イグBFC2感想【グループA】

イグBFCというイベントは自分にとってとても楽しいものでした。ここには、計88通りの狂い小説の可能性が眠っています。

草の根イグの一環として、狂いの可能性を探っていくために感想を書いていきたいと思います。もし何か問題がありましたら、灰沢までお問い合わせください。よろしくお願いします。


『さじたいじ』

ユリ・ゲラー小説かと思いましたが、そうではありませんでした。

「ぶつかったら磁力が消える」ということを前もって丁寧に説明させるところに、作者の気配りを感じました。兄を出さないところや、ママがコブラを救出しにやってきた動機がよくわからないところからは、作中世界の広がりを感じることができました。

一番よかったのは、磁気を得るとスプーンが「整う」ところです。まずスプーンが整うという概念が謎です。謎ですが、ものすごくしつくりきました。磁力を得ると頭がすっきりするというのは今後流行りそうな予感がします。磁力がスプーンを革新に導くというスピリチュアルな理論ですね。そういう視点を得ることができてよかったです。


『プロピオニバクテリウム・アクネス』

アクネ菌を主役にする発想がまずイグ的でよかったです。脱糞失禁ではなく角栓やニキビを題材にするところに戦略性を感じます。

思ったのは、この主人公は角栓を取ることに快楽を感じる側の人間ではないということです。主人公は、角栓を追い出すことを目的としています。アクーがもし、角栓ニュル動画を投稿しまくっている人物のもとに寄生していたらと思うと……恐ろしくてなりません。あともう一つ思ったのはこの作品にはパロディが多く使われていることです。わたし自身もそうでしたが、この大会の形式でパロディを使うのは勝ち負けで言うと不利にあたるのかもしれません。ですがあえてそれを承知で言うと、『進撃の巨人』ではなく『ごんぎつね』とアクネ菌の交差点を探るとヤバくなるかもしれないと思いました。全体として想像力を刺激する作品でよかったです。


『遠距離』

安易なので会う会わないの話を聞くと西野カナを思い出してしまいます。あとDECO*27もです。

「会いたい」という感情を狂気として捉えたとき、人はどれだけ会いたすぎる状態に至れるのかという問題が立ち上がります。当然作中の二人は会いたすぎランキングで言うと上位にあたります。「なにげに ふわっと 思うんだよ。」と語る人物に対し、「・・・ふぅーん。。?」と語るもう一方は「こいつ言うほど会いたくないんじゃね?」と感じているのかもしれません。それが関係の終わりにつながるのかもしれません。ですがちょっと待って欲しいのです。「なにげにふわっと」会いたいと思うのは、捉え方によっては度を越して会いたいと思っているのではないかといえるのです。なにげに会いたいなと思うのは、会いたいという感情がもう日常レベルまで落とし込まれている証なのです。だからそのことを、本当にわかってあげてほしいのです。これはもう、信仰の問題なのです。ということを感じさせられたので、よかったです。


『たんぽぽ』

ワカゲノイタリアヌスといい、フタァといい、語感がとにかくよかったです。童話の形式なのも、フタァのアホらしさを加速させていました。朗読に向いた作品だと感じます。伏せ字の存在から見るに、フタァのアクセントはフタァ↑なのかなと思いました。ヤカラ読みですね。ここもよかったところですが、ヤギから恋文をもらって別れるのを「生活の方向性の違いで解散」すると表現したところも上手いなぁと思いました。自分で告白しといて生活の方向性の違いとか言っちゃうところも無茶を感じます。

微妙にメルヘンチックなシチュエーションでペットボトルのフタァを回す男がいる。ほっとけばいいのに絡んで無理矢理フタを開ける。結果としてパンドラの箱が空く。一連の展開は非常に教訓的でした。ペットボトルのフタァを回す男の自由は、何より守られるべきものです。というか、男の生き様は感動的ですらあります。われわれののんきな暮らしを、守ってくれていたわけですから。総じてNHKで流して子供の情操教育に活用したい作品だなと感じて、よかったです。

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