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『女王の化粧師』はいいぞ

ファンタジーは好きか?
主従は好きか?
信念を貫く主人公は好きか?
両片思いは好きか?

ひとつでもYESと答えたあなた、
女王の化粧師はいいぞ!!!!


女王の化粧師ってどんな話?

女王と王女を立て続けに失い、五人の候補者が次期女王の座を争う、芸妓の小国デルリゲイリア。花街の化粧師であるダイの前に、ある日、女王候補の遣いと称する男が現れる。男はダイを女王候補の専属にと誘いをかけるが、その候補は、玉座に最も遠いと侮られる娘だった。
混迷する大陸。足掻く国々。その影にあった、一人の化粧師の物語。異世界王国FT。(Web版あらすじより)
五人の候補者が次期女王の座を競う小国デルリゲイリア。
ある日、花街の化粧師であるダイの下に、女王候補の遣いと称する男ヒースが現れる。
ダイの腕を見込んだ男は、専属の職人にとダイを誘うが、主となる娘は“最も玉座から遠い”と言われていて!?
「わたしにできることはただひとつ。あなたを、あなたが望むように美しくするだけ」
WEBで大反響! グランドロマン開幕!!(ビーズログ文庫シリーズ紹介ページあらすじより)

簡単にまとめると女王(になるかもしれない)令嬢に仕えることになった化粧師と、女王候補の癇癪もち令嬢と、落ちぶれた令嬢の家の当主代行の青年の話です。


職人としての誇りを持つ主人公

「女王の化粧師」における主人公はまさしく「女王(となるかもしれない)候補の令嬢」の「化粧師」の話です。
花街で育った主人公・ダイのもとに、そのダイの化粧の腕を聞きつけてヒースという青年がスカウトにきます。
そもそも化粧って、現代日本においてはメイクアップアーティストなどもいますが、ファンタジー世界や中世ヨーロッパなどではどうだったんだろう?と思いません?思いますよね?
この世界では化粧とは好まれないものです。化粧しなくてもうつくしい娘が注目を浴びる。化粧なんて、と馬鹿にされるものです。
化粧は侍女がやるもの。それもとても簡単なことしかしない。その程度のものだから「化粧師」であるダイは貴族社会では軽んじられることも多々あります。
しかしダイは誠実に仕事をします。

「私に出来ることはただひとつ、貴女を、貴女が望むように、美しくすること。それだけです」

ダイと、その主となるマリアージュの出会いのシーンでの一言です。「あんた、私を女王にすることができるんですって?」と問われた時の返答です。

そしてその発言の通り、ダイは人が望むようにその人に化粧をほどこします。「顔」を作ります。


互いに成長する主従

この作品の見どころのひとつはなんといってもマリアージュとダイの主従関係です。
マリアージュ、物語の最初は癇癪持ちでなんとも暴れん坊なご令嬢なのですが、この方の成長度合いが半端ないです。

「マリアージュ様が、ご自身の考える女王の姿を、私に教えてくださるのなら、私は必ず、マリアージュ様が望まれる、女王のお顔をお作りしましょう」

マリアージュは考えるようになります。

どんな人のもとに人は集まる?
どんな人が綺麗な人だと思う?
ダイと衝突しながらもマリアージュはしっかりと考え答えを出します。
しかもこの癇癪娘、最初はお金のことすら知らない超超超箱入りだったんです(もちろん家庭事情がいろいろあったんですけども)それを知ったダイが今までマリアージュに何一つ教えなかった使用人たちに怒り、マリアージュに向き合ってしっかりと説明する。説明すれば、マリアージュは理解できる人なのだとダイは知っていたからです。
他人どころか使用人たちさえ「女王になれるはずがない」と思われていた令嬢が、ここで大きく成長するのです。

ダイの成長具合というと序幕以降のほうが顕著なんですが、マリアージュに仕える化粧師としてではなく自分にできることを増やしていくんですよね。(その要因を語ると序幕のネタバレになるんですけど……)
もとは花街育ちで貴族社会を知らない化粧師、もとは箱入りの上何も教えられてこなかった癇癪令嬢。
この二人が描いていく道の行く末は必見です。


作り込まれた世界観

さてこちらの作品の世界は作者様が他作品でも繰り広げている世界と同一のものです。
ぶっちゃけこの作者の脳みそはどうなってるんだ?? ってくらい作り込まれてます。作り込まれているけれど、必要以上にその設定を書き込んでいないので鬱陶しいなどと感じることはないかなと思います。
まず女王の化粧師でキーポイントになるのはその国の設定。西大陸においては女性しか王になれない。女王しかいない。だから女王と王女を亡くした国においてその血に連なる貴族の娘たちが『女王選』を繰り広げることになります。
このね、女王がね、このお話ではとても重要です。

良質なファンタジーの土台にはしっかりと作り込まれた世界がある。そういっても過言ではありません。ほら、ロード・オブ・ザ・リングとかすごいじゃないですか。
魔力についてとか、魔力を持つ人についてとか、さらに国同士の関係やさらには本編でがっつり使うかどうかわからない国の国主とかそんなところまで作りこんであるんですよ。
だからこそ安定した物語ができている。重厚で濃密なファンタジーが好きな方はぜひ読んでほしい。

(ちなみに同一世界の話である『裏切りの帝国』『金環蝕』もたいへんオススメ。むしろあの登場人物がごにょごにょ…とかあったりするのでぜひ余裕があれば読んでみてください) 


死ぬほど切ない両片思いロマンス

誰と誰のロマンスとは言いませんが、こちらは両片思いな恋愛小説です。「面白そうだけど恋愛要素のない話はちょっとなぁ〜」というあなた。これは恋愛小説です。(大事なことなので二回言った)化粧師の話なのでもちろんお仕事小説でもあるし、女王も絡むので宮廷ものとも言えるんですけど、恋愛小説です。(三回目)
主従と恋を天秤にかけてはなかなか結ばれない二人にもだもだすることでしょう……。なぜこうなってしまったのと涙することでしょう……。
でも大丈夫です。ハッピーエンドだって作者様がいってますから!!
結婚するらしいから!!

なので死ぬほど切ないし本当に幸せになれるの?って不安になることもあるかもしれませんが安心してください。結婚します!!


どこで読めますか?

角川ビーズログ文庫さんより一巻が発売されております!!!!

そして二巻が電子書籍限定で発売予定です!!(追記:発売しました!!三巻が2021年8月に出るぞ!!)

Webでのオススメは作者様の運営するサイトBARROCOですが、カクヨム小説家になろうでも読むことができます。
サイトをオススメしている理由はそこで常に最新話が読めるからです。カクヨムや小説家になろうはある程度話数がたまってからまとめて更新されておりますので、時差があるときがあります。(2020年5月現在時差はありません)
さらにサイトにはSSなどがありますので、最新話まで読み終わり飢餓状態にある方にとっては楽しめる要素の一つでもあるでしょう……。 


最後に

とりあえず序幕まで読んで。そこまで読み終わったらあなたはもう沼の底に落ちてます。

元気に生きろよ……と思っていただけて、まぁ投げ銭してもいいぜって気持ちが芽生えたらサポートしていただけると嬉しいです。猫と私のおやつ代になります。