イグBFC2感想【グループF】

イグBFCというイベントは自分にとってとても楽しいものでした。ここには、計88通りの狂い小説の可能性が眠っています。

草の根イグの一環として、狂いの可能性を探っていくために感想を書いていきたいと思います。もし何か問題がありましたら、灰沢までお問い合わせください。よろしくお願いします。


地上に星

「今でもアジア人に対し敵対意識が強い人々の間では「パルプンテ」と呼ばれる」という一節、よく考えるとよくわからなくなってくる感じがして面白かったです。アンチ堀井雄二ということでしょうか。読んでいて、「確率」というテーマはユーモアにはなりうる一方、ギャグにはなりづらいのかなということを感じました。その理由は、確率というテーマは「死が選ばれた/死が選ばれなかった」という問題を引き寄せる点で深刻さを喚起させるものであるからです。その深刻さを、人生の新たな一歩を踏み出した主人公に隕石が直撃してしまう展開に回収することでユーモア(人間性の付与されたおかしみのような笑い)が生まれるわけです。一方で、コロコロコミックのような方向のギャグに持っていくのは難しいのだろうなということを感じました。人間性を欠いたギャグの方向性です。でんじゃらすじーさんのノリで確率を扱えると面白そうだなと思いました。「確率」というテーマを使った笑いの実践を見ることができて、よかったです。


怨念

ギャグの古典派でした。キャラの名前がその性格や特徴を表しているところとか、ギャグで落とすところとか、昔ながらのギャグ(?)の強さを感じました。(作者さんは使ったことがない)関西弁で書こうとしているところも古典派を感じました。たとえば漫画やアニメでは古典的なギャグのやり方(コマ外からのツッコミ、とほほ~という言葉とともにアイリスアウト)が確立されています。そうしたものはクリシェとして成立しています。M-1でもそうですが、クリシェは積極的に活用すべき一方で、それを悪用する方法を考えないといけない時代なんだろうなということを最近感じます。ニイチェン氏ではなく、穏やかな理髪店にニーチェがいてもいいかもしれないなと思いました。ゴリゴリの古典的ギャグを見ることができてよかったです。

デュプル

まず、百合が出ていてよかったです。その上で、「何がもとは一人の人間だった気がするだよ!」が特によかったです。前提ぶち壊しって感がありました。精神的つながりというテーマを悪用して台無しにしてくれているところがすごく面白いなと思いました。ツイッター(インスタ?)のアカウントも共有なのかということが気になりました。
もっと、8、10、12、14……と数が増えまくって収拾がつかないレベルまで進んでいくと、もっと面白いんじゃないかと思いましたが、字数が2400字縛りだったのが惜しいところです。6000字か12000字くらいあるとさらに輝くように感じました。おもしろフォーマットが成立していると、あとはそれを過剰に増やすと面白くなるということを改めて知ることができてよかったです。ちなみに品川駅だけやけに具体的な固有名が出てたのは理由があるのでしょうか?

地下鉄千代田線北千住駅の決闘

ゴリゴリのバトルでした。傘で戦うというのは誰もが一度は想像するものだろうと思いますが、その純粋な発想を作品に昇華させた感じがありました。ジャンプのバトル漫画では「血統」がよく問題になっていますが、この作品の傘も「祖父の代から我が家に伝わる」ものとなっています。そのあたりのディティールもバトル要素を盛り上げています。「勝者は戦利品として敗者の傘を奪うことができる」というくだりもそうですね。そうした設定を踏まえて、スーツ姿のリーマンが傘で殺し合うのは想像してみるととても馬鹿馬鹿しく感じます。一番よかったのは「雨の日限定」のところです。雨の日割引みたいなノリだなって感じがして面白かったです。日傘キャラは第二部で出てくるのでしょうか。あとモブキャラはコンビニの透明な傘(よくなくすやつ)を持ってるのかなと感じました。「人が傘を持つ限り、血の雨がやむことはないのです」というのもうまいことをしっかり言っていて面白いです。シチュエーションを丁寧に組んでそれを徹底することで読者に馬鹿らしさを演出しているところが特に勉強になり、読んでよかったです。

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