2020年 ベストゲーム『マルコと銀河竜』からヴィジュアルノベルの表現方法について語ります。
こんばんは、はゐからです。
年末が迫って参りました。
急激に気温が下がってきた昨今、皆様はどうお過ごしでしょうか。
僕は相変わらずゲームばかりやっています。
さて、本題。2020年にプレイしたベストゲームは間違いなくTOKYOTOONよりリリースされた『マルコと銀河竜』です。
世間の評価などを加味せず、僕個人の価値観で、今年一番愛おしいと思ったゲームですので悪しからず…。
以下、この記事では物語の核心のネタバレとなる内容については一切触れません。
今回はこのゲームの最大の特徴である革新的な表現方法、そして過去リリースされたソフトを例にヴィジュアルノベルの表現の優位性についてつらつらと個人的な意見を長々と書き連ねております。
◇使い古されたヴィジュアルノベルの表現方法に新たな地平を拓いた奇抜すぎる力技
ビジュアルノベルという使い古されたリミテッドな形式をとりながらも、カートゥーン調のアニメーションを用いた従来の型にハマらない破天荒な表現方法は本作一番のコンセプトであり、これが兎にも角にも斬新。通常パートにおいても一枚絵のCGの枚数が規格外に多く、テキストを読み進める度に一枚絵がぱちぱちと更新され、まるでアニメを読み進めるような従来には無い不思議なプレイ感を覚えました。見ている、ではなく読んでいるというのがポイントです。そして、超スピードの愉快な掛け合いによる展開の超圧縮。実際10時間程度ですべて読み終えることができますが、物語の容量的にはその2倍くらいの満足感がありました。
また、「ここまで沢山の差分CGを描くのならいっそ全てアニメでやれば?」という当然の疑問が湧いてきますが、実はそういうわけにはいかない理由があります。
何故なら、前述の通りこのゲームのアニメパートはギャグシーンであろうとシリアスシーンであろうとすべからくカートゥーン調で表現されてしまう制約…もとい、コンセプトがあるからだ。
逆に、ノベルパートはキャラクターが通常の頭身で表現されており、全てをアニメにしてしまうとと、この割り振りの意味がなくなってしまう。
と、まぁ…謎理論ではありますが、これらが作品の独自性となっているのは確かで、他にない新しいプレイ感を演出している。進化が行き詰まっていたヴィジュアルノベルの表現方法に新たな地平を開拓した奇抜な力技と言えるでしょう。
◇プレイヤーにノスタルジーを喚起させる懐かしさ
このゲームは演出が革新的であると同時に、ジャンル特有の制限された表現の特質上、良い意味での古臭さ、懐かしさにノスタルジーも感じます。特に劇中で何度も繰り返し流れる童謡『でんでらりゅうのうた』や、挿入歌の『青い星』が流れるシーンは曲調も相まってより一層ノスタルジーに拍車をかけております。特に『青い星』は“一昔前のエロゲソング”といった趣であるため、個人的な推しポイントであります。また、主人公マルコとちびまる子ちゃんを掛けたパロディかと思われますが、カヒミカリィの『ハミングがきこえる』風のボーカル楽曲もあったりしますね。
随所に散りばめられたパロディーの引用元もキューブリックの名作映画から誰もがやったことのあるゲーム(ファイナル・ファイト、星のカービィ)まで様々で、ニヤリとさせられました。
今作のコンセプト、演出、キャラクターの掛け合いのテンポ感、ビジュアルに至るまで随所にフリクリを意識したと思われる所があります。個人的には懐かしく、これがツボに入っております。フリクリフォロワーと思われる作品のなかでも稀に見る成功例とも言えます。(フリクリを意識した作品は数あれど、成功例はあんまり知らない)
パロディーの引用元はおそらく25〜30代後半くらいまでの人が見聞きしたものが多く、そのあたりの年齢の人がプレイすると、とにかくハマる。企画・脚本をつとめた はと氏はおそらく自分と同年代か少し上くらい?なんでしょうか。
また、マルコの宇宙を股にかけた母親探し、失ってしまった幼少期の記憶探しが主なシナリオのアウトラインになるのですがそれに加えて、ピアノの練習後に泣きながら歩いた道、大好きだったコロッケの匂い等、プレイヤーにノスタルジーを想起させるキーワードも数多く散りばめられております。
◇ヴィジュアルノベルの優位性とは?
美少女ADVが隆盛を極めた時代(1997年頃〜2000年代)はとうに過ぎ去り、次第にやらなくなっていったオタクは多いかと思われます。僕もそのうちの1人です。
当時のオタク(僕より少し先輩の方々)は「“使用目的”でアダルトゲームを買ったら、そのシナリオの良さに心を打たれ、思わず涙を流してしまった」という体験をした人が多いことと存じております。これらのゲームは“泣きゲー”と称され、大きなムーブメントとなりました。本作はその系譜を後継してアップデートしたものだといえるのではないでしょうか。実際プレイしてみて、私はヴィジュアルノベル先駆者への敬意と深い愛を感じました。
僕が小学4年生当時、初めて家にインターネットが導入された頃には、お絵かき掲示板や個人サイトにはkeyやleafをはじめとするアダルトゲームのファンアートが溢れかえっていたのを今でも覚えています。
また、“泣き”に欠かせない要素を作るシナリオライターやイラストレーター、劇中の音楽のコンポーザーなどのスタッフの名前が徐々に認知されていったのも業界の盛り上がりにとっては欠かせない要素ではあるのですが、今回その話はやめにします…。
そうしてオタクたちは徐々に、テキスト、CG、音楽、声優の演技(ボイスがつくのはもう少し先ですが…)ゲーム特有の双方向性(選択肢による物語の変化)等を用いた、本やアニメとは違うヴィジュアルノベルならではの新しい物語表現の可能性に知らず知らずのうちに惹かれていたのではないでしょうか。
過去に僕が知っているヴィジュアルノベルの特性を最大限に活かした演出を挙げるとすると、あかべぇそふとつぅ の『車輪の国 向日葵の少女』です。詳しくは記載しませんが、最終章手前で明かされる大きな仕掛けは、静止絵とテキストという視覚情報を意図的に制限することによりなし得たものであり、弱点を逆手に取った上で他の媒体になし得ないヴィジュアルノベル特有の優位性を見せてくれました。これをプレイした時にはこのジャンルの新しい表現方法に大きな可能性を感じたものです。
しかし、今ではこの手のゲームから新しい表現が生まれることは無いかもしれないとどこかで思っていましたが、本作の革新的な表現方法に触れ、もう一度このジャンルのゲームをやりたいという気持ちが強くなりました。
実際、この業界まだまだ新しい表現が出てくる可能性が十分にあると感じさせてもらえたので、この度カムバックした次第です。(続け様にプレイしたドキドキ文芸部も例に漏れずですね。)
◇さいごに
長々と語ってきましたが『マルコと銀河竜』、ヴィジュアルノベル沢山やってきた人間ほど唸らされることが多く、とてもいいゲームだと思います。積み上げられてきたお約束や真新しさを同時に内包しているのだから。
2020.12.7現在、DMMでは30%セールを行なっており大変お得に手に入ります。(宣伝)セールは来年2021.1.12まで継続するそうですよ。
まずはPVを見て、そして体験版をプレイしてみてピンときた人はおそらく損はしない内容となっておりますので冬休みのお供に是非ともお手に取って遊んでいただきたい一本です。
買え。
それからプレイを終えた方、是非とも私と話をしてください(切実)
ヴィジュアルノベルって誰かと語り合うまでが本当に楽しいんです。こちらも例に漏れずめちゃくちゃ語り合いたくなる一本です。何卒よろしくお願いいたします。
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