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大谷翔平のプレーにひとつだけMVPを送るなら

大谷翔平選手に弱点があるとすれば、ひとりでは野球ができないことだ。

準々決勝での彼の奇策・バントがそれを象徴していた。

大谷選手は日本ハムファイターズ時代から、攻守ともに優れ、走塁のセンスもあった。

加えて、これまで観てきた試合で数度バントをする姿もあった。
失敗した記憶はない。

セ・パ12球団の特色やその時々の監督にもよるが、栗山監督は時折バントやスクイズで奇をてらう傾向が強い。

今回のWBCでは、一次ラウンドで甲斐選手が初球でバントを決めたシーンがあった。
中村悠平選手もバントをしている。

キャッチャーの彼らが送りバントをするのは特別なことではない。
しかし、常にホームランやヒッティングを期待される大谷選手が、まさか国際試合でバントをするとは誰も思わなかっただろう。

一緒にテレビで観戦していた夫に「サインが出たのかな?」と聞いた。
夫は「いや、大谷が(独断で)やったんじゃないかな」と返した。

調べたところ、大谷選手がバントを決めた時栗山監督はきょろきょろしていたという。
夫の見解は正しかった。

ヒッティングに自信のある選手であれば、バントする場面ではなかった。
しかし結果、岡本和真選手の3ランHRを呼び込んだのは言うまでもない。

振り返ると、大谷選手は率先してチームに働きかけていた。

ベンチ前で常にチームメイトたちを迎え入れ、年下の選手の頭をぽんぽんと叩いてねぎらい、劣勢でも自ら塁に出て皆を鼓舞した。
ヌートバー選手と並んでガッツポーズを決める姿が微笑ましかった。

皆プロ野球界を代表する選手なのに、WBCではどこか高校球児のような無邪気さがあった。
その半分くらいは、大谷選手からもたらされたのではないだろうか。

大谷翔平は、ひとりでは野球ができない。

これまでの野球人生で携わってきたあらゆる人たちがいるからこそ、高みまで上り詰めた。

そして今回集まった最高のチームを愛しているからこそ、あの時バントをしたのだと思う。

某番組は「プライドを捨てたバント」と報じたが、あれは彼の、あるいはチームのプライドを賭けたバントだ。

大谷選手のプレーにひとつだけMVPを送るとしたら、私はトラウトへの三振とちょっとだけ迷ってから、あのバントを選ぶ。


※ヘッダーはみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

※3/25 一部加筆

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