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映画『サタデー・ナイト・フィーバー(原題:Saturday Night Fever)』

初出;2022年4月18日(Facebook)
 新宿ピカデリーにて、リバイバル上映中の『サタデー・ナイト・フィーバー(原題:Saturday Night Fever)』を鑑賞。1977年の公開当時、書き下ろしの5曲を含むビージーズの楽曲がメインのサウンドトラックが、ビルボードで24週連続1位となるほど一世を風靡した作品。観る前は、トラボルタのディスコダンスがメインの、ノリの良い気分の上がる映画だろう、という程度のイメージしかなかったのだが、実際に観てみると、そんな印象は良い意味で大きく覆された。この作品は、私の基準からすれば、紛れもなく古典的な名作である。
 優れた映画にも文学にも言えることだが、芸術作品は、登場人物たちの心理的な描写の背景となる、現実の生活実態についての具体的な描写を克明に行っている。経済学的な方法論からみると、これは土台と上部構造の関係であり、上部構造における人間の意識現象が、どのような経済的土台によって規定されているかを、きちんと描いているということになる。本作では、ペンキ販売店で働く19歳のトラボルタが、わずか3ドルの昇給でも人生の一大事として喜ぶ程の、ブルックリンの低所得層の出身であり、厳格なカトリックのイタリア系移民である両親のもとで、抑圧的なコントロールを受けて育った、自己肯定感の低い青年として描かれ、いつも比較される完璧な兄は神父となって家族の期待を一身に背負っている。
 そんなトラボルタの唯一の精神的な拠り所が、低所得ゆえに週一度しか通えないディスコであり、そこで「キング」と呼ばれて女性たちを魅了する程のダンスの技量なのである。この他に、異なる移民グループ間の対抗関係や、ニューヨークにおけるマンハッタンとブルックリンとの格差構造なども描かれたこの作品。素晴らしい音楽とソーシャルダンスを基礎としたペアの踊りなどの見所と共に、その時代に固有の社会構造を具体的普遍として克明に描き出すことを通じて、時代を超えた普遍的な主題を獲得するという、古典的な名作としての側面にも注目して、鑑賞したい名作。これから社会科学を学ぼうとする学生などにも大変お勧めです。

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