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押井守にも細田守にもハマれない人間は、「電脳コイル」にもハマれないのか

注意:

このnoteには、偏見と穿った見方とねじ曲がった根性が存在します。電脳コイルファンの方でご気分を害されそうだと思われる方は、速やかにページバックを行ってください。

また、このnoteはあくまで、一個人の電脳コイルに対する感想であり、それ以上のものではありません。

更に、本noteは無料分ですら4000字、残りに至っては約20000字程度の素晴らしい駄文詰め合わせセットとなっており、読む人間がダレること請け合いです。

作品が名作であることは明らかであり、それに対してイマイチ踏み込めない人間のボヤキです。これらのことが理解できた方のみ先にお進みください。


それではどうぞ。

まえがき

正月明け早々、何かサブカルチャーを吸収しようと、PrimeVideoで「電脳コイル」を見ていた。みんなから、「義務教育だよ」「アニメにハマれない旦那もハマれたよ」「子供ながらにずっと覚えている名作」と色々な言葉をかけてもらい、ワクワクする気分でOPを修めた。OPのよくわからない感じは、短い時間に世界観を散りばめた名作のにおい。これはきっとそのうちこの世界観に取り込まれていくんだろう。そう思いながら1話目を見始めた……のだけれど。

ハマれない。3話目を終えるころ、あまりの苦痛にアニメを見ることが嫌になり、次のチャプターに送る手を止めてしまった。「何話でハマりますか?」と周りに問いかけてみるも、その答えはまちまちで、ただ、総括するのであれば、「後半になると雰囲気が変わって引き込まれるよ」だった。

個人的には、それまでにあまりにものめりこめない要素があったのだが、それを乗り越えるとそこには楽園にあるのだろうか。このnoteには、盛大なネタバレを盛り込みながら、私がなぜハマれないかを書き留めておくことにする。ハマった後に書き直すのだろうか。それとも、ハマらないままnoteは放置されるのだろうか。

ハマれない理由①「重厚そうな世界観の種明かしをしないまま話が進んでいくわりに、伏線が次から次へと張り巡らされていく」

OPのあと、主人公たちが住む町が特殊であることを示されたのが2話。1話では本当に不思議なペットだなぁ、不思議な場所だなぁってだけ。この時点で、「あ、種明かしは徐々にしかやらないんだろうな」と少しげんなりした。これが1クールアニメならいいのだが、問題は2クールちょいであること。この展開でのんびりと引き延ばしされてしまうと、話の核心に至るまでに10話とか使いかねない。10話。240分弱、4時間。映画にして2作ぶん、私が小説を読む速度なら文庫本1.5冊。そんなに長い時間謎ときに時間を使わされることにまず身構えることになった。

毎話毎話伏線が増えていく。つまり飛ばすことが許されないような気がしてくる。なのに4時間?疲れない?例えば1週間に1話だったとしても、そうなったら逆に伏線を忘れちゃいそうだし……と、ここまで考えて伏線をほどほどに忘れさせるくらいの尺じゃないと逆に見れないんじゃないか、一気見に向いてないんじゃない?とちょっと思ったりした。

しかも、だ。特殊であることに主人公は気づかないまま引っ越してくるし、両親はそれに対して何の違和感を持っていない。両親は電脳グラスをつけないからか、それはまるで子供の遊びのように思っているんだろうか。おばあちゃんはただの物好き?大人が子供の世界に対して介入しない、そこには老人だけが介入しているといった構図はよく見ているけど、世界のバグだなんだってものをしっかり直視するのを選ばれた子供だけがしているって、どういうこと?

ハマれない理由②「子供がまた世界を背負いそうな予感がする」

世界を救うのは、なぜ子供なんだろうか。世界の秘密を知りかけた子供。なぜ、子供が知りかけるんだろうか。大人はそうした活動は全く見えないんだろうか。なぜ、あんなに実力を持った祖母が、何十万ものデータの修復を必要とするようなレベルの攻撃をポンポン撃てるようにしてしまう祖母が、まったくの風変わりな一般人としてそこにいるんだろうか。このあたりが全く分からないのである。

あんなにすごい技術を取り締まれない事実は、なぜ世間に出てこないのだろうか。あのガードロボットにあるわかりやすい弱点を、なぜ主人公サイドの人間は全く知らないのだろうか。鳥居を地面にチョークで書くだけ。そうした攻略方法をなぜ探偵社側は知らないんだ。建造物を揺るがすほどの力を持った小学6年生がなんで何人もいるんだ。大人はいったい、ストーリーのどこに消えたんだ。ハテナがただ増える。ただ、増えるのに伏線は回収されない。視聴のためのストレスが解放されるのは恐らく4時間以上後。遠い。遠い。文章を2000字弱書く方がよっぽど楽だと思ってしまった。さて、再び戦いに行くか。わからないをわからないで覆い隠しに。どこまでいけばいいだろうか。どこまで見られるんだろうか。ただの雑記である。

総評

端的に言えば、「俺の見せたい世界と俺の作りたい人間を俺の才能の限界まで混ぜ込んだらこうなる」系アニメ。

作画や言葉選び、感情の出し方など、そうした点にはわりときれいなものがあるし、作品の中の世界観もぱっと見はわかりやすく好感が持てる。そのため、そうしたところだけをうまくすくいとれる人間には、このアニメはたまらなくいいものなのだろう。

さらに、そこにバーチャルな世界に対する作者なりの温かい理解が組み込まれる。そうした世界が十何年前にも掲示板上などにあったが、きっとそこは今よりもっと冷ややかな目で見られていたはず。そうしたところに対しての優しい言葉掛けは、当時のネット人間たちにはたまらなく嬉しいものだったんじゃなかろうか。しかもそれが電脳の世界を巻き込んでなんかいい感じに進行するんだもん。

だが。

私はそれらを含めたとしても、結局前述のまとめにあるような、ツッコミどころの多さで立ち止まらざるを得なかった。「考えるのではなく感じろ」で視聴しないとハマらないスタイルの作風に、なぜどうしてSF的要素を組み込んだの理解に苦しむ。お前は考えてなんぼの世界観やぞ。作者の力量みたいなところが2クールによって浮き彫りにされていくというのが、個人的にはきつかったのもあります。なんか苦悩みたいなのも透けて見えるようで。

そして、その辺りの歪さ、「本当は考えないといけない割に、深く考えると先に進めなくなる」の回収法が、何というか少年向けSFラノベにありがちなそれで、私はそこもグエッとくる。難しいこと考えずに適当にみて、作画の良さにうなずき、「なんかうまく言えないけどよかったよ!」という感じにちょちょっちょ仕上げてある感じ。

それこそ、「君の名は。」「サマーウォーズ」を、「なんかよかった!」と言える人にはお勧めできる。そこに突っ込みだす人間は私と握手して孤独のグルメでも一緒に眺めましょう。ま、それに2クールの時間を突っ込むのは、個人的にはやはりどうなんだろ、と思う見納めでした。まぁただ、こんなにいっぱい突っ込める場所があるアニメって、ある意味とってもすくないので良いのかもしれないよな、そういう意味でも名作なのかも。ピースの掛けた10000ピースパズルを作るのが好きな人にも名作って感じ?うまいたとえが思いつかないな。

じゃあこの作品の評価をどうするかといえば、「SF的世界観を楽しむアニメ」というくくりであれば、触れざるを得ないんだろうな、とはやはり思います。私にとって名作でなくても、きっとこれは誰かにとっての名作だし、その価値はきっと色あせないから。そこは間違いない。これだけ伏線を撒き、小学生を主人公にし、それでいて壮大な世界観で作画がどことなくクラシックでいい感じのアニメなんて、ほとんどないから。そうした要素の何かに惹かれるのであれば、間違いなくこいつは面白いのだろう。多分ね。

アニメをあまり見ていない人にむしろ見てほしいかも。アニメをいっぱい見て、小説をいっぱい読んだ人には、どうかなあ。経験値なしのが楽しめるんじゃないかな、それこそ小学生とか。そう、メジャーを見終わった後の小学生にはちょうどいいんだろう。


以降の有料部分には以下のものが10000字超掲載されています。
・9話以降の個別の話に対する主として愚痴のようなもの

・総評ではない、感じたもやもやのまとめ沢山
・作品を見る年齢や作者についての感想
これらをみてやろうという方、この記事を書いた苦労を讃えてやろうというかたは、ぜひ購入してくださると喜びます。

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