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句集を読む:『龍宮』

『龍宮』 照井翠(てるいみどり) 2021コールサック社(文庫新装版)
著者は昭和37年花巻市生まれ。 「暖響」「草笛」同人。
本書は2012年に角川書店から出版された著者の第5句集の文庫新装版。全202句。

[章立て]
泥の花
迷宮
流離
雪錆
真夜の雛
月虹

句集のあとがきによれば、震災当時、著者は転勤で釜石市内、釜石港から数分のところに住んでおり、「死は免れたが地獄を見た」とのこと。その状況下にあってその状況をこれだけ多くの十七音に残してくださったことにまず感服する。生々しい句の数々、その場にいた人でなければ出てこないような言葉は、その場にはいなかった者、呆然と報道でその場を見ていた者にも、その場はもっともっと大変だったのだと納得させる。

[好きな句10句]
春の星こんなに人が死んだのか
三・一一神はゐないかとても小さい
天の川ぐにやりと曲り起つ鉄路
朝顔は天界の色瓦礫這ふ
鰯雲声にならざるこゑのあり
柿ばかり灯れる村となりにけり
迷ひなく来る綿虫は君なのか
雪が降るここが何処かも分からずに
なぜみちのくなぜ三・一一なぜに君
半夏生時はさらさらとは往かず

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