映画レビュー(125)「太陽の座る場所」

山梨放送開局60周年記念作品。2014年作品。

傑作。原作は辻村深月の小説。

 クラスの太陽のような女王・高間響子。そして転校生・鈴原今日子。この二人のキョウコを巡る物語。
 時を経て、地元テレビ局で局アナをする響子。一方の今日子は女優キョウコとして東京で活躍している。初めて行ったクラス会で響子は、自分が「来なくてもいいキョウコの方」と言われていたことを知る。高校当時、響子のご機嫌を取ろうとして、周囲の女生徒たちはいじめなどに加担していたのだ。響子の当時の思い出は強い自責の念と自己嫌悪で染め上げられている。
 クラスの中心から、落ちていった響子。長い時を経て、響子は自責の念から立ち直ることができるのだろうか、という物語。
 天岩戸に隠れる天照大神の神話がメタファとして機能している。
 青春時代の自分に対する強烈な自己嫌悪と自責の念、これは学生時代に運動や勉強などで、何らかのスターになっていた人には必ず残っている感情である。そんな心情が丁寧に描かれていて心に刺さる。
 同時に描かれているのは、上京して就職している人間と、地元に残って就職した人間の心情の差。また、彼らの意識のすれ違いなど。これもよく描けている。
 山梨放送周年記念作品なのだが、地方発でここまで練り込まれた作品観られるとは思っていなかった。素直な驚き。21世紀に入ってから、地域初のドラマも侮れないと、改めて思った。
「太陽の座る場所」


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