俳句「フリージア」

フリージア咲かせてをとこやもめかな

　今年もフリージアが蕾をつけた。以前通っていた鍼灸院でいただいた球根を植えておいたら、十年ほどでずいぶん増えた。プロフィール写真のくまのぬいぐるみの後ろに写っているのがこの花だ。華やかで、かわいらしくて、しかも強い芳香を放つこの花から、おおよそ独身男をイメージする人はおるまい。わが家を知らない人は、この家の奥さんが植えたと思うに違いない。

　だが、庭にこの花を咲かせている家に住んでいるのは、今年９３歳になる老母と５９歳になる未婚の息子なのです。ダイバーシティの尊重される昨今ではあるが、凹凸を多様性ということばで均すばかりでなく、独身中年男の悲哀ぐらい凹んだままにしておいてほしい。