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映画『THE FIRST SLAM DUNK』


今日どうしても映画館でもう一度観たかったので行ってきた。

詳しい考察や専門的なレビューなどは色々な方がしているので、
俺の感じたことを書きます。

原作は大ファンで、全場面のセリフを覚えているぐらいなのですが、
この映画は本当に素晴らしい。

画期的なアニメーション技術もさることながら、
時間と音の使い方が非常に巧みで、
今日冷静に観てみて、無音が映画にしては結構あることに気づいた。
文字通り観客は息を呑む数十秒をその都度過ごすのだが、
そこから音楽が鳴った時の感情への影響が凄まじい。
それは開放感や爆発力、涙、疾走感、あらゆる感情をベストなタイミングで引き出してくれる。

時間の話を少し。
観た人の「このシーンがなくて」という気持ちもわかる部分はあるが、
削るところの削り方が非常にスマートだし、
映画一本の尺で考えるならこれがベストだと思った。
特に細かいところ(それは原作にあった箇所も今回足された箇所も)
その本当に細部まで監督の手が行き届いていることに感動した。
勿論人によっては他のベストもあるとは思うが、俺はこれで良かった。
おそらくだが時間が経つにつれ、
「これで良かった」から「これが良かった」に変化する。
そんな力のある作品だと思う。
特に関心したのは魚住がちゃんと然るべきタイミングで客席にいること、
一回目は気づかなかったが花道の回想シーンで仙道が一瞬映るところ(歓喜)

そしてなんと言っても体感速度の表現の仕方には脱帽した。
試合は実際の40分に限りなく近く感じるタッチで描かれているのだが、
スポーツをやったことがある人なら分かると思うが、
あの一瞬が数分にも感じる、いろんなことが頭をめぐる感覚というのは、
実際に本当にあって、
例えばゾーンプレスのシーンなんかはそれが凄くリアルというか、
あの圧迫感と圧倒的画力による肉感で、観ているこっちが心を折られそうになる。

途中途中で挿入される原作にはなかったシーン/ストーリーも非常に良かった。
原作で多く語られてこなかった宮城にフォーカスしたのも良かった。

そして誰もが感じることだと思うが、
『リアル』と『バガボンド』を描いた(描いている)井上雄彦先生の経験と技術が、
圧倒的なまでに良い影響を与えている。

今の『リアル』っぽいな。とか『バガボンドっぽいな』と、
読んでいる人は思ったと思う。
最後の件なんかはスラムダンク奨学金を連想させる。


と、前置きが長くなってしまったが本題に移ろう。

今日鑑賞中に面白いことに気付いた。

斜め後ろの方に座っていた恐らく初見であるおばちゃん二人組が、
桜木花道が流川をやっかんだり、
突飛な行動をする度に結構大きな声で笑っていた。

そして最後のシーンに近づくにつれ、その笑い声は少なくなっていき、
最後の流川とのシーンでは笑いは消えていた。

桜木花道は一見コミカルに描かれている場面も多いからコミカルなキャラだと思うかもしれないが、
俺が思うに死ぬほどシリアスなキャラだ。

なぜなら、彼が他のメンバーとキャリア面で物凄い差があるのに渡り合える、
時には引っ張れるのは、彼が誰よりも一生懸命だからだ。と俺は思う。

一生懸命というのは時に嘲笑の的になる。
かつてゴリがそうだったように。
誰よりも真面目に取り組んでいる人が同調圧力により村八分って状況を、
見たことも聞いたこともないなんて人は社会にどれぐらいいるだろうか。

嘲笑の意図がなくても、本当に一生懸命な人は見方次第では少し面白い。
しかし一生懸命な人を笑う、その感覚こそが歪んでいる。
一生懸命はかっこいい。

それを我々は心のどこかで解っている。

だから本当に一生懸命な姿を目を背けずに見ると、
自然と涙が出るのではないだろうか。

限界を通り越してヘロヘロの三井が一生懸命にボールを追う。
それを飛び越して花道が突っ込む。

そんな姿を見ていると、あるラッパーの歌詞を思い出した。
『一生懸命を恥ずかしがるな』
KREVA氏のフレーズだ。

その一生懸命の大切さを一番体現して我々に教えてくれているのが桜木花道なんじゃないかと俺は思う。

今までスラムダンクでは仙道と沢北が好きで、
仙道に関しては曲にもしている。


ただ、湘北メンバーで誰が一番好きかと言われると、
迷いすぎて、というか全員に共感できる部分があって(特に三井、赤木、流川)
決めかねていた。

しかし今回の映画を観て改めてミッチーが一番心に来るということがわかった。
それは共感というより、凄すぎるという感覚。

挫折からの立ち直りに共感していた部分は大いにあって、
多分結構そういう人も多いのではないかと思うのだけれど、
個人的には挫折からの復活からのさらに窮地、
そしてそれを乗り越える力に心底震える。

あそこまで追い込まれて諦めないのは、
「自分だったら」と自分の場合に当てはめて考えると毎度冷や汗をかく。

原作にしてもやはりワンシーン選べと言われたら俺は山王戦の4点シュートだし、
あれは何度見ても鳥肌が立つ。
あの「湘北に入って良かった」まで含めて死ぬほど好きなシーンだ。

長くなってしまったが、原作を知らなくても楽しめるし、
映画を観て原作を読むと物凄く解像度が上がるのでオススメです。
まず間違い無く言えるのは、映画館でやっているうちに映画館で観た方が良い。圧倒される。

これから先も彼らの一生懸命さを思い出しては、
「俺はやれてんのか?」とその都度自分に問えるような、
とても素敵な思い出の詰まった作品になりました。


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