イグBFC2感想【グループK】

イグBFCというイベントは自分にとってとても楽しいものでした。ここには、計88通りの狂い小説の可能性が眠っています。

草の根イグの一環として、狂いの可能性を探っていくために感想を書いていきたいと思います。もし何か問題がありましたら、灰沢までお問い合わせください。よろしくお願いします。

おちん◯ん裁判

おちん〇んを出した出さないの話は金を貸した貸さないの話と同じように裁判になるということがわかります。話の突飛さに対して、現実味を確保するためのセリフ回しが妙にしっかりしていて、あんまり引っかかることなく(?)読み進めることができました。ポイントが高いのは、おちんちんという言葉を持ち出したのは弁護人の方だということです。そこから先、ペニスではなくおちんちんという言葉に全員が固執する。そこでよく読むと、この作品で扱われているのはただの公然わいせつに関する裁判であり、狂っているのはおちんちんという言葉だけだということがわかります。そこではじめて、おちんちんという言葉の持つ引力の強さに気付きました。悪性の強い言葉の浸食作用を感じることができ、よかったです。

走りながら村上春樹が僕に語ったこと

パロディ大好きなので、趣向がいいなと思いました。村上春樹みの強い言葉で攻めていく潔さがとてもいいなと思います。村上春樹のマラソンのベストタイムを意識する人、現実にもいるんじゃないかなと思います。そして、どこかのタイミングで村上春樹と誰かが出会い、並走し、ベーコンについて語るのを聞き、走り去る。そうした光景は、既に行われてしまったもののような気さえします。ともすれば、これは誰かが体験したエッセイであるのかもしれないのです。村上春樹は、一人だけで走っているわけではないのです。パロディでありながら、普遍性への志向とその可能性を知ることができ、よかったです。

汁なし野郎

ユーチューブでナミ極というクリムゾンのワンピースエロ同人を落語に落とし込んだ傑作があって、その動画が死ぬほど好きなのですが、この作品を読んでそのことを思い出しました。男性性の問題はそれ自体小説のテーマとして露悪的に扱われるものですが、ワンピースのエロ漫画が出てくると一気にイグ感が増します。個人的には、もっとワンピースのエロ漫画の描写が書かれているとよかったなと思いました。オタクのお兄さん性がもっと強調されるかなと思ったからです。親のPCにワンピースのエロ漫画が保存されているのめちゃめちゃ嫌だなと思います。文学の領域の主題にイグ要素をうまく浸透させていて、正統派なイグ小説であると感じよかったです。

肉汁公の優雅な偽装生活

語り口がとても面白かったです。肉汁公の一人称はそれがしであってほしいと思います。こうした語りは非常にうさんくさく思え、人工的に作り出されたものという感触を受けます。そうしたうさんくささは、小説の持つ特権的な領域であると感じます。そして、自由な広がりすら持ちえると思います。闊達な語りは、肉汁の重みと臭みから解放されているのです。肉汁公、もとい伊藤裕也がどんなに肥満体であろうと、語りだけは、彼を俊敏に動かして見せるのです。伊藤というのが「ハムっぽくていい」というのは異様な説得力すら感じさせられます。ツンドラに出向く肉汁公の話、めちゃくちゃ読んでみたいです。語りの持つ魔力を強く感じることができる作品で、よかったです。

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