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俳句「みかんの花が咲いている」

潮風のここまで届く花みかん

 記憶とは不思議なものだ。「みかんの花咲く丘」の歌詞は、なぜか私の中では谷内六郎の絵と結びつく。実際にそんな絵を見たのかどうか定かでないのに、海辺の小学校の風景が浮かんできて、懐かしい思いにひたる。私は山間の町で育ったので、海辺の小学校などには通ったことがないのに……。

 私の住む和歌山は、愛媛と並ぶみかんの産地である。おいしいみかんが出来るためには、充分な日射しとともに潮風が欠かせないと聞く。だが、海から少し離れた山の斜面にもみかんの木が植えられているところがあり、そこのみかんもおいしかった。

 潮風は思いのほか遠くまで届いているのだと、そのとき思った。

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