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自分を作った文章

幼い頃から活字を読むことは苦ではなかったが、本格的に本を読み漁ることが増えたのは十代後半だったと思う
学生時代はそれまで多くの本を読んできたわけではなかった
気になる本を実際に購入して読めるようになったのは、高卒で就職し、自由に使えるお金がそれなりに手に入るようになってからだったと思う

ライトノベルが多いのだが、特に読んだのはキノの旅
ショートショートに近い文量で話が完結するので読みやすかった
各々で完結していく話が、段々と束になって別の物語を紡いでいくことも面白かった
なお、現在中学生の息子もキノの旅にハマったようで、やはりカエルの子はカエルなのだなと少し感心した

あとはロードス島戦記
十代後半をソードワールドというTRPG(コンピューターRPGの対人版のようなもの)をして過ごしたのだが
それのリプレイ、ゲーム記録を小説に起こしたファンタジーだった
エルフやドワーフ、魔法と剣の純ファンタジー
これを機にファンタジーの世界に憧れる人間になった
最近、新装版を見つけて思わず購入してしまった
(まだ読めてはいない)
初見から20年は経っているが、また魔法と剣の世界に没頭できると思うとワクワクしてくる

そして、単一の小説ではないのだが
乙一氏の書く小説にハマったのもこの頃だ
淡々と繰り広げられるダークファンタジー、ファンタジーに見せかけたホラー、物悲しい恋愛、すれ違いから起きるどんでん返し
読者のミスリードを誘い、最後に全てが覆る文章構成に
心が引き込まれたことを覚えている

乙一氏の小説は大体読んだのだが、ある時を境にパタリと新刊を見かけなくなった
否、読み初めが遅かったので出ていた本は読み尽くしてしまったタイミングだったのかもしれない

実際、乙一氏の刊行には数年の空白があった
その間も新しい物語が恋しくてたびたび検索をかけていた
本名でいくつかの小説が出ていることを知ったのは、だいぶ経ってからの事
その時購入したのは、『百瀬、こっちを向いて』
不器用に歪んだ恋物語だったが、確かにその文章は乙一氏のものだった

あとにも先にも、小説を手に取っただけで涙が出たのはこの時だけだ

今はまた、乙一氏は乙一名義でさまざまな文章を送り出してくれている
最初の感覚が色褪せずに読める文章は、今のところ彼の文章だけかもしれない

最近だと、今まで読まず嫌いをしてきた古典とも言える文豪の小説も読み始めた
この年まで夏目漱石を読まずに来たのだが、おそらくちゃんと精神年齢が追いつくまで目に入らないようになっていたのだと思う

本はいい。何歳になっても、新しい世界を教えてくれる
今までの自分を作ってくれた文章があるように、これからの自分も文章によってまた新しく作られていくのだろう

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