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トイレの悪い気

この記事は、お行儀の良い話ではないことを先にお伝えしておこう。

トイレにスマホを持ち込む人がいると知り、顔をしかめていた数年前。
そんなにも依存するものかと思っていたが、ちゃんとしっかり依存するものだった。
あれだけ好きだったTwitterを去った理由の一つも、この依存によるもの。
フォロワーの、日常を読んでいるだけで時間が溶ける。
ドラマティックなことに刺激を受けているのではなく、フォロワーが美味しそうなものを食べている、のんびり散歩をして花をアップしているなど、ごく日常を楽しむだけで、あっという間に時間が過ぎているのだ。
平和でのどか、佳きかな善き哉と、親戚の叔母のような気分で眺めている時間が、私にとっての幸せでもあった。
読み終えてもすぐに投稿はされ、とめどなく情報は更新される。
トイレにスマホを持ち込む人もいるわけだ。

さて、スマホ依存に近い状態の私なので、できるだけデジタルデトックスをしたいと思っている。
トイレにスマホを持ち込むなど言語道断。
もう戻って来れなくなるだろう。
しかし、お腹が弱い私のトイレ滞在時間は結構なものである。
お腹が痛い、じっとする、何もすることがない、痛さに集中してしまう、一層時間を長く感じる。
そうだ、読みかけの本を持ち込んだらどうだ。
躾の厳しかった祖父母が聞いたら卒倒しそうだが、小さな子供のためにトイレの壁やドアに九九をを貼ると聞いたことがあるし、毎年TOEICを受けている友人は英単語が記されたカレンダーと睨めっこをして覚えていると言っていた。
何より、トイレで読書をする愛好家がいることを、私は知っている。
TVで観たことがあり、あの狭くて小さな空間はよく集中できるのだという。

まずは魔術の本を持ち込んだ。
好きな箇所だけ抜粋して読んでいたが、数年かけても読み終わらず一生このままかと思っていた文庫本。
結果、驚くほどスムーズに読了に至った。
毎度2~3ページしか読めないのだが、おそらく2ヶ月程度で終わったのではなかろうか。
この難しい本を読了した…と閉じた本を手に、しばらく達成感に酔った。

トイレは不浄の場であるから悪い気が立ち込め、本にその悪い気が吸われてしまうらしい。
だからトイレの読書は風水的に良くないとの事だ。
ならばいっそ本に悪い気を吸っていただき、読み終えたらリサイクルの日に出してしまおう。
古本屋で手に入れた本を持ち込んで、読み終えたら私の手でとどめを刺す。
本の知識は私が吸って、いつかのために頭の引き出しに入れておくから、安心して旅立たれよ。

イギリスの物語のロケ地を巡る本をはじめ、旅行本も何冊か読み終えた。
小さな不浄の場から、世界へ思いを馳せるのもオツなもので気に入ってしまった。

今日は「ペンダーウィックの四姉妹 夏の魔法」を読み終えた。
こちらは児童書なので、1ヶ月と掛からなかった。
なぜ読みあぐねていたか分からないほど面白い物語で、始めは苦手だった二女のスカイの事も好きになった。
早々に図書館サイトでペンダーウィックシリーズの続編を予約する。
こちらはもうトイレにお世話にならずとも、部屋でスラスラと読めるので借り物でも問題なく、大切に読んで更に続編を借りる予定。

Twitterを引退した代償は計り知れないものだが、出来た時間でかなりの本を読むことができている。
愛すべきフォロワーとお別れしたのだから、それくらいがないとやっていけない。

次は何を読もうか。
まだまだ古本積読はあるから、在庫の心配はない。

【写真の猫】
術後エリザベルカラーをして、大人しかったのは僅か二日。
飛んで跳ねて、いつもと変わらずおきゃん全開だった。
ソファの下を背泳ぎで移動していたのを激写したものである。
(おなかの傷が開かなくて良かった…今はもう外している)




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