創作エッセイ(35)執筆場所のこだわりについて

小説を書く場合、特にそれが実際の文章のテキスト打ちの場合、書き手ごとにお気に入りの場所というものがあるものだ。

めったに使わない自宅

外でしか書けない

 私の場合、地元の喫茶店、地元の図書館、愛知県図書館、市営の公園内の集会施設などをその日の気分で選んでいる。そこでポメラを使って小説を打ちこみ、自宅のデスクのPCを使ってその日の文を印字。さらに執筆量をエクセルのシートに落として進捗管理している。

本業がある故に

 このような執筆スタイルになったのは、私が専業の作家ではなく本業を別に持つ書き手だったから。23歳の新卒の頃から、会社は変われども一貫して外回りの営業職に付いていた。客先を回る営業車の中、ランチや休憩で寄る喫茶店など、常に出先でノートに原稿を書き、帰宅後の深夜にそれをワードプロセッサで原稿に落とす。そんなスタイルだった。
 やがてノートPCを持ち歩くようになり、外で文字を打てるようになる。そして、外でしか書けなくなったのだ。

外で書く理由

 長年の習性か、書く際の周囲のノイズ(雑音)が集中力を高めてくれる。同時に、それが刺激となって集中力の維持にも役だっているようだ。何しろ高校の時に受けた内田クレペリン検査でE判定をたたき出したぐらい集中力に問題のある私だ。これは大きい。

現在の執筆場所について

・市中央図書館
 ここは一階にスターバックスが入っていて館内で飲食が可能。学生から高齢者まで、読書や勉強をしている人が多くて居心地がいいのだ。特に平日の午前中は能率があがる。歴史などの資料も少し歩けば手に入る!
・地元のタリーズ
 ここは自宅から五分ほど。店内は静かなBGMと客の囁き声だけで、窓際の明るいテーブル席がありがたい。午後からは近くの大学の生徒達が勉強してるので、私はもっぱら午前中の客だ。
・市の自然公園、集会所
 平日午前中は、ほぼ一人で独占状態。ノイズは風にそよぐ葉擦れの音と、たまに通り過ぎる遊歩道を通る家族連れやご老人ぐらい。室内は窓が広くて明るい上に、テーブル席は天井の窓からの光がスポットライトのごとく机上を照らして、執筆だけでなく読書にも利用している。

地元の喫茶店

探す楽しみ

 出かけた際に、お気に入りの執筆場所を探す楽しみもある。

 最近の発見は、車で30分ほどのMK市の市民ミュージアムの喫茶室。広い芝生と林に面していて、静かで落ち着いている。ここは坪内逍遙ゆかりの場所で、文人趣味も満たしてくれる。
 隣接するTJM市の図書館一階のサンルームも気持ちいい。ここでは、以前やっていたサイタの小説指南の生徒さんとよく会っていた。

 かつての営業マン時代は、営業車の中でノートPCの鍵盤を叩きながら終日書斎で執筆できる専業に憧れたのだが、いざ定年退職して終日執筆できるようになっても外で書いているのは皮肉でもある。
 ただ、そのおかげで毎日定期的に外に出かけて人や世界に接している。これはなにげにありがたいことである。


地元の図書館

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