イグBFC2感想【グループM】

イグBFCというイベントは自分にとってとても楽しいものでした。ここには、計88通りの狂い小説の可能性が眠っています。

草の根イグの一環として、狂いの可能性を探っていくために感想を書いていきたいと思います。もし何か問題がありましたら、灰沢までお問い合わせください。よろしくお願いします。

https://note.com/ig_bfb2/n/n09497215e6a5

おれの事情がおれの知らないところでなにかしている

表題の作がいちばん好みでした。だいたいのところで、おれの事情は自分の手を離れたところで進んでいく……というのを自分の生活の中でも実感しています。「なにか」というのもアバウトさを感じさせて良いなと思いました。それでいて、深刻さが幾分薄れているような感覚もありました。「進んでいる」ではなく、「なにかしている」なんですね。まずいことなのか、よいことなのかどうかの判断すらつかない、「なにか」。政府の者によって届けられるのが「花束」なのも面白いと思いました。「おれの知らない」事情が紆余曲折してあちこちを進んだ後に届けられる「花束」。もらった瞬間の?マークが浮かぶなあと思いました。

ウイルスからの伝言

第三学年 道徳修身科『みんななかよし』所収。最後のこの一行にすべてが託されている感じがあり、アツかったです。短い分量の中で、作品の構造を分厚くするのにこの一行の挿入が恐ろしいほど効果をあげていました。というか、これを道徳の教科書に入れるのは判断基準が狂っています。そういう驚きを与える効果もありました。多分、ミツルはウイルス学の権威になろうとしているんでしょうね……。いちいち言葉にトゲのある先生、異常に聞き分けのよすぎる生徒、マジックミラー形式でお披露目されるミツル……など、教室という狭い空間で行われている出来事の細かいところも拾い上げていて、読みごたえがありました。構成が高い水準でまとまっていて面白かったです。

近松世界のザジ

派手なリミックスでした。自分はそんなに詩を読まないので技術的にいい悪いの判断がし辛いので申し訳ないのですが、死なないために色恋沙汰から距離をとるという方法が取られてるように感じました。劇的に死ぬのではなく、より平坦な形で生きるというような形です。その距離の取り方が面白いと思いました。あと、近松世界のザジが乗っているのは御堂筋線でしょうか? もはやこの世界のザジは地下鉄に乗ってないかもしれませんが、気になりました。

小林猫太原作『ダンウィッチの回』二次創作(朗読、作曲、動画)

二次創作で出てはいけないとどこにも書いていなかったので、二次創作で出るのが大会の趣旨的には正しかったのかもしれません。そう感じさせられました。一次創作にあたる小説もパーフェクトに馬鹿小説たろうと堂々たる姿を見せていました。野球のボール回しを通じて邪神が生まれるアイデアと、そこから野球が別ゲーに変わっていく(しかも本人たちは真剣にやっている)ところが面白かったです。ラテン古語を聞くだけで一瞬で理解できるビショップは野球選手に収まる存在ではないなと思いました。文字表現のみにこだわらず、もっと解釈の幅を広げた方がいいなと思います。最近、小説内QRコードを挿入するのにはまっているのですが、もっと大胆な解釈で小説を捉えられるようにできればと、この二次創作を見て感じました。


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