見出し画像

詩「夕立」

つつがなく

そんなふうに過ごした時には
たいていよい結果は得られないものだと
オババは言って
蚊取り線香のけむりをうまそうに吸いこんだ
おまえもガールフレンドの一人でもつくって
盆踊りにでも行け と
オババもなかなかハイカラなことを言う
昔は山姥と噂されたオババも
近頃めっきり人間がまるくなった
遊ぶでも勉強するでもなくゴロゴロしていたら
季節さえも失った

その夏 オババはつつがむし病で逝った

窓辺の残暑見舞は夕立ににじむ
つつがなく その蒼い文字が

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?