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俳句「匂いと記憶」

栗咲く香在りし日われを攫ひに来

 明後日は父の命日だ。父は母の誕生日の翌日に亡くなったから、母の誕生日と父の命日はほぼ同時にやって来る。もっとも、月命日だといって毎月経をあげていたのは1年目だけで、3年目の昨年などは経さえあげていない。一周忌とか、三回忌とかを除けば、せいぜい仏壇に酒を供えるくらいで、特別なことは何もしていない何とも親不孝な息子である。

 ただ、小高い丘陵にあるわが家から歩いてスーパーなどに行く途中に栗の木があり、ちょうど父が亡くなったときは栗の花の香が漂っていた記憶がある。そのせいか、栗の花の香りを嗅ぐと、父が亡くなった日のことを思い出す。と言うより、あまり思い出したくないのだが、思い出してしまう。

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