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万事適当DELF B2体験記

 去る2024年6月2日、京都DELF(Diplôme d'études en langue française)のB2試験を受けてきた。備忘録がてら試験の思い出を書き連ねてみる。前提として、筆者の情報を提示しておこう。

・大学4年生
・フランス語を扱う学科に属している。専門は一応文学。
・読むには比較的得意。他はオワリ。
・DELFは今回の受験が初挑戦。B2を選んだのは、周りの学生が大体持っている資格だから。

 なお、以下にはB2の試験情報ではなく、あくまで個人の思い出が綴られてので、無意味に時間を潰したい人だけが読んでほしい。一応、客観的な情報は太字にしておいたので、有益な情報を少しでも摂取したければ、太字を見れば良い。

受験前史

 DELF試験の難関は、なんといっても出願である。例えば今回の6月期試験の場合、出願期間は「2月16日(金)~4月19日(金)」となる。早すぎる!そのうえ、関東の会場(東京、横浜)は割とすぐに埋まってしまう。私はこのトラップに幾度となく嵌った。二回。一年前。出願期間を勘違いしていたため、出願の決心をした日にはもう締め切られていた。半年前。出願期間を入念に把握していた私は、締め切り直前にサイトへ訪問する。東京と横浜の会場が満席の由。金欠のため、関西や東北へは行けない。こうして過去2回の受験は儚くも不戦敗となった。

出願

 2024年度こそは、失敗しない。しかし、怠惰が時を奪ってしまった。4月4日、箱根にてDELFの公式websiteを確認すると、案の定、東京、横浜会場は満席となっている。せっかくの温泉紀行が、三度の失敗に耐えかねた仏の顔で満たされた。とはいえ、京都会場はまだ空席があるようだ。お金に余裕はある。旅の散財衝動に駆られて、私の京都試験旅行が決定した。その後、温泉で気分は晴れ、満ち満ちた解放感で当地を後にしている。ちなみにこの時は新幹線代を払わなければならないことを忘れていた。遠からず絶望する日が到来する。

対策

 こうして4月上旬に試験の予定を無事組み入れた私は、猶も無為の時を過ごす。結局、試験の対策本を購入したのは1ヶ月後の5月11日で、試験までもう1ヶ月を切っていた。『Le DELF B2 100% Réussite』がその対策本で、リンクはhttps://didierfle.com/produit/le-delf-b2-100-reussite-edition-2022-2023-livre-didierfle-app/ である。新形式(記号問題のみ)に対応していて、tipsも充実してあるから、これで十分な対策を積むことができる。私の場合、とある事情で勉強する時間をほとんど取れなかったため、各大問の形式を確認したのと、Production Écrite の作法と決まり文句を覚えただけで、他はうっちゃってしまった。つくづく不用意な人間である。これだけだと、無対策で無鉄砲な無頼漢と見做されてしまうので、一応以下にDELFに向けて行ったことを列挙しておく。

・CE:無対策。これに関しては、普段からフランス語の文章には親しんでいて、大学でも訳のわからないフランス語を多く読んでいるため、何か対策するでもなく満点近く取れる自信があった。22-25点を想定。

・CO:
を聴く、以上。サイトを覗けば筆者の趣味がわかると思う。DELFというよりは、普段の学習に向いているかもしれない。あとは、サンプルの問題を聴いて、難易度の感覚を掴むくらい。対策期間がないので、諦めていた。10点想定。

・PE:市長に手紙を数通書いてみた。これも対策の量がものをいうので、もとより捨て気味。『100% Réussite』に100%の信頼を置いて放置。10点想定。

・PO:毎週受けている授業で、フランス語のみを使う演習があるので、それで舌を慣らしておいた。「口から出まかせ」は得意なので、『100% Réussite』の功徳を信じて放置した。10点想定。

 あらためてみても、100点満点の無対策である。はなから高得点は諦めていて、50点でギリギリ合格できれば御の字だと考えていた。(想定得点からも察せられると思う。)

前日まで

 以上ご覧いただくと、のらりくらりと試験前を漫然に過ごしている怠惰な大学生に見えるが、決してフランス語の勉強をしていなかったわけではない。DELFの数日後にある卒論関係の会合で提出する資料を作成すべく、足繁くキャンパスで作業をしていたのである。該当資料はフランス語で作成する必要があるため、これをPEの試験対策の代替としていたのだ。さて、この資料、6月2日が締め切り日だった。何を隠そう、DELF試験当日である。あまりに運が悪い。しかも資料作成が遅々として進まず、結局前日になっても資料は完成していなかった。流石に前日くらいはまともに対策をしておきたかった。とはいえ、資料を出さないと大学の先生方に迷惑をかけてしまう。両者を天秤にかけた結果、試験は受け直せる、という当たり前の結論に至った。試験対策の優先順位をここでも格下げし、徹夜してでも資料完成を優先させることにした。ここまでが6月1日24時までの状況である。

当日

時刻表記で記していこう。
0:00~4:40:卒論資料作成を続ける。フランス語にすることを前提にした日本語版を完成させた段階で、始発電車に乗り込む準備のタイムリミットが来た。新幹線での作業継続を決心し、荷物をまとめ、着替える。

4:40~6:00:最寄りの駅から東京駅へ行く途中で、資料のフランス語訳を開始。東京駅に着くと、鯖の押し寿司を急いで購入し、走って新幹線ホームへ飛び乗る。6:00発のぞみ1号に乗車成功。

6:00~8:09:京都駅までひたすら、フランス語訳の作成、結局完成して提出したのは7:59。ほとんど時間は残らなかった。残りの十分で後片付けをし、お茶で鯖寿司を七貫流し込んだ。苦痛の朝ごはんだった。

8:09~9:00:関西日仏学館までの道のり。京都駅→今出川駅→市バス「百万遍」のルートを選択。同時にPEの勉強を開始する。ネットで作文の形式や決まり文句を公開してくれているサイトの情報を鵜呑みにし、ノートに書き殴って手に表現を覚えさせる。眠気が到来するも、ペンで手を刺して我慢した。

9:00~9:15:無事試験会場に到着。なぜか、同じ学科の人が二人もいて、親近感を覚える。深夜テンションも相まって合格を予感する。

9:15~9:45:新形式の問題であることを確認し、第一関門を突破するも、CO開始早々饒舌な語り手に敗北を確信する。ひとまず聞き取れた内容をもとに全体の構成を想像して全設問に解答を記入する。COにいきなり平手打ちされ、深夜テンションは醒めた。

9:45~10:10:COが終わると、CEに取り掛かる。この頃になると頭が完全に試験モードになっていて頭も冴え始めた。試験問題の難易度も比較的平易で、とくに引っ掛かるところもなく解答終了。寝不足でも読解はできるのだなと感慨を覚える。

10:10~11:45:遅筆の私にとって最難関のPEに到達。変則的な出題がないことを祈っていた。想いは通じて、「緑地を潰してホテルを建てようとする市長に手紙を出せ。その際、市長が採る政策の目的を留意せよ」といういかにもDELF B2らしい出題となった。先に書く内容をメモしてから、一気呵成に書き始めて、300語に至ったところで締めの文を書いて終わらせた。ひとまずの達成感に浸ったあと、お手洗いで少し体を休め、会場に戻ってからは軽く見直しをして試験終了。想定の点以上は取れている実感があり、POに向けて希望が残る手応えとなった。

11:45~12:30:POまでの待ち時間。同じ学科の人とおしゃべりをしながら時間を潰す。他にも一人知り合いがいて、吃驚する。

12:30〜13:15:PO試験。ふたつ課題文が与えられて、一方を選択してそれについて意見を述べ立てる形式。職場の居心地についての文章を即座に選択し、統計、経験、想定問答への回答(最初の発表の際に、指摘させる部分をあえて数カ所用意しておく)を準備。試験官二人と会話スタート。意図を伝えることを最優先し、己がフランス語で議論ができることをアピールした。しかし、手応えは想定通りなので、対して良くはないだろうと予測。

 以上で試験は終了した。開放感に包まれて会場をあとにした記憶がある。京都大学で何枚か自撮りし、祖父と電話で試験の手応えを話したあと、しばらく市中を散策して帰った。新幹線では、丸善で買っていたマラルメの詩を読んでみたが、てんでわからず仕舞いだった。

試験結果閲覧まで

 60点くらいで合格している予感があったものの、早く結果が出てほしい焦燥感から、毎日のように公式サイトを巡回したり、DELFの受験ブログを訪問したりして、情報を得ようとした。大体の年で、7月中旬から下旬にかけてB2試験結果が出ることを知り、フランスの対応の遅さにうんざりしたが、かえって諦めがついて、他の勉強をしながら気楽に結果を待つことができた。
 結局、今年度(2024年度)の結果が公式に通知されたのは7月18日だった。メールで試験結果が確認できる旨記載があったので、おそるおそる結果を閲覧してみる。想定通り合格していた。

内訳(四捨五入)と所感

・CO:16
・CE:23
・PO:13
・PE:13
・Note Finale:65

 CEが満点じゃなかったのが心残りである以外はなんの感慨もなかった。ろくな対策ができなかった割には高得点に感じるが、大学4年生でこの体たらくでは大学院には合格しないだろうという落胆も混じる。そんな結果だった。来年度はC1に挑戦しよう。たっぷりの準備と、Pの勉強の後で。

総括(ですます調)

 試験を受けて感じましたが、DELFは試験対策に伴う点数上昇が大いに期待できる試験です。特にP系統は、地力というよりもむしろ、対策量によって点数の高低が決まる傾向にあると確信しています。(友人他複数知り合いに確認し、同意を得ております。)ある程度時間的余裕をもって対策できる人は、CO CE PO PEの順に、20 15 20 20 くらいを目指して学習を進めれば、本番で何があろうと合格にもっていけるでしょう。無対策の前線で試験を受けた身で恐縮ですが、今後B2に挑戦される方はぜひ参考にしてみてください。



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