視聴者投稿実話怪談『埋葬の報せ』

これは、私の怪談を扱う配信に、視聴者の方より投稿されたお話です。





この話は実話怪談であり、SCPの埋葬の報せとして投稿した話の元の話となります。
これは東欧で仕事をしていた時の話です。
当時、私は旧ソビエトが崩壊した時に記録から漏れた色んな設備や倉庫、避難所などを改めて再発見して登録する仕事をしておりまして、古い帳簿や地図をもとに大まかな位置を絞っては現地に飛んであれこれ見つけるというトレジャーハンターみたいな事をしていました。

この体験をしたときは、その大まかな位置を絞るために、東欧の片田舎に赴いてその地域の公的資料や地域の歴史を調べさせてもらう必要があったのですが、公民館とか村役場の人があまり協力的でなく、時間をかけて現地の人々と仲良くなるところからのスタートでした。

そこは辺鄙な村だったのですが、それでも最低限の文明化はされていてネットも通じるくらいには、まだ現代的だったので、比較的スムーズにあれこれ受け入れてもらえたのが救いだでした。

数週間かけて仲良くなっていき、村のパブに飲みに行って「いつもの」が通るようになった頃です。村の世話役からあるお願いをされました。

村でそこそこ年が行っていた老人が脳梗塞でなくなったから葬式をすることになったと、だが準備ができるまでの寝ずの番を出来る人間がもう少し必要だから、ちょっと一晩手伝ってほしい。 そういう話でした。

もともと寝ずの番というのは世界中である風習で、何処にでもある大したことも起きないだろうと気軽に受けたのですが、今思えばこれが間違いでした。ナニカ面白いことが起きてくれることを期待していなかったといえば噓になりますが本当に気楽に受けてしまったのです。

請け負ったその日の夜19時ごろ、指定された場所で世話役の男と待ち合わせてその寝ずの番をする遺体の安置場所へ向かいました。

案内されたのはなくなった爺さんの家の地下でした。よくある貯蔵庫のような、倉庫のような部屋の中央に机が設置され、そこに棺桶が置かれて、その傍らに穴の開いたメイス……重そうな鉄の鈍器が3本置かれていて、その傍らに酒瓶と皿に盛りつけられたつまみ、それにトランプが1セット用意されていました。 私が部屋に入ってなんだこれ?とその机をまじまじとみていると世話役が

「あと二人来るから3人で朝になってかぎを開けるまでここで見ていてくれればいい。トイレは部屋の奥の扉、もしも外から叩かれたらそこのメイスに聖水でノックしなおしてやればいい。」

などと一方的に伝えてきました。
ノックってどういう?なんて質問をしてもそれはその時になればわかるから大丈夫だと言って世話役は私と一緒に寝ずの番をする二人が来るのを確認すると、あとはよろしくと部屋を出て行った。葬式の準備があるからと……

私と一緒に寝ずの番をするのはスキンヘッドのジャージ男と中年くらいの髭の男で、どちらも死んだ爺さんの知り合いだったらしいです。彼らはたっぷりと液体が入ったポリタンクを持ち込んできていて、聞けばそれが聖水だということでした。

二人は目の前で早めにやっておいた方がいいからと、そのメイスに聖水をどうやって入れればいいのか実演してくれて、振り方をレクチャーしてくれた……必要になるっていうのがどういう訳か分からなかったのですが、この辺りからすごく嫌な予感がしました。時間は20時ごろ、そこから何時間かはお互いの自己紹介をしたり、酒を入れながら世間話をして時間をつぶしました。

二人はこの辺りで育ってきたらしく、昔からずっとやっている風習だって言ってたが、こんな地下室でメイスを用意してやるのは初めてだというのを伝えるとよそはもっと楽なんだなと笑っていました。

それが最初にあったのはいつぐらいだったか……多分0時を回ったころだったと思う。
何処からかぺたぺたっていう音が聞こえてきました。

なんだろう?と聞こえてくる場所を探しているとスキンヘッドがメイスを手に取って思いっきり壁を一発ぶん殴った。

なんだ?何をしているんだ?と思っている間にさらに続けて一発壁にメイスをぶち込み、部屋に静寂が戻りました。スキンヘッドはメイスに聖水を注ぐと悪態をついて酒を煽り、あのぺたぺたはこれから増えるから今のうちに酔っぱらっておけと嘯いて笑いました。

空虚でカラ元気を出すような笑いが妙に頭に残っています、

それから1時間くらいでしょうか?ちょっとした雑談とトランプをめくるか紙の音だけが延々と続いていました。
棺桶にはドライアイスがたっぷりと詰まっているおかげで腐敗はそう進まないと思っていましたが、この頃から微かに死臭が漂っていたんじゃないかと記憶に残っています。錆のにおいに混ざって酸っぱくて苦いえもしえぬ匂いが部屋を漂い始めていました。

そして、またあの音が聞こえてきた。

ペタペタ、ピタピタ、ビタビタ、ビシビシとあちこちの壁の外側から何かを知らせるように音が聞こえてくる。
そこからは耐久戦でした。お互いにメイスを握って壁を殴りました。殴れば一瞬ひるむように音が収まるが、より強い勢いでまた何かが壁を叩き返してくる。延々と壁を殴っては聖水を注ぎ、壁が崩れても、その先で何か土でも壁でもない柔らかい何かに当たったとしても、延々と壁を殴り続けた……

そして気が付けば朝になっていました。

私は、あの叩いてきた何かが結局どういう存在なのかはわかりません。

ですが、朝方になって外から鍵を開けて部屋に入ってきた世話役が言うには、あの外から叩いてくるナニカは悪い報せだそうです。報せを叩き返してやらないと、その家族や親族も近いうちに埋葬されることになると……

だから、誰かが地下に籠って報せに答え続けて叩き返してやらないといけないのだと……

ただ、一つ確かなことがあります。崩れた壁の反対側から壁を叩こうとしていた何かにメイスを当てたやった時、感じたのです。

あのナニカは多分……多分あれはなにか実体のあるヤバイ何かだったように思います……
覚えているのです。ぶん殴った時の、あの肉を叩き、骨を砕いた時の鈍い感触が……そして、そのどす黒くい血が、土にしみこんでいくその色合いを……

あれが幽霊だったのか、妖怪や怪物や妖精や何かそういう類だったのかはわかりません、
しかし、あの東欧の辺鄙な村には今も埋葬の報せを返さないといけない何かがまだうごめいています。少なくとも、私はそう信じています。



ペンネーム:karkaroff
2023/12/9配信 https://youtube.com/live/Q9KdpuEu_Os?feature=share
恐怖のご提供フォーム https://forms.gle/moSxg7vgMFYqx7r37
※ご投稿内容に改行や誤字脱字修正等の加筆をしていることがあります。

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