映画レヴュー(163)「トールキン 旅のはじまり」

2019年

母と死別して孤児となったJ・R・R・トールキンが、苦学してオックスフォードへ進み、途中、第一次大戦に従軍し、友人を亡くし、復学して言語学に出合い、やがて「ホビット」を書いて作家となる第一歩を踏み出すまでの物語である。
伝記映画としての色が濃い。
創作者としてのトールキンに思いをはせた。「ホビット」を書いたのが45歳。「指輪物語」は60歳である。そして彼の死は1973年。その直前の1960年代ごろから、アメリカの学生たちの間で「指輪物語」はブームを起こした。
現実の政治に対する絶望感をアピールする「ガンダルフを大統領に」という運動やそのTシャツが売られたほど。このあたりの動きは、70年代後半に雑誌「スターログ」や「ポパイ」などで話題になった。
「指輪物語」の最初の映像化はラルフ・バクシのアニメで1978年。その前年1977年に「ホビットの冒険」を、ジブリに改組される前のトップクラフトがランキン・バス・プロダクションの下請けでアニメ化している。
このころからファンタジーのブームが押し寄せて来て、著名ではあるが「知る人ぞ知る」的な存在だったトールキンの名声が広がっていった。
1977年には、瀬田貞二訳の全6巻が評論社の文庫版でも出て、これを私は買っている。この瀬田版では、ゴラムをゴクリと訳しているし、ミドルアースは中つ国と訳されていて、私はこちらの方が好きなのだった。
死ぬまで創作に打ち込んでいたトールキンのように、俺も書き続けたいと思っている。(知名度はないけどね・苦笑)

トールキン 旅のはじまり

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