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俳句「9月1日」

秋蛍をらぬか雲のへに往ぬる

 昨日の短歌と同じく友人の訃報を受けて、昨年の9月1日に詠んだ句。前触れもなく訪れた友の死にとまどう気持ちは、伊勢物語45段の「ゆく蛍雲のうへまで往ぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ」と詠んだ男の心情にも似たものがあるように思う。

 今日は震災忌。関東大震災の起きた日だが、阪神淡路大震災、東日本大震災をはじめとする平成から令和にかけての震災でお亡くなりになった方々を悼んでおられる方々もいるだろう。

 俳句や短歌は、時にそれが詠まれた背景とは別の、異なった背景の思いをも代弁する。たとえば、芥川龍之介の死を悼んで飯田蛇笏が詠んだ句「たましひのたとへば秋のほたる哉」も、震災で大切な人を亡くされた多くの人の気持ちを代弁する句の一つだろう。

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