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俳句「花が揺れるとき」

風そら音蛍袋の揺れぬめり

 峠の途中に湧水があり、ときどき水を汲みに行く。誰が名付けたのか「雨山の湧水」という木の札が掛けられている。

 その近くに蛍袋が咲いている。風の感じられない日だったが、花がかすかに揺れたような気がした。と同時に誰かの声が聞こえた気がした。蛍袋は声だか風だかに応えるように揺れたように思われた。

 文語助動詞「めり」は、「目の前の事実について推量する意を表わす」と辞書にある。(『旺文社 全訳古語辞典』)完了を表わす「ぬ」と合わせて「ぬめり」とすると、「~たうようだ」の意味となる。

 実際のところは、花の中に虫が入ったのかも知れない。これなら風がなくても揺れる。

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