態宣言が発出されました。僕も、年末に東京の感染者が1,000人を超えたあたりから、これはもしかしてヤバいかもとは思っていました。ただ、当初は菅内閣が緊急事態宣言の発出に後ろ向きだと報道されていましたので、何とか滑り込めるか?とも思っていました。
しかし、年が明けると感染者は増え、実際に宣言が発出されました。

問題は、宣言の中身です。前回は、劇場にも営業自粛の要請が出て、多くの劇場が閉まりました。当然、多くの演劇公演が中止・延期になりました。ところが、今回は、「20時以降の営業自粛の働きかけ」という、何とも中途半端な呼びかけとなっています。しかも、もうチケットを販売してしまっている公演については、20時以降もやってもよい、というかなり緩い条件がついています(感染症対策を十分にとって、という但し書きはありますが)。
こうなると、劇場さんとしては「通常営業のお墨付き」を得た形になります。たとえ「働きかけ」に応じて20時以降の営業を取りやめたとしても、公的な補助は何もありません。当然、通常営業を貫くことになります。

ただ、興業を行う側としては、それなら予定通りにやってもいいとは言い切れません。市中に感染が広がる中、劇場に来るお客様、稽古場にも来る出演者、スタッフの安全をどう守るのかを考える必要があります。ましてや、一般の人にも不要不急の外出の自粛が呼びかけられている状態です。演劇を作ること、見ることが「不要不急」と言われてしまうのも悲しいですが、娯楽であることは事実で、こういう状況の中では活動を自粛し、できるだけ感染のリスクを下げることに貢献する必要があると思います。
そういう理由から、僕達は自主的に公演の中止を決断したのです。つまり、ひとえに感染者がこれ以上増え、医療体制が今以上に逼迫することを押さえるという社会的な大目標に沿って、中止を決めたわけです。
そこには、当然経済的な負担が伴います。劇場のキャンセル料や、既に動いていただいたスタッフさんへのお支払い、チケットの払い戻し時にかかる手数料等です。ちなみに、キャンセル料は使用料の100%です。劇場さんとしては「普通に使える状態なのに、そちらが自己判断(=自己責任)でキャンセルするのだから、通常のキャンセル料金をいただきます」という理屈です。これは、僕が使用しようとしていた劇場さんに限らず、どこもほぼ同じ対応のようです。ただ、どうしても釈然としません。もしも、僕達が公演を予定通り敢行して、そこでクラスターが発生してしまったら、誰が責任をとるのか。これは仮定の話ではありません。実際に小劇場でもクラスターは発生しています。

要するに、政府が言いたいのは
「芸術なんてどうせ好きでやってるんでしょ。何の生産性もないんだから、コロナに感染しようがどうしうようが、全て自己責任。こっちは痛くもかゆくもないよ」
ということなのです。だから、補償もしないのです。
あってもなくてもいい存在。世の中の何の役にも立たない産業。いや、自腹を切ってやっている連中に関しては、「産業」ですらない。ただの趣味の延長。
そう見られているとしか思えません。
だから、いくらしわ寄せが行っても、何とも思わないのです。
そのくせ、万が一クラスターが発生しようものなら、全力でバッシングしてくるに決まっています。
「役立たずが、余計なことをして、社会に害悪をもたらした」
いつまでこんな扱いに耐えなければならないのでしょうか。飲食店の経営の苦しさや補償のあり方はいつも問題になるのに、エンタメ業界はほぼ無視。
これは、この国の民度が問われる問題だと思います。

などと悪態をついていたら、何と「演劇のキャンセル料を補償する」という仕組みを、政府が検討しているというニュースが飛び込んできました。
本当でしょうか??
もし本当なら、万々歳です。やっと人並みに扱われたということですからね。
続報を待とうと思います。

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