カラオケ音源を自作する際の、著作権に配慮した曲の選び方と作り方、アップロード方法について
1.はじめに
この記事は、特に配信者が歌枠で利用できるようなカラオケ音源の自作を考えている人向けに、どうすれば著作権の問題をクリアして音源を作成、アップロードできるのかを自分なりにまとめた記事です。
推しの歌枠配信の「カラオケ音源がなくて歌えない」という主旨の発言を本当に真に受けて音源制作経験のない私も音源を自作したくなりましたが、途中で著作権の問題にぶち当たりました。
例え音源が作成できても著作権における問題がクリアされていなければ、自分が著作権を侵害するにとどまらず、もしもそれを配信者が利用した場合はせっかく配信者のために作成した音源が逆に配信者に思わぬ損害を与えかねません。
そこで、今回著作権の問題を解決できる方法について調べましたので、記事にまとめて共有し、皆さんがカラオケ音源を自作する助けになればと思います。あくまで自己の趣味として音源を自作してみたい、その延長としてあわよくば配信者が使ってくれたら嬉しいな、というスタンスで書かれたものです。
また、自作を検討していない人にとっても、この記事を通して配信者が利用できるカラオケ音源の条件を理解できれば、リクエストの時点で著作権の問題がない音源の有無を確認することができます。あらかじめ自分でスクリーニングすることで採用される確率が上がるかもしれません、まあ願望ですが。(これは決して、音源がない曲をリクエストすべきではないという意味ではありません。)
注意事項
この記事の注意事項として、私は法律の専門家ではないので記事が間違っている可能性があります。あくまで個人的な備忘録であり、記事を鵜呑みにして損害等が発生した場合でも責任は一切負いません。全て自己の責任において実施し、必要に応じて専門家に確認してください。
2.背景
カラオケ音源として原曲やInstrumentalを利用してしまえばいいのでは?と考える方がいるかもしれませんが、そもそも著作権には曲自体の著作権と、その曲を演奏した音源に関するいわゆる原盤権が存在しています。
歌枠内で音源を直接使用できないのは主にこの原盤権による問題です。
原盤権はJASRACやNexToneなどの著作権管理団体で管理されておらず、著作権者と直接交渉する必要がありますので、配信者が1曲1曲確認を行なうのはアップロードのハードルが高くなります。
そこで、音源を自作してしまえばその自作音源の原盤権は作成者である自分にあるので、原盤権の問題を解決することができます。よって、音源を自作するという方法が有効になってきます。
一方で、依然として曲自体の著作権の問題は存在していますが、これから説明する方法によって適切に解決が可能です。
著作権の概要については、これらのページが詳しいかと思いますので参照してください。
3.手法について
原盤権については、音源を自作することで解決します。
著作権については、JASRACまたはNexTone管理楽曲を選びかつYouTubeにアップロードすることで、JASRACとYouTube間またはNexToneとYouTube間の利用許諾契約に基づき、個別の許諾申請や著作権料の支払いを不要にします。
これによって、申請作業や著作権料の支払いをせず、3つの作業(著作権の確認、音源の作成、YouTubeへのアップロード作業)により音源のアップロードが可能になります。
本記事は、最も楽で安全だと思われる上記手法を円滑に実行するための方法をまとめたものですので、可能ではあるが時間のかかる方法や、曖昧な方法は除外していきます。
4.具体的な流れ
(1)JASRACの、『動画投稿(共有)サービスでの音楽利用』のフロー
YouTubeへのアップロードに関するJASRACの条件をクリアするには、JASRACのHPの『動画投稿(共有)サービスでの音楽利用』のフローに従う必要がありますので、都度参照してください。以降はそのフローに沿って説明していきます。
なお、JASRACのHPには商用配信の動画配信や、非商用配信の動画配信のページがありますが、そこに記載されたものが本来の手続きであり、この利用許諾契約に則った方法はあくまで例外的な手法です。
NexToneの利用フローはHP上で以下の記述以外詳しい情報が見つからなかったため、申し訳ありませんが割愛します。おそらくJASRACと同様の条件かと思われますが、必要に応じてNexToneへの問い合わせ等で確認してください。
『NexToneと利用許諾契約を締結している事業者が提供しているサービスの場合、当該事業者が利用実績のご報告や使用料のお支払いを行っているため、動画投稿者による利用申請は必要ありません。具体的にどのサービスと許諾契約を締結しているかについては、別途お問い合わせください。』
NexTone HPのFAQより引用
(2)フローに入る前に
さて、JASRACのフローのさらに前段階ですが、フローは「JASRACがその曲の著作権を管理している」という前提で書かれています。つまり、JASRACとYouTube間の利用許諾契約を利用するためには、音源の作成前にそれを確認する必要があります。
「JASRACが管理している」かどうかは、JASRACのトップページ右側の「J-WID 作品検索」というボタンから飛ぶことができる、J-WID(ジェイウィッド、JASRAC Works Information DataBase)から検索できます。
J-WID上で楽曲を検索するときに確認する項目は、『管理状況(利用分野)』『内外』です。
『管理状況(利用分野)』
複数の利用分野があるかと思いますが、著作権は複数の支分権によって構成されており、この利用分野が各支分権に対応するようです。
YouTube上にアップロードするためには、JASRACでインターネットで配信するための著作権(おそらく送信可能化権)を管理している必要があります。
J-WIDの管理状況(利用分野)において、「配信」に「〇」がついていれば、アップロードが可能です。その他の利用分野に×がついていても問題ありません。
楽曲によっては、配信の権利だけをNexToneが管理していたり、同じ曲でもAさんはJASRAC、BさんはNexToneと、著作権者ごとに別の著作権管理団体で管理されている場合があります。後者の場合でも、JASRACとNexToneを組み合わせることで、全ての著作権者の著作権が管理されていることが確認できれば問題ありません。
NexToneの場合は、NexToneのトップページの「作品検索」というボタンから作品検索データベースに飛ぶことができ、同じく配信に〇があれば問題ありません。
JASRACでもNexToneでも管理していない場合は、著作権者に個別に許諾を得ることによってYouTubeへのアップロードが可能になりますが、本記事内ではその方法を採用しません。一個人が個別に著作権者に確認するのは煩雑でしょうし、仮に許諾を得たとしても配信者が一個人の音源の許諾の有無を個別に確認することは難しいと思われるためです。
個別の許諾の場合、JASRACとYouTubeの利用許諾契約外になるので、著作権料の支払いなどの別の問題も発生してくるでしょう。さらには、我々だけではなく配信者自身も個別の許諾を受ける必要があります。
ところで、そもそもアップロードせず配信者に直接送付する方法もなくはないと思いますが、通常配信者に直接連絡を取ることは避けるべきと考えますので採用しません。
『内外』
少し飛びますが、フロー5『動画をアップロードするのは「個人」である。』に関連する確認事項です。
こちらは我々個人がカラオケ音源をアップロードする段階では問題ありません。しかし、配信者が企業所属の場合には個人ではなくなりますので、外国作品を利用すると別途手続きが必要になり、ひいては楽曲使用のハードルが高くなります。
よって、あらかじめ『内外』が「内国作品」であることを確認してください。事前に内国作品としてフィルターをかけておいても良いかもしれません。
なお、著作権とは直接関係ありませんが、事前にカラオケ音源がすでに存在しているか、すでに歌われているかは当然確認すべきでしょう。
(3)フロー1『動画で使用する音源は自作したもの(自ら演奏、または制作したもの)である。』
前述のとおり、原曲そのものは原盤権に引っかかるので使用してはいけません。加えて、原曲からボーカルを消しただけの音源や、原曲からサンプリングした音を部分的に使用した音源も同じく原盤権に引っかかるため使用できません。
この問題を解決するために、音源の作成は全て耳コピによるMIDI打ち込みを想定しています。著作権上問題がなければ何かしらのサンプリング音源を使ったり、自分で演奏した音源を使ってもいいかもしれませんが、MIDI打ち込みにしておくのが無難かと思います。
余談ですが、ちょっとくらいなら勝手に使ってもわからないんじゃないか?と考える人のために、6秒の無断サンプリングの判例とその解説があるので、念のため掲載します。
また、アレンジを行なってはいけません。
著作権の中に同一性保持権というものがあり、アレンジを行なうとこれを侵害します。なお、同一性保持権はJASRAC等の著作権管理団体では管理できず、従ってYouTubeとの利用許諾契約にも含まれていません。もしもアレンジする場合には著作者(≠著作権者)からの個別の許諾が必要です。
制作についてはつい最近始めた素人なので何も参考になる話はありませんが、制作ソフトやソフトを利用して作られた曲の扱い、サンプリング音源の著作権も念のため確認したほうがいいかもしれません。
(4)フロー2『動画を配信するのはJASRACと許諾契約を締結している動画投稿(共有)サービス』
今回はYouTubeへの投稿を前提としていますので、許諾契約を締結しています。その他にも許諾契約を締結しているサイトがありますが今回は割愛します。JASRACのHPに許諾契約を締結しているサイトのリストがありますので、必要に応じ確認してください。
(5)フロー3『動画の配信方法は、リアルタイムでの配信(ライブ・生配信)以外に、タイムシフトやアーカイブでの配信も行う。』
タイムシフトやアーカイブ配信をするとしておけば問題ありません。
(6)フロー4『動画の内容、目的が広告(PR・啓発動画など)である』
個別の事情によって異なるとは思いますが、本記事内では個人の趣味の範疇で行うことを想定していますので、広告が目的ではありません。
(7)フロー5『動画をアップロードするのは「個人」である。』
個別の事情によって異なるとは思いますが、本記事内では個人の趣味の範疇で行うことを想定していますので、個人になります。
なお、配信者側は前述のとおり、法人所属であれば個人以外になるので、外国作品かどうかが問題になります。
(8)音源のYouTubeへのアップロード
JASRACのフローに従って条件を満たしていればYouTubeへのアップロードが可能です。おめでとうございます。
さて、これまでのとおりYouTubeへのアップロードは、JASRACやNexToneが配信に関する著作権を持っている限り、その利用許諾契約によりアップロードが可能です。
しかし、例えばTwitterなどはJASRACやNexToneとの利用許諾契約が結ばれていないので、音源を上げないようにしましょう。どのサービスと利用許諾契約を結んでいるかはJASRACの場合はHPにありますので、確認してください。
また、MIDIデータを直接アップロードしたり、楽譜を画像としてアップロードすることは著作権の侵害になります。ただ動画として楽譜をつけることはOKらしいので、仮に楽譜を示したいとしても動画にしておきましょう。
あとは、曲名やカラオケ音源であることを明示しつつ、概要欄にどう言った条件で使用して良いかを記載しましょう。
5.最後に
この記事は最も安全であろう手段を選択肢の1つとして提案するものであり、これ以外の方法がないわけではありません。また冒頭の注意事項のとおり、自己の責任において実施してください。
それではよい音源が作成できますよう願っております。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?