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昔書いた、とんかつについての文章ですが、自己紹介がてら載せときます!

2014年に私が書いた当時、とんかつ成蔵さまを高田馬場で味わっていた時のコラムをどうぞ。


シリーズ「町を食べる」①

高田馬場 とんかつ成蔵

食べたいと言うより、会いたくなり今日ならぶ。1人むさぼるとんかつ定食はここに限る。

並んでから豚が揚がるまではほぼ1時間。えっ、長い?何をおっしゃる、そんなの全然長くない!!

調光された地下は18席。窓は勿論ない。ダウンライトのほの暗いカウンターに座ると今が何時なのかわからなくなる。一瞬くらっとくるのは、豚の油の薫り。決してしつこくないけど脳の髄にトンっとノックをしてくる。

「あぁ、また来ちゃったわ、俺」

思わず心中で声を出してしまう。

口数少なめなダンディーな店主は客の目を見て挨拶する。アルバイトレディたちは若くても洗練されている。無駄のない動きはキャベツの歯応えに繋がる。

「ご注文は?」

「特上ロースカツ定食、お願いします」

「かしこまりました。特上ロースカツは厚みがありますので揚がるのに少々お時間いただきますがよろしいですか?」

(心中の声)

キタキタ~!この一連のくだり!知ってますとも、揚げるんじゃなくて茹でてるんですよね、イメージ湧くよな~!最高の待ち時間だよな~!

もちろん待つよ、待つってば!

(満面の笑み)

「はい」

30分はかかることを俺は知っている。だから今日は本を買っていった。

「スナックあるある」この素晴らしき魑魅魍魎の世界全日本スナック連盟会長  玉袋筋太朗著 講談社1000円

注文した肉を一端忘れるには丁度いい内容と読み応え。見事30分で読了。何故か清々しい。

話を戻そう。奴が来た。

アルバイトレディが俺の目を見てこう言った。

「たいへんお待たせしました」

俺は言葉になってない声を思わず発してしまった。

「ばい!」

小さく笑われた。ちょっとタイプの若い女の子だった。            それはさておき、いよいよ実食。

「いただきます!!」

こういう時は、独りでも声に出すことにしている。

肝心な味付けたが、とんかつと言えばソースが定番かもしれないが、ここでは止めとく。素材の味を口内、否、脳内で生かしたい。だから岩塩しか使わないのは、いつからか俺が俺のために決めたルール。これがいい。

厚さ3センチにもなる肉を端のほうからつまむ。二、三回、削り出しの岩塩にバウンド、そして息を止めて口に運ぶ。

その瞬間、もう世界全てのことがどうでもよくなった。女だの金だの、バランスとって生きてもしょうがねぇだろこのヤローって本当に思う。

あぁ、食の官能、独り占め。

特上ロース定食よ、今日もありがとう。

価値観を揺さぶるピンクの弾力は歯に逆らうことなく裂けていき、舌の上でちゅるりとほどける。肉汁なんて衣の隙間や、いい塩梅のサシからずっと出てる。

のあぁ~らぁ~、毎日少しずつ食べて病気になるならそれもまた良し。

「ごちそうさまでした!!」

グルメでない俺が、今生一番お薦めしたいとんかつ定食は、成蔵です。

2014 7 24 (木) ランチにて

配島徹也

※今後勝手に食についてアゲてきます。

皆さまの感想とお薦めの店お待ちしております。勝手に行ってきます♪

でっかい特ロースカツを枕にして、いつかウユニ塩湖で浮かびたい

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