創作エッセイ(19)やらせシンポジウム

(2011年 07月 30日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)

 つい数か月前まで広告会社に勤務していた当事者として発言すれば、「シンポジウム」「セミナー」などは、観客・読者・視聴者などに向けての一つのプレゼンテーションである。
 冒頭のあいさつから始まり、問題の提示から論の展開、結論の落としどころまで、すでにストーリーは決まっている。
 パネリストやゲストの選択段階で、すでに結論は決まっていると言ってよい。
 質問者まで仕込みと言うのは確かに露骨だが、現実のプロモーションや広告活動の世界では、インターネットの書き込みや、コメントまで、「やらせ」は当然になっている。
 だいたい、気のきいた業者なら、フリーのメールアドレスで、100人や200人の架空の個人を用意している。
 その架空の個人で、特定商品やサービスのコメントやレビューを好意的に書き込めるわけである。
 つまり、この世の中は、嘘っぱちばかりなのである。

(2023/10/06 追記)
12年前のコラムだが、うつで広告会社を辞めたばかりの時期なので、何となく自暴自棄な感がある(苦笑)
その後、こういったシンポジウムのスタッフ側の体験をネタにした掌編を書いている。
それがこちら。
1700字シアター(1)おもてなし|栗林元 (note.com)

実は、名古屋市の文化事業が募集した名古屋ヴォイシーノベルキャビネットという文芸サイトに応募して落とされた作品であるが、何故落とされたかはお読みいただけばわかると思う。
名古屋、および名古屋人に対して、ちくりと諧謔を利かせているからだ。

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